“麺の里帰り”ラーメンを逆輸入する中国
麺のルーツをたどれば中国といわれる。中華麺も中国から出ていった華僑たちにより東南アジア、韓国、日本、そしてアメリカなどへと伝えられていった。そして今、他国で育ち成長した新しい麺が母国中国に里帰りし、長い間育まれてきた伝統の麺文化に“新風”を吹き込んでいる。外国資本との合弁、また一〇〇%外国資本による現地法人化企業と進出の形はさまざまだが、組織の受け入れ体制や食材の仕入れ上の問題、また、食習慣の相違によるメニューの行き違いなど試行錯誤を乗り越え、確実に新しい麺料理として根付き始めた。経済環境は不安定な土壌にあり急速なチェーン展開は望めないが、新しい麺料理への手応えは十分。この里帰りした新しい麺と伝統の麺とが、今後どう棲み分け、どう融合していくのか楽しみなところだ。
中国でチェーン展開する麺店は少ない。そうした中、重光産業が展開する「味千ラーメン」の味と海外出店ノウハウを武器に、東京国際貿易、丸善食品が共同出資し、一〇〇%日本資本の現地法人を設立、ラーメンチェーン店「麺愛麺」を北京に出店した。
一号店は九五年のオープンだが、現在、二年で直営三店、FC一店と出店速度は緩るやかだ。
食材については、将来のチェーン展開をにらんで設立された直営工場から麺、調味料、また無農薬野菜使用の加工品が共同仕入れされている。また同時にスタッフの意識改革が必要と、徹底した日本式接客法や衛生管理などを採り入れ、じっくり地盤を固めてからFC店展開を進めていく考えだ。9月には北京での第一号店がオープンする。
また、「ハチバンラーメン」をチェーン展開する(株)ハチバンも北京に合弁会社を設立、「八番麺屋」を一店出店している。
日本国内と同じ味、味噌、醤油味のメニューアイテムを揃える。食材をすべて現地調達し、試行錯誤の結果、日本の味に近づけている。
同チェーンは、タイに六店出店しており、海外でのノウハウはあるが、「中国では税制をはじめさまざまな規制がある上、収益金を外国に持ち出すこともできない。現状では積極的に出店攻勢をかける時期ではない」(峯越広報担当)とみる。
ただ、客の反応として、日本の食文化を味わいたいという要求は、ひしひしと感じるという。味噌文化のない中国で、人気メニューの一つに味噌ラーメンがあるのもうなずける。
現体制では急速な普及は望めないが、着実に新しい麺文化が浸透することは確かだ。次に北京での麺店のいくつかを紹介する。
(2面につづく)