トップインタビュー:フレッシュネスバーガーチェーン代表・栗原幹雄氏

1997.07.07 130号 7面

――「フレッシュネスバーガー」を始めるきっかけは何だったのですか。

栗原 知人に古ぼけた二等地物件を紹介され「ハンバーガー店ならいける」と、ひらめいたのがきっかけです。

以前から米国のハンバーガーチェーンに興味があり、さまざまなチェーンのノウハウ、ニーズの流れを見てきたのですが、その蓄積が物件を見た瞬間一つにまとまり、「ハンバーガー業態の将来像が見えた」という感じでしたね。楽しくてその夜のうちに新業態の企画書をまとめましたよ。

――ハンバーガー業態の将来像、また新業態のコンセプトとは。

栗原 ハンバーガーの新しいポジショニングを作ろうということです。

国内のハンバーガー店は約六〇〇〇店ありますが、そのほとんどがマクドナルド型で、ほかにはプレミアム路線のモスバーガーしかありません。ハンバーガーが上陸してから二五年。いまやファストフードの代名詞であるがごとく認知されているのに、ポジショニングとしては二業態しかないわけです。しかもそのほとんどがプライス&バリュー、工場的生産、駅前立地型。同じ土俵で争っているだけなんです。

顧客ターゲットを絞りポジショニングさえはっきりさせれば、まだまだ需要を掘り起こせるはず。それが「フレッシュネスバーガー」発足のコンセプトなのです。

具体的にいうと既存ハンバーガー業態のハイテク志向に相反する、手作りハイタッチ志向といったところでしょうか。マスに対するミニ的発想ですね。

「ブレードランナー」という近未来映画に宇宙船が飛び交うなか屋台が登場するワンシーンがあるのですが、それを見ると「人間らしいハイタッチなものは失われず逆に濃くなっていく」ということを実感します。情報化社会が進む昨今、高年齢層になればなるほどプライベートスペースを必要としているのではないでしょうか。

私も今年で四六歳になります。われわれの世代はハンバーガーの市場拡大とともに年を重ねてきました。当然ハンバーガーに慣れ親しんできました。が、この年齢になるともはや従来のハンバーガー店には行きづらい。われわれミドル層になると「落ち着いた雰囲気で食べる」ことが欲求の前提になります。

いままでは、そのような潜在ニーズに応えるハンバーガー店がなかっただけ。「あったらいいな」という自身の願いが今回のコンセプトにつながったともいえますね。

――ハイタッチでミドル向けのハンバーガー業態を具体化したわけですね。店舗はどのように展開しているのですか。

栗原 フレッシュネスバーガーは緑、健康をテーマに自然志向でハイタッチを訴求しています。開放感あるオープンエア店舗、緑を基調とする内外装、自然食材によるハンバーガー、花や植木を配したディスプレー、リサイクルペーパーの採用などで、従来のハンバーガーを卒業したミドル世代に照準を合わせています。

メニューはツーオーダーで、メニューボードは黒板に手書き、店員にユニフォームを強制することもなく、とても自然な感じですね。すべて従来のチェーンストア理論に逆行しているものだから、出店当初はまわりから「頭がおかしくなったのではないか」といわれましたよ(笑い)。

要はゆとりある快適空間であればいい。喫茶店も減る一方だから、今後こうした居場所が各地で必要とされ始めるのではないでしょうか。

―-“自由な現場任せ”にみえますが、マニュアルはあるのですか。

栗原 表面的にはラフに見えますが、すべて演出だと考えて下さい。細かな演出の集まりが一体化して、ラフながらも快適な空間を作りだしているのです。

飲食業界には珍しく、当社はディスプレーとディテールの専門スタッフを設置しています。だから一つ勝手にいじると空間すべてのバランスが崩れるほど繊細にできているのです。そのへんがノウハウですね。

――標準店の収支はいかがですか。

栗原 二〇坪・三〇席程度のコンパクト店舗で初期投資は二〇〇〇万円くらい。月商は約五〇〇万円ですから資本回転率は三回。オーナー利益は八〇~九〇万円です。

小資本で資本回転率を上げ、商売として成り立てば御の字といったところ。金銭的な魅力よりも、チェーン発足時のロマンに共感して加盟するオーナーが多いので、われわれの思い描いた通りの展開が着々と進んでいます。

――ハンバーガー業態、またフレッシュネスバーガーの今後の展開を聞かせて下さい。

栗原 飲食小売店の場合、大衆業種であれば、全国に一業種五万店の出店が可能だと考えています。CVSは五万店を超えたし弁当店も三万店に達しています。ハンバーガー業態もこのまま行けば順調に二万店くらいまで伸びるのではないでしょうか。

フレッシュネスバーガーの当面の目標は、ミドル層の集客と二〇〇店舗出店。それ以後はミドル以外の年齢層に合わせた新チェーンを興したいですね。もちろん顧客層を絞り込んで――。

一チェーン二〇〇店舗、五つチェーンを作っても一〇〇〇店舗ですからロマンは広がる一方ですね。

――今後を期待します。ありがとうございました。

昭和26年東京生まれ、四六歳。日本大学生産工学部卒業後、積水ハウス(株)を経て、弁当チェーン「ほっかほっか亭」の設立に参加、チェーン拡大に尽力。平成6年、同チェーンを退社、(株)フレッシュネスバーガーを設立、ミドル向けハンバーガー「フレッシュネスバーガー」のチェーン事業に乗り出す。自然派、ゆとり重視のコンセプトが、情報化社会に生きるミドル層に支持され、ハンバーガー業態のニューフェースとして各地で旋風を巻き起こしている。

(株)フレッシュネスバーガー/本部所在地=東京都渋谷区神宮前二-二一-一四、03・3402・4761/店舗数=三七店舗(直営一三・FC二四)6月末日現在/年商=一二億八〇〇〇万円(平成8年度)/本部スタッフ=一四人

(文責・岡安)

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