アイスクリーム市場、久々迎えた“試練の年” 巻き返しの鍵は購入率アップ

昨秋以降は天候要因や新商品投入などで復調基調

昨秋以降は天候要因や新商品投入などで復調基調

今年度(19年4月~20年3月)のアイスクリーム市場は、久々に「試練の年」を経験しての着地となりそうだ。17年度に5000億円の大台を超え、18年度に6年連続で過去最高を更新してきた同市場だが、さらなる記録更新は微妙な状況にある。下期に入り、秋以降は天候要因や新商品投入などで各社巻き返し基調だが、やはり最需要期である7月の天候不順によるブレーキが響いているようだ。特に、各年代での購入率にダウントレンドが見られることから、需要を喚起し、購入率をアップさせる商品展開やコミュニケーション展開が鍵を握りそうだ。(小澤弘教)

今年度は、3月に多くのメーカーで希望小売価格を改定。ノベルティーの130円が140円に、マルチの330円が350円に値上げ。ハーゲンダッツジャパンも6月に価格改定を実施した。マルチの改定率が高かったこともあり影響があったとみられるが、秋以降は落ち着いているようだ。

昨年に引き続き、今年度も天候要因が大きく業績を左右している。昨年は猛暑により氷菓で一時欠品するメーカーもあったほどだったが、今夏は一転して夏場の天候不順が響いた。5月は気温上昇などで消費が伸びたが、7月は平均気温が前年よりも4度Cほど低く、特に東京都心では33年ぶりの「前半の真夏日ゼロ」を記録するなどの冷夏となった。大手メーカーを中心に2~3割程度のマイナス販売実績となり、市場全体では23~24%減少したと推計され、上期トータルでは4%程度の減少。下期に入り、9月は気温が上昇し、そのタイミングでの新商品投入などもあって回復基調となった。各社主力商品が好調に推移するなどしているが、上期トータルでの不調をリカバリーするには至っていないようだ。

最大手のロッテは「クーリッシュ」が7月の影響を大きく受けたが、「雪見だいふくハートのいちご」が話題性を喚起し、冬場のプラス要因となっている。重点商品の売り込みなどを進め、前年並みの着地を目指す。明治は「エッセル」が上期前年割れとなったが、内容量が多い商品特性を生かし、アレンジレシピなど新しい食べ方・使い方を提案。SNSを通じて独自の取組みを発信し、マルチの好調と合わせて訴求を進める。赤城乳業は「ガリガリ君」がマルチを含めた全体で前年割れとなったが、「ミルクレア」のリニューアルが奏功し好調を維持。特に9~12月に大幅な伸びを見せた。今年に入ってからも好調が続いている。フタバ食品は18年は夏場の欠品の裏年ということもあり、8月は前年を大きくクリア。70円価格帯商品や「ダンディー」がけん引役となっている。

市場は40~60代がボリュームゾーンだったが、購入率がここに来て伸びていない傾向にある。若年層の購入を喚起する話題性の高い商品や、新たな食シーンや需要の創出、店頭での回転率向上に向けた売場作りなど、市場活性化への取組みが期待される。

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