食品産業文化振興会、阮蔚氏が講演 「地政学リスクを上回る世界の食料不安」主題に
日本食糧新聞社が主催する食品産業文化振興会は6日、講師に農林中金総合研究所・理事研究員の阮蔚(ルアン・ウエイ)氏を迎えて「地政学リスクを上回る世界の食料不安」をテーマに東京・八丁堀の食情報館で例会を開催した。
阮蔚氏は、ウクライナ問題で小麦などの需給の先行きが見えにくいことについて触れ、「今年、黒海関連政策の不安定性で穀物市場は動揺している」と指摘し、「黒海穀物輸出合意からロシアは離脱を表明、それと連動するように世界の穀物価格が不安定化、下落しても2013年以来の高値の可能性がある」とした。そして、「食料安全保障強化の時代が来た」と強調した。
阮蔚氏は、「小麦など穀物は昨年2月のロシアのウクライナ侵攻で歴史的な高値に上昇した後、両国の輸出再開などで落ち着きを取り戻している。しかし、地球の温暖化と気候変動の加速に加えて、予測できない家畜伝染病などによって食料生産は不安化している。さらにバイオ燃料向けの穀物などの需要増や、持続的な世界の人口増加と合わせ、世界の食料需給には長期的な不安が広がる。長期的な食料生産と需要を見た上で、必要な食料生産イノベーションを考える時期にある」と語った。
阮蔚氏は、「単独の食料安全保障より、世界の食料需給安定こそが長期的に日本の安全保障につながる」と、世界の持続可能な食料の増産へ日本の貢献の重要さを強調した。
アフリカの食料増産・自給自足支援に始まり、地球規模の課題解決に貢献する農業技術の輸出振興、そして日本で大きな実績のある「県農業試験場」の途上国版としてアフリカに「穀物・食料研究所」を開設して、品種改良や農業指導員の育成など日本の立ち位置を示した。(宇津木宏昌)












