世界各国の新飲食材 調味料の宝庫アジア

1992.04.06 1号 20面

調味料は国々によって独特のものがあり、その国の味を決めている。日本でいえば醤油と味噌が代表的であるが、風土・気温・産物などによって、それぞれに大きく異なってくる。この点でアジアは調味料の宝庫ともいえる。

各国の調味料は長い歴史と伝統によって培われ、民族にとって最もおいしい料理をつくりあげる。突然の訪問者にはユニークで、なじめない味と映る場合もあるが、よく検討すると、すばらしい味であり、少し改良すれば日本でも使えそうなものが多くみられる。各国の代表的なものをみてみる。

【インドネシア】サンバル・チャン・サムブラン・トラシ・ピーナッツソース・サテソースなど。サンバルは唐辛子やガーリックなどをまぜ合わせて作ったホット(辣い)ソースで、タバスコにも匹敵する傑作でしかも格安。きれいなポリ瓶入りである。

これがベースでサンバル・イリス(玉ねぎとライム)、サンバル・パジャック(牛肉)、サンバル・ゴレン(エシャロットとトラシ)サンバル・ケチャップ(甘口醤油)などのベースとなる。

トラシは塩漬けえびのペーストで暗褐色。うま味のもとで利用範囲が広く、日本でもかくし味として使っているところもある。

サンプランソースは唐辛子入りココナッツミルクソースでトラシ同様あらゆる料理に使われ深味のある味となっている。

【タイ】ナム・プラ、カビ・ナムプリック、タマリンド水・ココナッツミルクなど。

タイ料理に塩味をつけるときナムプラとかカピとよばれる魚醤や蝦醤を使用する。塩漬けにした魚肉・小魚・小蝦などを発酵させてつくる薄茶色の液状調味料である。非常に塩辛く、魚臭の強いものであるが、適量を使えば驚くほどのうまみが出る。

ナムプラはベトナムのニョクマや日本のしょっつるに似ている。カピはインドネシアのトラシに似ていないでもない。この二つが基本調味料となる。さらにナム・プリックとよばれる辣いソースのベースとなりあらゆる料理に使われている。

またタイには美しいカレーソースがある。赤・黄・緑の三色で、赤色はケン・フュッド・ガイと呼びココナッツミルク・粉末の赤唐辛子・魚醤が主材料、黄色はケン・カリー・ヌアでレッドカレーペーストにターメリック・シナモン・ココナッツミルク入り。緑色はケン・キョワン・クンで最も辣く小さな緑色の唐辛子を使い汗のふき出るほどの辣さ。人気が高く暑い国の味である。

【ベトナム】ベトナム料理の味はニョクマムとよぶ魚醤を使っていることである。この魚醤は木製のbMに生の魚と塩を交互に重ね、しっかりと蓋をして発酵させたものから浸み出てきた液体をさす。自然に浸みでてきたものが最高品。ベトナム料理には欠かせない味であるが、料理にニョクマムの味が残れば使いすぎで、適当な量が入っていれば気にならない。不足していると物足りない味となる。

塩だけを使ってもニョクマムを使ったような味にならず、日本のつゆメーカーもかくし味に使っているところもある。ベトナムの味はニョクマムにつきるが、唐辛子や酢・にんにく・砂糖・ライムジュースなどを加えて辣い調味料のニョクチャムを作る。白いご飯にかけたりして、日常の生活に欠かせないものといえよう。

ベトナムの人々は、中国料理は油を使いすぎ、日本料理は外観にこりすぎ、タイ料理は味が強すぎる。インドネシアでは豚肉が食べられない。ベトナム料理は材料も料理法も良く世界一うまいのだと胸をはる。

【フィリピン】ベトナムと同様に魚醤を好む国民である。バゴーンとよぶ魚醤とパティスとよぶ魚醤があり、国民にとって必需品である。

前者はアンチョビーのような味がするが陶器のつぼの中に塩と生魚と小えびを入れてよくまぜ発酵させて製品化したもの。ペースト状でまだ肉片もみられる。パティスは澄んだ茶色の液体でなんにでも使われる。生臭いにおいがするがフィリピンの人々はこれがたまらない魅力といっている。また人々はすっきりした酸味を好む。酢・未熟のタマリンド果肉・カラマンシーなどを入れて、すばらしいシニガンスープを作りあげる。食欲が出て暑さを忘れさす味である。

【韓国】コッジャン(唐辛子みそ)・ヤンニョム・カンジャン(菜食醤油)・チョカンジャン(酢醤油)・チョコツジャン(唐辛子酢みそ)をはじめ、焼肉のたれなどバリエーションが非常に多い。

【中国】豆・醤・甜麺醤・芝麻醤・豆鼓・腐乳・■油・蝦油・紅焼・辣油・海鮮醤など。

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