飲食トレンド:効率・省力化の切り札「クックチル」

1997.11.03 139号 1面

「作業の効率化、省力化が実現し、毎日選択メニューを提供できるようになった。冷蔵庫内に残食がなくなり、調理後はパックした食品を扱うので、一番のメリットは調理工程も含めて“衛生管理の向上”の一言に尽きる。調理・再加熱の時間を計れるのでその間、調理担当者は他の作業ができる」――群馬県の医療・福祉法人「ほたか会」の子会社(株)シー・アンド・エス(電話0279・56・5771)は、同法人向け食事提供を核に多彩なサービスの展開を目指して、今年5月にHACCP対応給食施設「シー・アンド・エス赤城」を完成させた。

稼働半年を経て、樋口明副社長はクックチル導入の感想を衛生面の向上とともに、長時間調理の煮物が簡便に味良く作れることをあげ、高齢者の方に喜ばれていると語る。クックチルによる人気メニューは、シチュー、カレー、とん汁、ロールキャベツなど。

同施設の提供食数は現在五〇〇〇食だが、将来的には一六時間稼働で一万二〇〇〇~二万食を目標にしており、HACCPに基づく厳しい品質・衛生管理を実施、おいしく、安全であることを武器に、今後、学校給食や企業向け仕出し弁当サービスなども取り込んで、関東一円から上越方面への配食ネットワークの拡大を目指す。

来年の秋の完成を目指している東京都昭島市のホテル「フォレスト・イン昭和館」(昭和の森エンタープライズ(株)、電話0425・42・1234)も二一世紀を見据えた厨房としてクックチルの導入を計画している。

調理長の秋山肇氏は導入のメリットを「素材を真空包装して加熱温度、中心温度、保存温度、保存期間など、システムの中でマニュアル化するため、細菌の影響が少なく、衛生的で、平均的に大量生産ができる。材料のロスが少なく、歩留まりがよい。素材本来の風味・旨み・色が逃げず、ビタミンの破壊も少なく、栄養がよい。低温調理で長時間加熱することにより、蛋白質の凝固とそれによる水分の蒸発が抑えられ、肉類などが柔らかく仕上がる。提供は再加熱して袋を切ってそのまま提供できるので、洗い物が少なくなる」。

一方、デメリットは「真空により、香りが閉じこめられるので、素材が新鮮でないと悪さだけが強調される。真空後はにおいや見た目などによる判断ができないので細心の注意が必要。焼き加減、火加減、ゆで加減、塩加減など、加減で調理する料理には不向き。高水準の衛生管理なので、規模、機械、道具、使い捨て容器など、コストがかかる」などをあげており、どう使ったら最も効率がよいのかを考えながら、従業員教育も含めてデメリットをいかに解決していくかが大切と語っている。

適正価格で衛生、品質の向上、健康に良くバラエティー豊かな食事サービスと喫食者の高まるニーズに応えることが激しい競争に生き残る唯一の道である。従来のクックサーブにいかなる新技術を取り込んで効率化と向上を図るかがO157で曲がり角にきている大量調理の課題である。(関連記事2面)

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