FCビジネス点検 中華そば「ちりめん亭」㈱トモス 対象は人口1万人のミニ商圏
会社設立が一〇年前。モスフードサービス一〇〇%の出資会社で、FC展開は昨年に入ってから積極的に取り組みだした。
それまで直営先行で確実な「ノウハウ」を積み重ねてきた。現在、直営二〇店、FC四五店の計六五店を展開する。
FC出店は月間五~六店でハイペースだ。出店エリアは東京、大阪、名古屋の三大都市圏を軸に全国の主要都市におよぶ。
ハンバーガーとラーメンは商品が異なるが、ストアおよびチェーンオペレーションについては、親会社モスフードでノウハウは確立済みなので、その面での心配はない。
問題は商品力だ。ラーメンは麺、スープに集約される。この二つが一体化されて「うまさ」が商品化できなければ、チェーンビジネスは成立しない。
ちりめん亭はこの点に時間をかけた。一〇年近く直営出店を先行させたのはこのためだ。
麺は店名どおりに「極細ちぢれ麺」と「平打ちちぢれ麺」の二種。素材の小麦粉はもちろん良質のものを使用しているが、麺打ちは水を多用する「多加水製法」で、麺に水を十分含ませる。
このあと、麺を三回に分けて合計三〇時間熟成させる。適温、適湿で完熟した麺はコシがあるばかりではなく、文字どおりに生麺であるので、食べるときにスープと麺が絡みあって一体化、洗練された“中華そば”というおいしさが味わえる。
スープはオリジナルの「鶏豚スープ」だ。特別に育てた鹿児島産の鶏と豚のガラに、ネギ、ニンニク、ニンジン、玉ネギ、キノコ、ショウガなど一〇種類以上の野菜を加えて、五~六時間じっくりと煮込み、さらにオリジナルのエキスを加える。
店にはこれをパックしたものが、麺、具とともに配送されてくる。スープは水を加えて加熱するだけでよく、ずぶの素人でも調理が可能という厨房作業のシンプル化、効率化を実現している。
主役の具であるチャーシューも、鹿児島産の黒豚を六回も独自のたれにつけて焼き込んだもので、独特の味わいがある。
具は麺とスープを引き立たせるので、ネギもメンマ、ザーサイなどもすべてこだわりがあり、ラーメンといえども一品料理としての内容を訴求している。
メニューは中華そば四五〇円、チャーシューメン五五〇円、豚骨ラーメン六五〇円、地どりの冷麺六五〇円(4月から8月までの季節メニュー)など八品目をラインアップ。
メニュー貢献度は中華そば四〇%、チャーシューメン五%、この二品目で五割近くのウエートを占める。
FC展開は商圏人口一万人の小商圏。標準店舗一〇坪規模で月商三〇〇万円、粗利三九%で、償却前利益二〇%。物件取得費や開業時の諸経費を除き、店舗開設資金は八〇〇万円。年間売上げ三六〇〇万円として、総資本回転三・五回という計算になる。まだ出店数は少ないが、高収益のFCビジネスといえる。契約期間は二年。
「これからはチェーンといっても個性がなくてはダメです。強い商品力があって、加盟店の意欲、ヤル気が加われば、成功は確信できます。ぜひ、私どもとパートナーを組んでいただきたいと思います」(ちりめん亭FC本部)
FC展開はハイペースで推進しており、秋ごろには一〇〇店舗を達成する見通しだ。
(しま・こうたつ)
モデル収支(10坪)
・年商 三六〇〇万円
・原価 三六%
・人件費 二五%
・償却前利益 二〇%
・賃料 七%
・光熱費 五%
・諸経費 四・五%
・消耗品 一・五%
・ロイヤルティー 一%(月間ベース三万円)
・総資本回転率 三回転以上
・企業名/(株)トモス(モスフードサービスグループ)
・ストアブランド/ちりめん亭
・設立/八六年2月
・所在地/東京都新宿区納戸町二六
・電話/03・3266・7191
・資本金/四億九〇〇〇万円
・代表取締役社長/井上雅雄
・店舗数/直営二〇店、FC四五店、計六五店(九六年4月末現在)
・売上高/二二億円(九五年度推計)
◇開業資金(10坪の場合、物件取得費、諸経費などを除く)
加盟金/100万円
本部保証金/200万円
内装費/3,350万円
家具照明費/1,300万円
厨房什器費/1,500万円
看板費ほか/250万円
設計料/40万円
総計/800万円