低価格時代の外食・飲食店 総合化、多業態のすかいらーく

1996.12.16 117号 4面

すかいらーくはファミリーレストラン「すかいらーく」を中軸に多業態化を進めてきたが、平成5年7月から出店を開始してきたダイニングハウス「ガスト」の展開は、外食産業界に大きなインパクトを与えた。

すかいらーく多業態化戦略の中で最も成功しているケースだ。

ガストは「ハイバリュー」「ポピュラープライス」を出店コンセプトに、初年度二〇〇店舗以上を開設、ガスト旋風を巻き起こした。

ハンバーグステーキ三八〇円、和風ハンバーグ四八〇円、サイコロステーキ六八〇円、スパゲティナポリタン三八〇円、エビピラフ三八〇円などメニューは低価格志向だ。

しかも来店動機を高めるために、お替わり自由の「ホットドリンクバー」(一八〇円)を設け、この面でも話題を呼んだ。ドリンクメニューはコーヒー、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、日本茶など一二種類。

店舗展開は主として集客力の落ちた「すかいらーく」からの業態転換で進め、短期での大量出店を実現している。今年10月末現在の出店数は四八四店、全体の五五%を占める。

ガストの今後の出店については、北陸、甲信越、中部、四国、九州など地方都市で強化していく。九七年度は新規に五〇~六〇店を計画している。

主力業態に成長したガストに加えては、ヤング層をターゲットにしたカジュアルダイニングの「スカイラークガーデンズ」、料理、サービスともに質的高さを求める中高年層対象の高級ダイニング「スカイラークグリル」についても出店を積極化していく。

これら二業態についてはガーデンズが平成6年、グリルが平成7年に入っての出店で、ガスト同様急テンポでの店舗展開をみせている。ここ数年来業績が低迷しているすかいらーくにとっては、大きく活路を広げる成長性の高い業態だ。

業績は今年6月の半期決算で売上高七〇六億円(前年同期比一〇・六%増)、経常利益四三億円(同四八%増)。12月期予想では売上高一五二〇億円、経常利益一〇〇億円。スクラップ&ビルドによる体質改善で、見通しが明るくなってきた。

すかいらーくは国内ファミリーレストランのパイオニアだ。昭和45年7月、東京・国立に第一号店(現在はガストに業態転換)を出店した。二六年前のことだ。デニーズより三年も早い。

今年10月末現在の出店数は八八一店。“ロードサイドレストラン”御三家と称されるロイヤル、デニーズに大きな差をつける出店数だ。

すべて「すかいらーく」一業態での出店ではない。コーヒーショップ「ガスト」(四八四店)、高級ダイニング「スカイラークグリル」(九二店)、カジュアルダイニング「スカイラークガーデンズ」(七一店)などを含んだ出店だ。

店舗展開は関東、甲信、関西、中国地区を中心に、ほぼ全国におよび、国内最大のレストラン企業としての地歩を築いている。

すかいらーくの市場戦略は、単一業態の出店にとどまらない。消費者ニーズや価格政策によって業態開発を進め、全方位での店舗展開を推進している。

しかし、すべての業態開発が成功しているわけではない。一〇年前にチェーン化を意図して出店したローストビーフとサンドイッチの店「ビリージン」はすでに撤退してしまっているし、軽食とテークアウトのデリカテリア「マルコ・デ・ポロ」も一〇店どまり。

八〇年代に入ってチェーン化に乗り出したパブレストラン「イエスタデイ」も、一時期は二十数店を出店したが、現在は業態転換やスクラップにより、わずか一店舗が残っているのみだ。

すかいらーくの多業態化戦略は、市場創造の出店戦略であるし、企業を活性化する経営戦略でもある。しかし、一方においては企業エネルギーを分散させるマイナス面もある。

人材が育たないままに計画先行の出店であれば、このリスクは大きくなる。出店と店舗の運営は人的資源にかかっているし、出店の成功はその質的レベルに依存することが大きい。

“ファミリーレストラン御三家”というのは、すかいらーく、デニーズ、ロイヤルホストのことだが、すかいらーくとデニーズは一、二位を争う国内有数のビッグ企業だ。しかし、同じファミリーレストラン(コーヒーショップ)といっても、両社の出店戦略は大きく異なる。すかいらーくは子会社を含め和・洋・中多業態での店舗展開。デニーズは一業態にとどまった出店。いわば、レストランビジネスの「総合化」と「専門化」の市場戦略だ。出店のテリト

「すかいらーく」などからの業態転換で短期大量出店を果たした「ガスト」‐‐全体の5割を超える(杉並・宮前店)

企業名/(株)すかいらーく▽ストアブランド/「すかいらーく」「ガスト」「スカイラークグリル」「スカイラークガーデンズ」「イエスタデイ」▽会社設立/昭和37年4月▽本社所在地/東京都新宿区西新宿六‐一四‐一(Tel03・3349・7070)▽資本金/一二〇億円▽代表取締役会長/横川端、代表取締役社長・茅野亮▽従業員数/二五八五人▽出店数/計八八一店(九六年10月末現在)▽売上高/一三六九億円(前年比一・九%減)、経常利益八三億円(同二二・四%減)(九五年12月期)▽特色/ファミリーレストランでは出店数、売上げともに国内最大。業績低迷で、好成績のガスト、グリル、ガーデンズの出店を積極化。

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