外食の潮流を読む(84)コロナ禍にあって企業グループを再編した「築地銀だこ」の狙い

2022.06.06 520号 11面

 たこ焼きの「築地銀だこ」を国内外に500店舗以上展開しているホットランド(本社/東京都中央区、代表/佐瀬守男)では、コロナ禍で事業構造を大きく再編した。

 この業態は人が集まる場所を得意としているが、コロナ禍でこれらの場所では休業を余儀なくされた。そこで売上げをつくるために同社が行ったことは大きく2つ。

 まず、「冷凍たこ焼きの製造・販売」。同社では、冷凍たこ焼きの製造・販売を行っていたが、コロナ禍で需要が拡大すると予測し、休業した実店舗の従業員を群馬県桐生市の自社工場に集結させ、冷凍たこ焼きの製造を集中して行った。工場はフル稼働で延べ人数70~80人がこの作業を行った。

 冷凍たこ焼きの販売は、大手コンビニチェーンに直談判したことによってかなえられた。製造が桐生の工場だけでは間に合わなくなり、ベトナムに工場を造り、日本のみならず冷凍たこ焼きの海外輸出も手掛けるようになった。

 次に、「新立地の開拓」。2020年の5月頃からロードサイド型店舗を郊外でやろうと動き出した。同年10月に東京・立川の五日市街道沿いにこのタイプの1号店を出店。するとテイクアウト需要があることがわかり、たこめし、焼そば、鯛焼きを販売したところ、月商1000万円を超える月もあった。同タイプの店を10店舗出店した。

 また、コロナ禍にあって新しい事業も展開した。

 1つ目は「主食業態の開発」。豪快で、ボリュームがたくさんあり、手軽な価格帯で、お腹いっぱい食べてもらうというコンセプトの「野郎めし」を開発。昨年11月、群馬県太田市の国道50号線沿いにその1号店をオープンした。看板商品の「しょうが焼定食」の「並盛」は748円(税込み)、「大盛」「野郎盛」もあり、“ガッツリ系”の要望に応えている。ドライバーだけではなく周辺に住むファミリーが連日訪れるようになり、まれに見る成功店となった。

 2つ目は「酒場事業の強化」。同社グループによる酒場事業は「銀だこ酒場」「おでん屋たけし」「ごっつい」といったブランドで、70店舗ほど展開しているが、昨年12月に「い志井グループ」を事業承継して酒場事業に組み入れた。い志井グループの「日本再生酒場」は東京・新宿三丁目、末広通りのにぎわいの発祥となった業態である。元気のよい従業員が醸し出すいなせな雰囲気が売り物で、同社の佐瀬代表は酒場事業を推進する上で「日本再生酒場」から多くのことを学んだという。3月には群馬県桐生市内に「日本再生酒場 桐生編」を出店。これからは人口10万人の桐生市と同等の地方都市で展開をしていく意向だ。

 そして、「築地銀だこ」のホットランドが中心となり、主食事業のホットランドネクステージ、酒場事業のオールウェイズに企業グループを再編。より安定した企業グループに整えた。ホットランドグループはコロナ禍を経て、将来に向けての大きな一歩を踏み出した。

 (フードフォーラム代表・千葉哲幸)

 ◆ちば・てつゆき=柴田書店「月刊食堂」、商業界「飲食店経営」の元編集長。現在、フードサービス・ジャーナリストとして、取材・執筆・セミナー活動を展開。

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