オーストラリア牛肉 牧場から出荷までの安全性を探る

1996.12.16 117号 16面

一九九六年、日本はO157で震撼とした。対応策として厨房内の衛生管理の徹底に加え、食材の生産から流通の安全性も再認識されるようになった。

このような中、日本の最大牛肉輸入国(九五年三二万t、今年度はアメリカが最大輸入国になる模様)のオーストラリアは、政府と生産・加工業者が一体となって徹底的な衛生管理と品質検査体制を作り上げている。この12月から同国国内のすべての牛肉と畜場、食肉処理加工工場でHACCPがすべてに導入されていることを前提に、同国検疫検査局(AQIS)のHACCPベースのQA(Quality Assurance)管理実施計画を世界に先駆けてスタート。また、牧場から消費者に届くまでどこで問題が発生しても遡って調査できるトレースバック体制も完備、常に向上する国際的な安全基準に柔軟に対応できるシステム構築を行っている。

オーストラリア食肉畜産公社(AMLC)の案内で現地をリポート、その取り組みを紹介する。

国内向け、海外輸出向けを問わず、牛肉生産過程に偶発する微生物、汚染物質を監視するHACCPの最終目標は、微生物や病原菌の発生をゼロに抑えること。一般性菌数、大腸菌、サルモネラ菌、ブドウ球菌、病原性大腸菌O157の検査を採用、平行して残留物質、疾病についてのチェックを行い、万が一問題が発生した場合は生体に取り付けられている「テール・タグ」から出荷された農場やフィードロットを割り出し、問題の場所には規制措置が取られ、指導が行われる。

農場から製品となってコンテナに詰め込まれるまでを、順を追って説明する。

〈農場〉「キャトルケア制度」と「出荷者証明」=「生産する種牛が成長率、枝肉の歩留まり、繁殖能力が良く、レベルが高いという認定を受けている」と紹介された種牛を生産している牧場主のデビットさんは「豪ではすべての牧場に番号が付いている。この牧場は0320。Qはクイーンズランド、IPWは地域名、ピンク色のタグは成長促進剤を使っていないということ。もし使っていたら白」とテールタグについて説明してくれた。

また、「出荷者証明は消費者に安全と品質を証明するためには工場がいくら良くても出荷者が良くなければ全く安全と言うわけにはいかない」と語る姿からは牧場主としての自信と誇りを垣間みた。

また、「今年は生産者にとっては苦難の年。価格が下がり、生体の一キログラム当たり一豪ドル以下になることもあるありさま。だからこそ、品質を良くしないと売れなくなる」と語り、品質管理は死活問題でもある。

一方で明るい話題もある。牛に関するテクノロジーの進歩は日進月歩で、今最も注目しているのは「生体で砂嘴の具合を判別できる」マシーンが後一年で完成されるらしいこと。と畜すればすぐわかるが、生体で判別できるということは画期的なこと。「豪の技術は世界一」と自慢した。

二年前にスタートしたキャトルケア制度は肉牛対象のプログラムで、牛を出荷する際に一五の設問に記入した用紙を添付するというもの。残留物が牛に残らないことを確認するもので、肉牛の取り扱いから出荷時の健康状態、獣医薬品の監視までチェックする。

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