インサイドレポート 低価格コーヒーチェーンのシェア争い シャノアール

1996.09.02 108号 5面

シャノアール(本社/東京・板橋区)は会社設立が昭和40年。三〇年が過ぎる。学生や若い勤め人たちが喫茶店を唯一の語らいの場、社交の場として利用していた懐かしい時代だ。

ヨーロッパスタイルのシックで落ち着いた店づくり、五〇坪、一〇〇坪の大型店で、しかも直営出店。店舗数はドトールや珈琲館などFCチェーンに比べれば少ないが、しかし、“ビジネス第一主義”よりも、「喫茶文化」のこだわり、おもいを企業理念に、地味ではあるが、着実に出店数を伸ばしてきている。

九五年度実績では直営店舗数一一五店(前年比八・五%増)、売上げは九〇億円(同一五・五%増)。来年度には一〇〇億円企業に躍進する見通しだ。

店舗展開は本体のコーヒーハウスシャノアール、カフェセジュール、カフェヴィラージュ、カフェテリアノックノック、カフェベローチェで推進しており、ドトールコーヒー同様の市場をセグメントした多業態戦略を展開している。

といっても、現在の出店数は本体のシャノアール(七二店)と、「一五〇円コーヒー」のベローチェで九割以上を占め、実質的にはこの二つの業態が同社の屋台骨となっている。

ドトールの一八〇円コーヒーの登場は、対象顧客層のサラリーマンたちを欣喜させた。一杯のコーヒーを温もりがあり、清潔な環境で楽しむことができるからだ。

ベローチェの一五〇円コーヒーはさらにサラリーマンたちを感激させたが、一方においては「味は本物?」と、あまりの安さにコーヒー愛飲家たちをとまどわせたのも事実だ。

コーヒー豆もブラジルやコロンビア産など質の高いものであるし、焙煎もプロの職人がおこなうしっかりしたものだ。

プライスブレイクのヒミツは、店舗運営の省力化、効率化による生産性の向上で実現できているのだ。

ベローチェは八六年11月、東京・代々木に出したのが第一号店だ。第二号店は翌年12月の町田店。その後、着実に出店し、今年8月末現在で四四店舗を数える。

当然のことながら質の面においても、消費者に支持されていることを証明している。しかし、「日経レストラン」8月二一号によると、味の評価ではプロント(サントリー・UCC)、ジラフ(キリン)より高いがドトールに比べ約四ポイント低く、店のサービス、ホスピタリティの面ではドトールの二五・七%に対し、一一%と、プロント、ジラフ、エフェドクリエ(ポッカクリエイト)と比較しても最下位にあり、この点も大きな課題だ。

店の清潔感でもドトールの一九・八%、プロント二〇・四%、ジラフ一三・九%、カフェドクリエ一六・三%に対し、ベローチェは一三・二%と最下位だ。

安さではインパクトを与えているが、質やオペレーションの面で、ドトールを超えていないということだ。

ベローチェの出店は本体のシャノアール同様に五〇~一〇〇坪と大型店が多い。今年11月にはお台場(東京・港区)のフロンティアビルに一五〇坪の店を出店する。

「いろいろと改善すべき点、向上させていくべき点はあります。でも、シャノアールが儲け主義に走らず、“喫茶文化”にこだわっていることだけはホメて下さいよ」(シャノアール前出木村部長)

喫茶文化といえば、同社はこれからの事業のあり方として、食器や絵画、インテリア、雑貨グッズなど物販なども取り扱っていく考えで、この面での収益確保も実現していく。

店舗出店についても今年6月、川崎・綱島に出した書店との併設店の例のように、カルチャー機能の複合出店も活発化していく。今後の推移が注目される。

・企業名/(株)シャノアール

・チェーン名/「ベローチェ」

・会社設立/昭和40年3月

・所在地/東京都板橋区本町一一‐六(Tel03・3964・8481)

・資本金/二億三三〇〇万円

・代表取締役社長/中村脩

・従業員数/三〇〇人

・出店数(全体)/直営一一五店(九五年度)

・売上高/九〇億円(前年比一五・五%増、同)

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