飲食トレンド 2つの顔を持つピザ店、独占・競合商圏で屋号を使い分け
一大ブームを巻き起こしたデリバリーピザ。かつての勢いはないものの、利便性が支持され業態としての地位を確立した。そこで起きているのが競合激化である。流行に乗った出店が相次ぎ市場はすでに飽和状態。各店舗は他店との差別化に躍起である。デリバリーピザ店の新規戦略を追った。
東京・蒲田に二つの顔を持つデリバリーピザ店がある。ピザシティーとピザマックス。一つの店で二つの屋号を持つのである。
表向きは別々の店。だが実態は双方とも同一の経営、店舗、従業員、食材なのだ。
ユーザーから店舗が見えぬ業態特性を利用した複合展開というわけである。
ピザシティーは客単価二五〇〇円(推定)の通常店。ピザマックスは客単価一五〇〇円(推定)のディスカウント店。トッピングだけが若干異なる。他店の商圏と重なる競合地区にはピザマックス、独占地区にはピザシティーのチラシをポスティングする“商圏の使い分け”がミソ。他店が軒並み売上げを下げるなか(ピーク時よりも)以前のままの月商五〇〇~六〇〇万円をキープしている。この他ポスティングの時期についても、給料日前はピザマックス、後はピザシティーと使い分けている。
売上げの内訳はピザシティー六~七割、ピザマックスが三~四割。不思議なことに店が同じとわかっていても、常連客は分かれるそうだ。
「飽和状態のデリバリーピザ業態で生き残る戦略」とする同店。売上げが上がらぬデリバリーピザ店が安易に複合店化する姿勢を否定。ピザ店としての専門イメージだけは守りたいという。
弁当とデリバリーピザの複合店化は数多いが、同業種を併せたケースはこれが初めてである。専門店イメージのダウンを懸念して、ピザと同じイメージのドリア、パスタ戦略で成功したチェーンも真っ青だろう。それほどまでに奇抜かつ効果的なアイデアなのである。
デリバリー業態の応用戦略はまだたくさんある。最新情報をリポートした。
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