忘れられぬ味(39)岩塚製菓・丸山智代表取締役会長「台北の魚翅」

菓子 連載 2001.01.10 8790号 2面

当社は一五年前から台湾企業と合弁事業に取り組んでいます。この相手企業のオーナー蔡衍明氏に招待されて行ったのが始まりです。その後、二年に一度くらいの訪台の折りに立ち寄る店が、台北市新生南路一段にあるふかひれの店「頂上魚翅燕窩専賣店」である。

店は名前のとおり、ふかひれと燕の巣を食べさせてくれるレストランである。メニューの数はそう多くはないが、超繁盛店である。ふかひれを中国語で魚翅と書きます。ふかひれ(魚翅)には大物とバラ物とがあり、表現は良くないが、櫛のように帯状にふかひれが連なっている状態を大物と言っています。バラ物は一本いっぽんがバラバラの状態で独立しているタイプを言います。頂上のふかひれは当然大物を使用しています。店の歴史はそう古くはありません。台湾の食通のグループが、タイに行っていろいろ食べ歩き、研究開発して世に送り出した創作料理と聞いています。日本人が頭に思い浮かべる魚翅料理といえば、少しとろみのあるスープに、おしるし程度にふかひれが泳いでいるタイプが一般的ですが、頂上のふかひれは腹一杯食べる魚翅です。直径一五センチメートル、深さ五センチメートル程の平底の土鍋を焜炉から下ろして、ぐつぐつ煮えたぎった状態でテーブルに運んできます。ふかひれはよく煮込んであって茶色の土鍋と同じような色をしています。鍋を覗き込むとふかひれの隙間に僅かにスープが見え隠れすると言った表現がぴったりで、土鍋の中はふかひれがひしめき合っていて、なんとも贅沢な味わいである。ふかひれの上には、魚料理につき物の台湾パセリ(香菜)のみじん切りが振り掛けられています。香菜は独特のきつい香りを持っているので、日本人には嫌いな人も多く、不要の人は初めに断っておくといいでしょう。好みに応じて黒酢をかけると、一層味を引き立ててくれます。なんとも言えない味になりました。

食後はデザートに、冷たくした糖蜜に浮かせた燕の巣が異国情緒を感じさせてくれてとても楽しい食事です。

(岩塚製菓(株)代表取締役会長)

日本食糧新聞の第8790号(2001年1月10日付)の紙面

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