海外通信 外食ビジネスの新発想(58)アメリカのランチ最新事情
●時間もお金もかけないカジュアル志向
パンデミック最中のニューヨークはゴーストタウンと化し、駅周辺の外食店は軒並み閉まって森閑としていたが、ビジネス街が再開してからランチタイムは活気づいてきた。アメリカのオフィスワーカーたちは今、どんなランチを食べているのだろうか。
仕事を持っている人がランチに費やす金額は、全米平均で、34歳以下は週に約45$、35~44歳は約38$、45~54歳は約33$、55~64歳は約30$、65歳以上は約33$という。ニューヨークでは、この数字はもっと上がるはずだ。
現在のニューヨーカーの人気ランチメニューは、主に5種類。(1)ブリト-、タコス(2)サラダ、野菜のボウルもの(3)サンドイッチ、スープ(4)地中海風、タンパク質ベースのボウルもの(5)寿司、ポケ、日本の弁当。昼時に日本食品のスーパーに行くと、弁当を買う客で混雑している。
ランチの定番、サンドイッチとスープかサラダのセットが食べられるのが「パネーラブレッド」。ここでは、マカロニ&チーズなどアメリカのコンフォートフードを含め、メニューが幅広く、連日行っても飽きがこないし、複数人で行ってもいろいろな嗜好に対応できるので人気が高い。同じようにイギリス発の「プレタマンジェ」も、サンドイッチをメインにスープやサラダなども揃えたメニューが魅力になっている。どちらも月額飲み放題のサービス(プレタマンジェは、コーヒー・紅茶飲み放題が月額24$99¢、カプチーノなどのスペシャルコーヒーを含めた飲み放題が月額34$99¢、パネーラはソーダを含めてコーヒー・紅茶飲み放題が月額10$99¢)を提供して集客を図っている。
ヘルシー志向の高まりを受け、軒並み増えたのがサラダ専門の店。具だくさんで腹ごしらえのできるサラダ各種が揃った「ジャスト・サラダ」「チョップト」「スイート・グリーン」「フレッシュ&コー」「サラダ・ワークス」など実に多くのチェーン店ができたが、独立店も確実に増えている。
寿司の人気も根強い。フィンガーフードである寿司はランチに最適だ。「スシ&コー」や「ビヨンド・スシ」「マキマキ・スシ」などの寿司専門のファストカジュアルが次々にオープンしている。
目を引くのは、やはりオーガニックやヴィーガンの店舗。「ヌーリーフ」「ル・ボタニステ」など、プラント・ベースト(植物性ベース)の店も登場しつつある。もはやベジタリアンの選択肢は、普通の店でも欠かせない。
一方、ウエイトサービスの店では、総額の約2割のチップを払わなければならないが、平日の昼は特別のメニューを用意しているところが多い。アペタイザーとメインで15~20$程度のところもある。特に中国、タイ、インド料理にリーズナブルな店が多い。ファストカジュアルでも、だいたい10~25$の出費は覚悟しなければならないから、ウエイトサービス店も見過ごせない。敷居の高い高級店でも、昼のメニューは比較的手頃な価格帯で食べることができる。
昼はオフィスワーカーたちにとって束の間の息抜き。選択肢が増えれば増えるほど、選り好みが激しくなる。ランチ事情は、ますます多彩に、しかし競争もまたさらに厳しくなりそうだ。
【写真説明】
写真1:五番街のニューヨーク図書館裏にあるブライアント・パーク。タイムズスクエアとグランドセントラル駅間のオフィス街に位置。公園内にはウエイトサービスのレストランや軽食スタンド、周囲にはベーカリーカフェやファストフード店、スーパーがあり、ランチを買って公園内で食べる人が多い。
写真8:子どもたちのランチも進化。以前は、サンドイッチに果物や野菜のスティック、チップスの小袋などを茶色の紙袋に入れて持たせたものだった。そのためブラウンバッグ(brown bag)といえば、弁当を意味する。進化したランチボックスは、日本の弁当にならい、仕切りがあって便利に。また汁漏れのないようにデザインされている/写真はAmazon.comから