低価格時代の外食・飲食店 「白木屋」 直営で多角化狙う

1997.02.03 120号 5面

白木屋は、といっても運営会社は(株)モンテローザ(本社=東京・武蔵野市)だが、このチェーンは、一四年ほど前は「つぼ八」のフランチャイジーだった。

東京・中野駅南口(JR)のビル二階に出店したのがその第一号で、恵比寿、五反田、池袋、渋谷店と多店舗化を進めていった。

つぼ八本部との契約のトラブルで、FCを脱退したわけだが、現在でも当時の店構えを残す店は多い。つぼ八加盟店以降の店づくりは、大正モダンの雰囲気をイメージした明るく開放感のある内装で、オリジナリティーを訴求している。

店舗数はハイテンポで推移しており、平成8年12月1日現在、三一二店を展開する。

店舗展開は「白木屋」(洋風居酒屋)にとどまらない。和食のみくい処「魚民」(一三三店)、刺身居酒屋「北海道魚萬」(二四店)、焼肉居酒屋「日本や」(一二店)、パブ居酒屋「夢之助」(五店舗)、海鮮寿司「めちゃんこ」(二店)、和食れすとらん「笑兵衛」(二店)、寿司「釧路都寿司」(一店)、カラオケ「歌之助」(五店)、ベーカリーレストラン「喜喜屋」(四店舗)と業態の多角化を推進中だ。

つぼ八の一業態のこだわりに対し、飲食の総合化を目指しているといった趣で、現業態以外にもラーメン、中国料理、民芸居酒屋と、新業態を計画している。

現在の出店数は四九五店。これはすべて直営店で、FC出店はない。九六年6月期決算(九五年度日経飲食ランキング)では店舗数一九九店(前年比一一四%増)、売上高二六四億円(同八七%増)という驚異的な伸び率をみせていたが、現在、出店数はすでに二・五倍の伸び、売上げも今年6月期では一〇〇〇億円を達成する見通しで、トータルの業績ではつぼ八を大きく引き離す勢いだ。

つぼ八はFC展開のウエートが大きいので、同業態の白木屋と比較しても実質的(本部業績=直営)には、すでに白木屋の後塵を拝しているということになる。

「大衆のニーズに応え、総合フードビジネスのリーディングカンパニーを目指して、失敗を恐れず、情熱を失うことなく新たな市場創造に挑戦する」

これはモンテローザの企業理念だ。かつてはつぼ八も、村さ来もこういった企業理念を抱いてチェーンビジネスにチャレンジしてきたのだが、今は前稿のとおり、両創業者ともに前線から消えている。

モンテローザ創業者の大神輝博氏は言う。

「データ(数字)だけの判断はダメ、常に時代の流れをとらえ、無から有を生み出す。たゆまざる努力を積み重ね、来る国際化時代、高度情報化時代にも対応した堅固な経営戦略で、二一世紀の総合フードビジネスを目指す」

オーナー経営の企業組織だけに、事業意欲は旺盛だ。

しかし、攻めの企業は守りに弱いという見方もある。事実、本体の白木屋はブランド力もあり、人材も育っているので安定しているが、二本柱の魚民は苦戦しているという話も伝わってくる。

また、一方においては魚民のテコ入れで、白木屋の有能な店長をコンバーターしているとの話もある。前を見て後ろを顧みないでは、業績低下の憂いが出てくる。

チェーンビジネスはトータルパワーが勝負ということもあるが、一店一店の力が落ちては、企業経営としては存在しえなくなる。

後方の弱体をカバーするために攻めていき、そのパワー不足を補完するというのであれば、その先行きは見えてくる。

物件確保はオーナー自らが陣頭指揮で決定する。しかも直営オンリーの出店。意思決定のスピードに欠け、保守色の強いチェーンにとり大きな脅威だ。

白木屋が出店攻勢をゆるめず、ベストロケーションに二〇〇坪、三〇〇坪の大型店を展開するのは、オーナー自らの即決の意思決定があるからだ。

キャパのある大型店は生産性も高まる。キャパを大きくして、宴会客をどう集客するかも、競合がし烈化する居酒屋ビジネスの重要な課題だ。

中長期展望では平成17年に東証(一部)上場、出店二〇〇〇店舗、平成25年には年商五〇〇〇億円を目指す。企業目標は大きい方がいいが、業態の多角化でエネルギーが分散しないか、労働強化で現場の不満も聞こえてくる。

ワンマンオーナーであれば、本部組織も機能分化しなくなる。内部固め、人材の育成もこれからの課題といえる。

◆会社概要

企業名/(株)モンテローザ▽チェーンブランド/「白木屋」「魚民」ほか▽創業/昭和51年10月▽会社設立/昭和58年5月▽本社所在地/東京都武蔵野市中町一‐一七‐三(Tel0422・36・8888)▽資本金/二億円▽代表取締役会長兼取締役社長/大神輝博▽従業員数/一万三三二八人(パート、アルバイト含む)▽事業内容/居酒屋、焼肉居酒屋、カラオケ、ベーカリーレストランほかの展開▽出店数/四九五店(平成8年12月1日現在)〈直営出店〉▽売上高/二六四億円(九六年6月期、前年比八七%増)

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