低価格時代の外食・飲食店 「東天紅」年間“味のカレンダー”

1997.03.17 123号 4面

東天紅と銀座アスターは、中国レストランの店舗展開では一、二位を争う大手企業だ。店舗数五〇店前後、売上高一六〇億円前後と拮抗する企業スケールで、このところ一段落した状況にあるが、二〇〇~三〇〇坪と大型店の出店を積極化している。しかし、ポストバブル経済にあっては集客力は低調で、業績は思惑どおりには伸びず、両社ともに苦戦を強いられているという状況だ。4月からは消費税も上がる。メニュー、価格政策、客数をどう確保していくかが、現下および今後における課題だ。

東天紅は、小泉グループの外食企業だ。昭和36年、東京・上野に本店を出店以来、一貫して中国レストランの事業を推進してきている。

今年2月末現在、出店数は五二店を数える。売上高は九六年2月期で一五七億円(前年比一・三%増)、経常利益七億五〇〇〇万円(同三五・六%増)、今年2月期は売上高一六六億円(一〇・六%増)、経常利益一〇億六〇〇〇万円(二三%増)を予想しているが、これは御殿山店(東京・品川)や、東京オペラシティ(渋谷)の和洋中の複合店舗「スカイウインドウズ」など新規出店やコスト削減などでの業績向上だ。

「既存店は下期軟調ぎみだが、通期一%増(上期一・九%増)を見込む。8月開業(九六年)のスカイウインドウズなど新店が牽引。賃借料引き下げなど経営費節減も奏功。営業外計上の開業費増を吸収し、経常益回復」(東洋経済・会社四季報九七年一集新春)

中国レストランは大小多様な運営形態があるが、高級・高価格帯の大型レストランは、ポストバブル時代はシビアな経営を強いられている。

値ごろ感、低価格志向が消費者マインドであるので、高単価商品(メニュー)は、付加価値がなければ敬遠されることになる。

この点、東天紅の店舗運営はきめ細かく、戦略的だ。上野店は前記のとおり、昭和36年のオープンで、地下一階、地上八階建ての単独ビル店舗だが、施設規模が大きいだけに、フロアごとに主張があり、運営形態は大中の宴会場からバイキング、グリルと多様だ。

しかも、全館が1月から12月まで、一年間を「味のカレンダー」で運営されており、顧客管理や来店動機の喚起にスキがなく、時間を置くことがない。

1月は正月、新年会、七草、成人式、2月は節分、建国記念日、バレンタイン、旧正月、3月は花見、春分、ホワイトデー、卒業式、ひな祭り、春休み、4月は花見、入学・入社式、叙勲、ゴールデンウイーク、緑の日、5月はこどもの日、母の日、という具合だ。

単にハード(施設)が大きいというだけでは、顧客への訴求はシンプルすぎるし、来店動機を喚起し続けることも困難だ。

創業三五年。店舗の運営、営業ソフトは多方面にわたってストックされている。バブル以前の好不景気の波も乗り切ってきた。東天紅は八四年に東証、大証とも一部上場を果たし、株は六〇〇円前後で推移している。決して高値の水準ではないが、新店出店の資金調達力はあるということだ。

新店といえば、今年1月には東京国際フォーラムにも出店したが、昨年8月にオープンした東京オペラシティタワー五四階の「オペラシティ・スカイウインドウズ」は、今後の業績展開に期待する大型店舗だ。

中国料理「東天紅」(一三二坪、一二二席)だけではなく、欧風料理「ロゼリアン」(九二坪、一〇五席)、日本料理「海燕亭」(九一坪、八八席)、宴会場「プリモ」(九七坪、立食二〇〇人、着席一五〇人)の複合施設で、平成5年4月に千葉駅前に出店した「千葉スカイウインドウズ」に次ぐ、二号店目の和洋中の「複合ディナーハウス」。

オペラシティは地上五四階、地下四階のオフィス棟、地上三~六階コンサートホール棟、三~四階アートミュージアム棟からなるが、隣接地には第二国立劇場も建設されることになっている。

オペラシティはオフィス棟と関連の商業施設が機能しているのみで、ディナーハウス・スカイウインドウズは、いわば先行投資型の施設展開だ。

オペラシティはコンサートホールやアートミュージアムの完成は、今年10月から平成11年3月ごろの予定で、トータルとしてのシティ機能はまだ先になる。第二国立劇場も今年10月ごろのオープン予定で、これら施設の完成に合わせスカイウインドウズの業績も高まっていく見通しだ。

初年度売上げ目標八億円。平日は会社関係やビジネスマンの利用、土・日・祝日はカップルやファミリー客が主体。新鮮な素材の利用、日本人のし好に合わせた料理づくり、減塩、減糖、減脂肪のヘルシー志向。

プロが創り出す食文化とゆとりの都市空間。価格もコース料理で東天紅が五〇〇〇円、ロゼリアン三八〇〇円、海燕亭六〇〇〇円からと低価格だ。

上野本店ではバイキング料理が一五〇〇円から。これは昼、夜、曜日ごとの営業形態になるが、日・祝日のディナータイム(午後5時~8時30分)でも大人五〇〇〇円、子ども二五〇〇円。

フルコースでの会食、商談からカップルやグループでのグリル、バイキング利用と、施設の運営、営業機能は多様だ。

複合ディナーハウスは物件が確保できれば、今後とも出店を進めていく。消費が落ち着き、成熟化した今日、消費者ニーズをとらえながら、プロの食文化を発信し続ける。東天紅の企業マインドということだ。

◆会社概要

・企業名/(株)東天紅

・チェーンブランド/東天紅

・創業/昭和36年(一九六一年)12月

・会社設立/昭和23年(一九四八年)9月

・本社所在地/東京都台東区池之端一‐四‐三三(Tel03・3828・6272)

・資本金/二五億七二〇〇万円

・取締役会長/小泉和久

・代表取締役社長/平林克哉

・従業員数/六一五人

・事業内容/中国レストラン、宴会・結婚式場展開、ほか

・出店数/五二店

・売上高/一六六億円(九七年2月期)

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