これが21世紀の野菜だ にっぽんの植物工場(14) 収穫期もコントロール

1997.05.05 126号 23面

植物工場には光源の依存により太陽光型、人工光型、併用型がある。今回は、太陽光型をとり、鈴なりに実ったミニトマトの出荷に追われる生産農場を紹介しよう。

訪ねたのは、農業生産法人(有)開拓社の「滑川ミニトマト栽培農場」(埼玉県比企郡滑川町、0493・56・5251)で、東芝プラント建設㈱の養液栽培技術と芝浦テクノス㈱の企画・販売によって平成元年にスタートしたもの。

一七人の地主から借り受けた農地は、一万九〇〇〇坪。当初六棟だったハウスも現在一七棟に増設、建坪総数一万五〇〇〇坪になる。

現在の作付け品目は、過去何回かの紆余曲折を経た後、ミニトマトと一個三〇~四〇gの中玉トマトの二種類となった。商品名は「おやつトマト」。しっかりした甘みと色合いは、従来の野菜であったトマトの概念を破り、果物的トマトとして話題を呼んでいる。

一日の収穫量は、太陽光に依存するため季節により異なるが、平均三tだ。

生産サイクルは、毎年7月~9月半ばまでが苗作り、9月~翌年3月までが毎日収穫日となるように設定してある。

秋口以降に収穫を合わせたのは「露地物が大量出荷し、値が下がる夏を避けた」(東芝プラント建設滑川試験場芳仲担当課長代理)からだ。通年栽培できる植物工場の強味を生かしたといえよう。

販売は、市場を通さず直接に量販店やレストランなどに出荷しており、作り手と買い手、使い手のコミュニケーションをはかるため、パッケージには会社名・住所を明記している。

「消費者の一番の関心は糖度。そのため、出荷先に年間の糖度をグラフで表示する」(芝浦テクノス小山滑川事業所長)

完全とはいえないが、味、品質がコントロールできる養液栽培だからデータ化も可能だ。

二年前から、ミニトマトの希少性が薄れてきたので、新製品として糖度と酸味のバランスが良く、味の濃い中玉トマトを開発、本格生産した。

こうした消費者ニーズをにらみながら切り替えができたのも、試験場、生産、販売の三社が一体となっている同農場の一貫生産体制の強みともいえる。

農業の工業化を目指す植物工場も、電力などのコスト問題、養液の処理、害虫の発生による農薬使用などを今後どうクリアしていくか注目されるところだ。

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