トップインタビュー フォーシーズ代表取締役・浅野秀則氏

1996.07.01 104号 3面

‐‐デリバリーピザ業態は出店過剰で頭打ちという声があります。現状をどのように捉えていますか。

浅野 決してそんなことはない。去年は、震災、オウム、住専などの社会不安で低迷したが、情勢が沈静化するにつれ各チェーンとも回復基調に乗り始めている。デリバリー業態はいつも景気の影響を受けるのがワンテンポずれている。だから業態の景気が本格的に上向くのはこれからだと思う。

もとより日本にはピザの潜在需要がまだまだある。アメリカのピザ市場は日本の約二〇倍。日本のピザ市場は人口比にしてまだアメリカの一割に過ぎない。日本の食習慣がアメリカナイズされている現状から予測して、ピザ市場はアメリカ並に育つ可能性がある。少なくともピザの市場はいまの五倍ぐらいに拡大すると思う。

‐‐最近クリスピーピザをアイテム化するチェーンが増えています。軒並みオーダー構成比二~三割に達する勢いだと聞きますが。

浅野 市場の活性化、拡大を招く喜ばしい傾向だと思う。パンクラストユーザーの飽き離れに歯止めをかけ、パンピザで得られなかったユーザーを新規につかむ好機となるだろう。

当社のマーケティングでは、クリスピーピザの認知度は二〇%という結果がでている。情報を本格的に発信するのはこれからが本番。クリスピーピザは景気回復(デリバリーピザ業態の)の起爆剤となるはずだ。

‐‐デリバリーピザ業態では、「“ピザーラ”のクリスピーピザがいつごろでるのか」という話題で持ち切りです。いつごろ発売するのですか。

浅野 6月下旬から売り出しています。既存七アイテムについてクリスピーを導入する。商品開発でわかったことだが、クリスピーピザに合うトッピングは限られている。簡単にいえば辛口は合うが甘口は合わないということ。

例えば、オーソドックスなミックス系統はマッチするが日本人好みのマヨネーズ系統はアウトだ。だから第二弾として7月上旬に打ち出すアイテムではクリスピーピザにベストマッチする専門のトッピングを披露する予定だ。

‐‐今年度の出店戦略については。

浅野 関西方面の出店を強化する。一年前、関西における「ピザーラ」の知名度はわずか一〇%に過ぎなかった。それがいまや五〇%を超えている。CM効果を追い風に出店を加速するチャンスだと見ている。関西進出に六〇店、それに地方を含め今年度は約一〇〇店出店する予定だ。

‐‐ところで、御社も創立から一〇年目を迎えます。これを節目とする長期計画はありますか。

浅野 ピザーラ事業はいまのままでも当面は伸び続ける。だが組織が大きくなるにつれ社員も増えるわけで、いまのピザーラ事業だけではこの先目に見えてポスト不足。スーパーバイザーにすらなれない者も出てくるだろう。

今年も新卒者の問い合わせが殺到しておりその数はすでに六〇〇〇人。三〇人ほど採用するが、その若者たちを大きく育てるためにも、将来を見据えたポストづくりが必要だ。いうなれば新事業を軌道に乗せることが21世紀に向けた課題といえるだろう。

‐‐具体的にどのような新機軸をうちだしているのですか。

浅野 まだ具体的な青写真はないが、フードサービス事業になることは間違いない。ピザーラを展開する上で物流、商品開発、現地調達など、さまざまなノウハウを構築した。これからはこの蓄積を応用した事業を社員年齢のボリュームゾーンに合わせて育てていく方針だ。

いま、新事業発掘のために役員を数人海外に派遣し、世界中回らせて面白い情報をくまなく送らせている。消費者に役立つ物でコンセプトが明確であれば必ず売れる。例えば飲食店のプロデュースおよびリース業など、いままでに類のない事業も考えている。

他業種のチェーンを見てもわかるように事業の二本目の柱をつくるのは至難の技だ。だがわれわれはつくる。必ずつくる。「ピザーラ」にしろ新事業にしろチェーン一〇〇〇店達成が経営陣の合い言葉だ。

‐‐新卒の応募者が殺到しているようですが、浅野さんが面接するときは何を選定基準にするのですか。

浅野 やる気につきます。成績というのは学校によって違うし当てにならない。学生時代、何をひたむきにやってきたのか、これについてつきつめて話を聞けば大体わかる。後は彼女彼氏がいるか否かだ(笑い)。

異性とのつきあいがあれば、それだけ人付き合いにも長ける。例えば、男が彼女をつくり、つき合いを続ける場合、知恵使いに相当のエネルギーを使う。相手にアプローチし相手のことを親身に考えた経験のある者は人間性豊かだ。当社ではそういった人材を必要としている。

‐‐デリバリーピザ業態に対する個人的見解を聞かせて下さい。

浅野 デリバリーピザは定着したがブランドバリューについてはまだ疑問符がつく。自社調査によると、消費者には「ここのピザを食べたい」という意識がまだ欠けている。「宅配ピザ屋が楽だから頼もう」とする向きがまだまだある。これではいけない。「ピザーラのピザが食べたいから頼む」とするマインドをユーザーすべてに持たせなければならないのだ。デリバリーピザ業態はまだブランドバリューが薄い。

「ピザーラ」は今後さらにブランドバリューを研ぎ澄ます必要がある。そのためにはとにかく商品開発。「おいしいピザは“ピザーラ”に限る」というイメージを徹底する努力が必要だ。他店の動向を気にするよりも、まず己のアイデンティティーを明確にすること。そのためにはブランドバリューを確立すること。これが個人的見解だ。

‐‐今後、デリバリーピザのリーディングカンパニーとして、業態を盛り上げることを期待します。ありがとうございました。

昭和28年生まれ・慶應義塾大商学部卒。事業欲旺盛で学生時代から旅行代理業など数々の事業を手掛ける。昭和62年「ピザーラ」一号店オープン。卓越した商品開発力、TVCMに先べんを付けるなど先見性ある鋭いイメージ戦略で、わずか一〇年目にしてチェーン四〇〇店を展開する。いまや業態のリーディングカンパニーとしての位置づけにある。浅野氏のモットーはとにかく“やる気”。何についても学ぼうとする意欲と、彼氏がいるか否かを入社条件にするなど、青年実業家ならではのユニークさが魅力だ。

最近は多店舗化の勢いを加速させるばかりか、社員の将来像を踏まえた新規事業の模索までもいち早く乗り出している。絶好調「ピザーラ」の浅野氏を直撃した。

(文責・岡安)

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