消防庁が初の全国統一安全基準 ダクト火災予防とホテルイースト21東京の場合

1996.10.07 112号 4面

「火災で老舗が店を閉めなくてはいけなくなったケースを何軒も見ている」((株)新橋亭・呉東富社長)というほど飲食店の火災は命取りであり、絶対にあってはならないことである。火災原因の一つであるダクト火災は、東京消防庁が昭和51年にグリス除去装置の安全基準を導入以来急激に減少した。その後、安全基準は数度改正されてきているが、この8月に自治省消防庁から初めて全国共通の「グリス除去装置の構造などの基準」の通知が行われた。従来のものと異なる方式、材質などによるグリス除去装置が開発されていることを捉えたものである。防災のみではなくダクトから近隣に排出する油煙を最小限にする、厨房の労働環境を快適にするなど、さまざまな効果のあるグリス除去装置。その普及率は八割とも九割ともいわれているが今一度、グリス除去装置を点検してみる。

ホテルイースト21東京(東京都江東区、03・5683・5683)は平成4年にオープン、鹿島建設が管理運営し、オフィスビル、商業ビル、飲食およびサービス施設などがバランス良く融合した多機能型都市「東京イースト21」の中核として機能する本格的都市型ホテル。一九世紀のヨーロッパの雰囲気に、エレガンスでシックなムードが漂う。

ホテル内に飲食営業許可施設は七ヵ所ある。グリス除去装置は施設の機能を考慮してグリスエクストラクターが主流だ。

「エクストラクターは初期投資としては高価であるが、油除去率が高いのでダクトの清掃が少なくてすみ、ファンの汚れも少ない。自動洗浄方式なのでメンテナンスコストも安く簡便」(販売企画室松本将規氏)

同ホテルはオープン三年目でダクト排風機を清掃したが、業者に「まだ清掃は早かったかも」といわれるほどだった。排風機清掃はさまざまな業態が入っている中で中華・洋食は頻度を見ながら対応、ベーカリー関係は調理厨房に比べると頻度が少なくてすみそうである。

鉄板焼レストラン「木場」ではバッフル型のダクトフィルターを使用している。「オープンキッチンでフィルターがお客様の目に触れるため、ピカピカに磨いて室内デザインの一つ、ユニフォームの一部という位置づけです」(同氏)とレストランの演出にも一役買っている。

同ホテルではサービス向上委員会をレストラン、宴会場などセクション別に設置、施設のハード面だけでなくソフト面でもサービスと安全に対応しようと標語募集など意欲的に活動。また、衛生パトロールとして施設の自主検査を開始している。

「今の若い人はきれいな環境のもとで仕事をしているので怖さを知らない。危険に対しての抵抗力がなくなっている。一連の活動は、いざというときの対応教育という意味も含んでいる」と最新技術を伴った設備におごることなく、安全確保の努力を続けている。

購読プランはこちら

非会員の方はこちら

続きを読む

会員の方はこちら