シリーズ・売れる惣菜 「パプリカ料理」 ハンガリー料理に欠かせぬ素材
パプリカを正しく呼べばパプリカ・ペッパー。ハンガリー語である。南アメリカが原産地で、インディアンが古くから使用していたのを、コロンブスが新大陸から持ち帰り、ヨーロッパに伝えた。
ナス科の植物で、熱帯では多年生であるが、温帯では枯れて一年生となる。品種が非常に多く、辛口の代表が鷹の爪で、甘口の代表がピーマンとなる。利用法としてスパイス用と野菜用になる。パプリカと同義である。
スパイスは特性として、適量使用が望まれ、度を超すと味を損なう場合がある。しかしパプリカは別格で、たっぷりと使ったほうが色が美しくなり、甘い香りが強く働いて食欲を増すこととなる。
着色スパイスとしての利用範囲は広く、ハンガリアン・グラーシュ、ローゼンパプリカなどのハンガリー料理をはじめとして、サラダ・ドレッシング、ケチャップ、スープ、ピラフ、ロールキャベツ、鶏の丸焼きなどに利用される。
また白っぽい料理に使用すると、赤色はより効果を発揮する。装飾スパイスとしてゆで卵、無色のチーズ、マッシュポテトをはじめ、ソーセージやハム加工などにも活躍する。
広い料理適性を持つパプリカは、肉、油脂、穀粉、野菜などの食材とよく合い、しかも栄養価も優れ価格も安く、有用な素材と呼べる。
使用量の目安として粉末パプリカの場合、フライド・チキン一〇人前で大さじ二杯、フレンチ・ドレッシング二〇〇CCで大さじ一杯、ハンガリアン・グラーシュで大さじ二杯、肉と野菜のパプリカ煮一〇人前で大さじ二杯程度となる。
ハンガリーでは、パプリカ抜きで料理は語れない。グラーシュは世界的に有名なパプリカ・シチューである。テルトット・カーポスターはロールキャベツのパプリカ煮込み、チルケパプリカーシュはパプリカで味つけした鶏料理。
ハンガリー料理には東洋的な味があり、日本人の舌によく合う。ハンガリー人の先祖はアジア系の遊牧民であり、濃厚な味つけ法はまさにアジアの味である。
グラーシュの場合、材料は牛肉、玉ネギ、ジャガ芋、トマト、ピーマン、ニンニク、パプリカ、キャラウェイシード、マージョラムなど。牛肉を角切りにしてパプリカにまぶすのがポイント。中火で煮込み、塩、コショウで仕上げる。ハンガリーの人々は毎日食べても飽きない味として愛している。
ビーフ・ストロガノフもパプリカを使った人気料理である。本来は子牛の腎臓をサワークリームで煮込んだものであるが、牛肉の赤肉やシャンピニオンなどが使われるようになって高級料理に昇格、パプリカで美しい色に仕上げるところが大切。付け合わせにサフラン・ライスを添えると一段と映える。
チキン・パプリカは鶏もも肉(骨つき)を、バターを溶かしたフライパンで色のつくまで焼く。このフライパンに油を足し、みじんの玉ネギを色づくまで炒め、パプリカを加えて香りのつくまでさらに炒める。
煮込み鍋に鶏肉、炒めた玉ネギ、トマトの水煮をつぶして入れ、汁の煮つまったところで粉チーズを加える。鶏肉のほか牛肉、豚肉、羊肉、コイなども良い材料となる。
スペインも主産国の一つでいろいろな料理にパプリカは使われている。ソパ・デ・アホ(ニンニクスープ)、アロシ・コン・ポジョ(鶏肉の炊き込みご飯)、コチフリト(ラムのパプリカ煮込み)などに。パプリカは美しい色と風味をつけるスパイスとして有用で、優れたスパイスと呼べる。