食品経営者フォーラム、神明HD・藤尾益雄社長が講演 「日本の農業・食を守る」

 神明ホールディングス(HD)の藤尾益雄社長は19日、日本食糧新聞社主催の「食品経営者フォーラム」で「コメの未来・可能性に挑戦」をテーマに講演した。創業120年を迎えるコメ卸最大手の4代目社長として、コメ消費を盛り上げようと多様な領域に進出する同社の姿を紹介した。会場のホテルニューオータニ東京に、有力食品メーカー経営者をはじめ、産地や金融関係者も含め約40人が参集し、熱心に聴講した。講演趣旨は次の通り。(佐藤路登世)

 90年の入社時、売上高が約400億円だったが、直近では3730億円に達し、約30年間で10倍近くまで成長した。07年の社長就任時「日本の農業・食を守る」ことを決意し、「わたしたちはお米を通じて素晴らしい日本の粋で、文化を守り、おいしさと幸せを創造して、人々の明るい食生活に貢献する」という企業理念を策定した。

 まず取り組んだのが、将来的なパックご飯の市場性をにらんだグループ企業「ウーケ」の設立だ。この間需要は大きく拡大し、13年に第2ライン、20年に第3ラインと続々増産体制を整えた。22年3月期は1億1500万食に達しフル稼働となり、目下第4ライン目の設置を検討中だ。

 そのほか、回転寿司チェーンで有名な元気寿司を傘下に入れたほか、Shinmei Delicaを設立し、炊飯事業にも参入。直近では5月に、神明米粉のポートアイランド工場が本格稼働開始し、米粉を使用したライスビーガンチーズ「SDCheeze」を新発売したほか、グループの神明きっちんでは、精米直後の新鮮な米ぬかを圧搾した「飲める米油」と、脱脂ぬかから「飲める米糠」を製造・販売している。

 背景には減り続けるコメの消費拡大への貢献がある。その一方で、農業人口の減少・高齢化で将来的な農業生産が危ぶまれる中にあって、国内供給できるコメや野菜の生産を守ろうと川上の農業分野にも進出。民間企業だからできる「儲かる農業」の実現に向け、自社農場「あかふじファーム菊川ラボ」を設立し、コメ新品種の試験栽培やドローン、水田・土壌センサーなどを活用したデジタルアグリの実証実験を行っている。また、ITを活用した気象変動に対応したコメ作りにも挑戦している。

 今後の事業展開として、世界の食料需給を見据えながら、海外穀物価格の高騰を絶好のチャンスととらえ、輸出を積極化するほか、日本の農業や食を守るための発信力や存在感を高めるため、25年に5000億円、30年には1兆円の事業規模へと成長させたい。

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