宇治抹茶、中国産模倣品で実害 輸出にも影響か

飲料 ニュース 2019.12.13 11984号 01面
左が正規品、右が中国製模倣品

左が正規品、右が中国製模倣品

【関西】中国で宇治抹茶の模倣品が多く出始め、従来日本が販売していた東南アジアをはじめ、海外でも販売されるようになり大きな実害が出始めている。また中国で「宇治」の商標登録が茶を含む第30類の項目で中国企業によって出願され、宇治茶の使用にも制限が出る事態になりかねないとの懸念も出ており、今後の開拓分野である輸出にも影響が出ることも心配されている。=関連記事8~14面(大居政光)

「宇治」の中国での商標登録は2013年に京都府茶協同組合と加盟企業が共同する形で取得、中国企業に先手を打った。運用では京都府内の業者には商標を独占せず解放していた。ただ中国側の茶輸入条件が厳しい中で、登録商標の使用はほとんどできなかった。3年以上登録商標の使用がない場合、不使用取消請求が可能で、今年8月に中国企業が請求して認められた。このことに対して組合と加盟企業は不服申請を申し立てている。

これとは別に中国企業による抹茶の模倣商品問題が実害を生んでいる。

中国では粉砕機を使用した大規模な抹茶工場が世界的な抹茶ブームの中で、次々と建設されている。茶葉生産は元来豊富で、価格の安い抹茶が中国国内だけでなく中国から海外に積極的に販売されるようになった。その中で中国企業はクオリティーと知名度の高い宇治企業のブランド製品の模倣品の生産をしている。

特にここ2~3年動きが活発で、例えば宇治抹茶の老舗で海外でも実績のある丸久小山園の模倣品の場合、「五十鈴」を「宇治五十鈴」に、社名は宇治小山園でパッケージデザインがそっくりな商品を販売している。

このようにパッケージデザインがそっくりの茶関連の模倣品には「宇治」が製品名や社名に付けられるケースが多い。中国では「宇治」が付く茶関連の商標登録だけで、出願中も入れ191件もある。京都府茶協同組合が中国商標局に確認した9月時点で全分野での「宇治」が付く商品申請は3000件以上あったという。

模倣品による実害はすでに出ており深刻な事態になっている。「ベトナムでは宇治茶は中国産と勘違いされているほどだ」(丸久小山園)で、同社の実績の減少からの試算で、同社のみで約3億円以上の実害が出ているという。

中国の宇治の商標や、模倣品に対して自民党は茶業振興議員連盟(森山裕会長)に、「日本茶にかかる知的財産戦略ワーキングチーム」を立ち上げ、事務局長に同地区選出の安藤裕衆議院議員が就任した。11月15日には第1回のワーキングチームの会合を開いた。会合では同組合や丸久小山園の幹部が実情を報告し認識の共有化を進め、日本茶の今後の活路である輸出には知的財産を守らなければとの決意を固めた。

また、きょう13日には2回目の会合を開催予定で(1)中国の商標局訪問の報告(京都訪問団)(2)農林水産分野における知財冒認の被害状況と防止策(3)他産業における知財冒認の被害状況と防止策について–を議題にして話し合われる予定。作業部会では、中国政府への働きかけの強化や、政府に対策を求めていく方針だ。

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