メニュートレンド:海鮮を使わない海鮮丼 そば屋が作るヴィーガン料理
ここ数年で「食の多様性」への意識が急速に高まり、レギュラーメニューにヴィーガン料理を用意する外食店も増えてきた。メニューは、カレーや大豆原料のハンバーグ、野菜料理が多いようだが、「信州蕎麦 蓼科庵 北千住マルイ店」では異色の「ヴィーガン海鮮丼」を販売し、話題を呼んでいる。
「信州蕎麦 蓼科庵」では以前から、精進料理の流れで動物素材を使わないそばつゆや、大豆ミートを唐揚げにし、天むす風のおにぎりにした「そいむす」などを提供していた。そんな経緯から、同店を運営するニッコクトラストの社長はイカとイクラに見立てることができるユニークなヴィーガン向け食材を知り、「そば店のメニューになじむ」と2021年6月にメニュー導入した。
「ヴィーガンの人もそうでない人も気兼ねなく一緒に食事を楽しめる店は、日本ではまだ少ない。しかし、ニーズは今後ますます高まっていくと思います」と、松本大介店長。同店でヴィーガン料理を積極的にメニュー展開することで、「ヴィーガン料理をメニューに揃える店がもっと広がり、一般的な風潮になってほしい」といった思いがあるという。
「ヴィーガン海鮮丼」は、そばとセットでメニュー展開している。見た目はイカとイクラをのせた海鮮丼そのものだが、イカはナタデココをイカの刺身のような形状に切り分けたもの。海外の寿司店などで、生ものを食べ慣れていない外国人向けに使われている食材だ。一方、イクラは液体をゼリー状の皮膜で包んだ「みずたまご」と称する粒状の食材を使用。味を付け、プチッとした食感とともに楽しむ食材で、フランス料理やカクテルのアクセントなどに使われている。
日本ではまだヴィーガンは少数派ということもあり、注文するお客の中でヴィーガンは「1割程度」。興味本位での注文が大半というわけだが、それでも食後感の軽さや食べやすさなど、味わいと食感に魅力を感じるお客も多く「リピート率は意外と高いんですよ」(松本店長)という。ヴィーガン料理やフェイク食材への単なる興味を超え、料理としてのおいしさから、同メニューはファンを着実に増やしている。
●店舗情報
「信州蕎麦 蓼科庵 北千住マルイ店」 所在地=東京都足立区千住3-92 北千住マルイ9階/開業=2016年12月/席数=50席/営業時間=11時23時。不定休/平均客単価=1500円/1日平均集客数=平日100~120人、土日祝200~250人
●愛用食材・資材
「みずたまご」 Mr.Orange(熊本県水俣市)
イクラそっくりに
味付きの液体に漬け込むと、粒に味が染みる食材。動物性素材不使用。料理やスイーツ、ドリンクなどの味のアクセントや、飾りつけに使われている。同店ではだし醤油に漬け、イクラそっくりにした。「だし醤油が染みると、味も不思議とイクラそっくりになる。プチッとした食感で、イクラが苦手なお子さんにも好評」と松本店長は話す。
規格=1,000g