新型コロナ 海外の出口戦略・オーストラリア編(下)追跡アプリ登録500万人超える

総合 連載 2020.05.22 12054号 06面
500万人超が登録した追跡アプリ「COVID Safe」の販促ツール

500万人超が登録した追跡アプリ「COVID Safe」の販促ツール

11日、シドニー近郊のアジア系スーパー。豪では1.5mのソーシャル・ディスタンスの順守に厳しく、こうした混雑はまれ

11日、シドニー近郊のアジア系スーパー。豪では1.5mのソーシャル・ディスタンスの順守に厳しく、こうした混雑はまれ

オーストラリア政府が推進している、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染者追跡アプリ「COVID Safe」のスマートフォン登録者数が8日時点で500万人を超えた。4月26日の立ち上げから約2週間で人口の20%が登録した格好だ。豪政府は全国民2500万人強の40%の登録を当初の目標としており、さらに利用を呼び掛けていくとしている。

「COVID Safe」の登録情報は氏名、年齢帯、携帯電話番号、郵便番号など。アプリをダウンロードしている携帯同士が1.5m以内に15分間以上いる場合、濃厚接触者となり、相手の携帯の電話番号と日時が携帯内に保存される。アプリ登録者が感染確認された場合、このアプリにそれを記録すると、この携帯に過去21日以内に濃密接近した携帯に「感染者と接触した可能性があるので、至急検査を受けるように」という警報が出される。

登録データは携帯のみで、保存期間は21日間。それ以上古い情報は自動的に削除される。このデータを政府、税務署や警察が見たり、犯罪の証拠に使うことを禁じることが法律で定められており、「COVID-19感染追跡チーム」は感染者の了解を得られた場合のみ、携帯に保存されているデータを見ることができる。

現在は、Team of Sherlock Homes(シャーロックホームズチーム)と呼ばれている人たち、科学者や軍人も含まれているが、電話でインタビューしたり、ウイルスのDNAを調べたりして感染経路を追跡し、濃厚接触者を隔離、検査している。このチームは今後もこの仕事を継続するが、アプリで迅速に濃厚接触者を補足できれば、感染拡大を抑制できるとしている。ロックダウン中は他人との接触が少ないので、感染者の記憶である程度追跡できるが、仕事に復帰し、大勢の人と接触するようになると、21日間にさかのぼって接触者全員の名前や電話番号を記憶しているのは難しく、感染者が行動した地域全体をホットスポットに指定して、大掛かりな検査が必要になるというのがその理由。

追跡アプリは、海外での導入が相次いでいるが、監視社会が待つ未来に対しての不安感もあって、登録に積極的でない人も多い。また「オーストラリアでの被害がひどくないので、大騒ぎしすぎ」だと思っている人も少なくない。登録開始日を待っていち早くアプリをダウンロードした人は「削除すれば済むことだし、政府も新型コロナウイルスと共存する間だけといっている。グーグルやマイクロソフトがすでに集めている私の情報と比べれば、このアプリが集める情報は、気にするほどもないと思う」と答えた。(山田由紀子)

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