インサイドレポート 二毛作、三毛作でしのぎ ジラフ、9時以降はショットバーに
プロントは昼喫茶、夜ダイニングバーの“二毛作経営”。ジラフは昼コーヒーショップ、夜ビアパブ、深夜ワンショットバーの“三毛作経営”。運営形態が似ていれば、立地も駅前商店街、ビジネス街、繁華街と変わるところがない。商品構成も似ている。出店戦略も両社ともにFCシステムを導入している。完全なライバル同士だが、出店はジラフが二〇店、プロントが九四店と、プロントが大きくリード、出店数についてはプロントに軍配が上がる。また、プロントは8月14日、上野に昼夜一体化した運営の新業態「カフェプロント」をオープン。今後の成果をみて、二タイプでの立地戦略を展開していく考えもある。ジラフを立地戦略の面でつき離していく方針のようだ。だが、両社とも昼夜の売上げはフィフティフィフティ。一店舗で“多毛作経営”の出店には成功しているといえる。
キリンビールの一〇〇%子会社(株)キリンアクトが経営する“三毛作”の飲食チェーン。八八~八九年ごろからテストショップでリサーチを進めていたが、第一号店を出店したのは九〇年5月。
現在の出店数は直営九店、FC一一店の計二〇店だが、今年3月、別会社で展開していた高級コーヒーショップ「カフェ・セボール」を吸収合併したので、トータルでのチェーン数はセボールの八店(直営四店、FC四店)を加え二八店になった。
しかし、これはチェーンオペレーションを一体化したということで、セボールはあくまでもコーヒー専門店として展開し、ジラフに移行することはない(キリンアクト本部)。
ジラフは昼、夜、深夜の時間帯別にメニューを提供するという営業形態で、プロントより一機能多い“三毛作経営”ということになるが、夜、深夜は運営ソフトがやや異なるくらいで、とくにメニューが変わるというような大きな差はない。
このオペレーションは、午前7時30分~午後5時30分までが昼タイム、午後5時30分~9時ビアタイム、9時~11時(場所によって深夜2時)までがワンショットバーというシステム。
メニューは昼がプロント同様にコーヒー一八〇~二〇〇円と焼きたてパン、パイ、サンドイッチ、ケーキ類一八〇~二八〇円などの提供。
夜および深夜のアルコールタイムは生ビール、ウイスキー、カクテル四〇〇~五〇〇円前後に加え、つまみ料理としてポテトフライ、一口コロッケ、ピザ、スパゲティ三〇〇~七八〇円など。
料理はつまみといえども食事性の高いもので、すべて手づくり感覚のものだという。つまり冷凍素材であっても店内でクッキングしているということだ。
夜と深夜のオペレーションの違いは、深夜はさらに照明をおとし、BGMを静かなジャズに切り替えるというシステムで、ハード面での違いはない。
出店は首都圏、京阪神を主体に、現在は年間四、五店のペースだが、九八年以降一〇店前後に引き上げる。これは出店コストの軽減で、FC展開が容易になったとの判断からだ。
店舗面積二五~三〇坪。客層はもちろんプロント同様にサラリーマン、OLがボリュームゾーン。
客単価は昼二八〇円、夜一七〇〇円。月商九〇〇万円が標準だが、収益は二四・七%(償却前利益)と高い。
FC加盟の条件は加盟料一五〇万円、ロイヤリティー三%、契約期五年。立地は駅周辺、駅構内、飲食街、オフィス街など人通りが多い場所で、とくにこだわりはない。
「他社との差別化については提供商品、サービスの質、クオリティーをどう高め維持していくか、ということに帰結してくると思うのですが、ハードの面でも消費者にアピールし、選択しやすいよういろいろと検討しているところです」(キリンアクト志村悟社長)
ハード面の検討といえば、二五坪クラスで従来四八〇〇万円かかっていた開業資金を、内外装の標準化、設備のコンパクト化などによって二割強ダウン。また、工期も四五日から三〇日に短縮することに成功している。
加盟店の投資負担が大幅に低減し、収益力がさらに高まることになるので、この面での差別化も進むことになる。
午後5時30分までがコーヒーショップ、9時までがビアタイム、そして翌朝2時までがワンショットタイムに変身する(神田店)
・チェーン名/「GIRAFFE」(ジラフ)
・会社設立/平成3年11月
・所在地/東京都渋谷区神宮前六‐二六‐一(Tel03・3498・9136)
・資本金/一億五〇〇〇万円(キリンビール一〇〇%出資)
・代表取締役/志村悟
・従業員数/四〇人
・出店数/ジラフ=直営九店、FC一一店、カフェ・セボール(高級喫茶)=直営四店、FC四店
・売上高/二二億円(九六年度目標=ジラフのみ)