低価格時代の外食・飲食店 給食のニューカマー、ソデックスコーポレーション

1997.12.01 141号 4面

ソデックスコーポレーションは、平成5年10月、綜合食品とフランスのソデクソ(SODEXHO)社、東京三菱銀行グループ、三菱商事の四社が合弁で設立した給食会社(コントラクトフードサービス)で、国内では“後々発”の給食会社でありながら、着々と業績を拡大してきている。会社設立時の初年度売上高三〇億円、受託事業社数八〇ヵ所であったが、会社設立四年(平成8年3月期)で売上高五〇億円、受託事業社数約一四〇社と売上高で六七%増、事業社数は一・七倍強に増えた。給食サービスは最大手企業でも年間売上高五〇〇億円程度で、一〇〇〇億円や二〇〇〇億円企業を輩出する一般レストランビジネスに比べれば、企業スケールは小さい。しかも年間売上げ五〇億円を超える企業は少ない。ソデックスは会社設立時において、既に基盤はあったが、三菱グループを中心に受託事業所を増やし、またM&A(買収・合併)とも積極的に取り組んできており、その成果を上げつつある。

しかし、事業所給食や学校給食の先行きは明るくない。企業の減量基調や教育現場の少子化の流れをみれば、おのずと市場の成長に限界がある。将来への活路を切り開いていくには、シェアを切り取っていくか、新たなビジネスを喚起していくしか道はない。昨年9月、ソデックスは三菱商事、仏ソデクソ社との共同出資で新会社「(株)ソデックスヘルスケア」を設立した。社名通りに、高齢化社会に向けての“ヘルス・シルバービジネス”へのチャレンジだ。既存事業にばかり依存せず、先行きの布石は打つ。もっとも、ヘルス・シルバー分野も既に競合状態にあり、進む道は険しい。西暦二〇〇〇年を目標に、第一ステップとして年商一〇〇億円を達成する。コントラクトフードのニューカマーが、三菱グループを背景にどこまでパワーを発揮できるか、業界の関心を集めるところだ。

ソデックス(Sodex)は平成5年10月、綜合食品(株)(東京銀行グループ)四九・〇%、三菱商事二五・一%、仏SODEXHO社二四・九%、東京銀行一・〇%の四社共同出資で設立した給食会社(資本金三〇〇〇万円)だ。

綜合食品は昭和51年設立の給食会社で、主として旧東京銀行関連施設での受託事業を展開していた。平成5年当時で受託事業所数八〇ヵ所、年間売上高三〇億円。

給食会社としては中堅企業としての存在であったが、新会社ソデックス(設立時ソデックスケータリング(株))は、この綜合食品の受託事業を引き継ぐ形で給食ビジネスに参入したわけだ。

仏ソデクソ社(別掲)は世界でも有数の給食会社で、世界六二ヵ国に進出し、一万三〇〇〇ヵ所での施設運営を行い、従業員数約一四万人、売上高五七〇〇億円に迫るというビッグ企業。

単に企業スケールが大きいだけではない。食文化の本場フランス生まれのフードカンパニーだけあって、クッキングから運営サービスまで、きめ細かなノウハウを蓄積しており、小は高級レストランから大はオリンピックやスポーツ大会といった給食サービスなど施設運営(受託事業)は多方面に及んでいる。

人材、資本力ともに主導権をとる三菱商事(三菱グループ)は、綜合食品、ソデクソ両社の「ハード」と「ソフト」を取り込んでの給食ビジネスの展開であるのだ。

三菱商事にとって、給食ビジネスに参入するのはかねてからの念願だった。商社では三井物産(エームサービス)をはじめ、住友(ロイヤルマリオット)、伊藤忠(ガードナーマーチャント)などが先行して給食ビジネスを展開している。

この狙いは単に事業所給食や学校給食の枠にとどまらない。高齢化社会に対応しての病院、福祉施設などの“シルバーケアビジネス”の市場創造を意図しているのだ。

病院給食や高齢者介護の問題は、多様なビジネスチャンスを生むと期待されている。

日本は西暦二〇一〇年には六五歳以上の人口が二五%を占めるという。世界に例のない高齢化社会がやってくるというのだが、既に高齢者介護は社会問題、国の福祉行政の大きなテーマとなっている。

こうした背景にあって、高齢者向けの在宅を含む給食ビジネスは、近い将来には一兆五〇〇〇億円から二兆円マーケットに迫るものと予想されている。

三菱グループのもう一つの狙いは、先発商社同様にこのシルバーケアの給食需要に対応していこうということにあるのだ。

昨年8月、ソデックスケータリングは、三菱商事五〇%、東京三菱銀行、仏SODEXHO社各二五%の持ち株で資本金三〇〇〇万円を、六倍増資の一億八〇〇〇万円に引き上げ、社名もソデックスコーポレーションに変えた。

東銀グループの綜合食品は、三菱銀行と東京銀行の合併によって、新会社設立四年にして三菱グループに吸収される形になり、持ち株会社としては存在しなくなった。

巨大資本力と人材パワー。三菱グループのシナリオは着実に進行していく。為替など国際金融で国内トップバンクの地位にあった東京銀行も、合併二年目にして旧三菱銀行に同化している。いずれ銀行名も元の「三菱銀行」に変わるだろうという見方もあるが、為替ノウハウを吸収し、人事をコントロールしているのであれば、それも可能だろう。

ともかくも、新生ソデックスは組織を一新する形で、給食ビジネスの市場創造に再スタートを切っている。新規受託契約については、既に東京国際フォーラムをはじめ、錦糸町そごう、東京三菱銀行、海城学園など大口の施設運営が始まっている。

給食(コントラクトフード)サービスは、低消費単価、低利幅というシビアなビジネス環境に加えて、喫食率の問題もある。

喫食率については、事業所(オフィス)従業員が一〇〇〇人、二〇〇〇人いたとしても、全員が社員食堂を利用するとは限らない。

事業所の周辺に飲食店舗やコンビニ、弁当ショップがあれば、自己の好みに応じて従業員はその方向に流れていくことになる。

食堂(給食)メニューが貧弱で魅力がなければ、喫食率は低下する。喫食率は一般的には五〇、六〇%が上限とされているが、メニューの質に加えてバリエーションがなければ、利用者に支援されず、この比率は大きくダウンする。

メニューの提供ばかりではない。施設(食堂)の環境も重要なファクターになっている。街中のレストラン並みに、清潔で明るい雰囲気でなければ、社員(利用者)に敬遠されるということだ。

お仕着せのルーティンメニュー、みすぼらしい施設環境では、特に若い女性社員には支援されない。どう利用者を満足させるか、喫食率を高めるのは大きな課題だ。

その点、ソデックスはニューカマーだが、仏ソデクソ社の強力な「ノウハウ」を武器にしている。食文化の本場フランスをホームグラウンドとする給食会社であるだけに、その思想は「手づくり志向」「フレンドリーサービス」がモットーで、給食サービス、社員食堂といっても基本的には街中と変わらないメニュー提供と施設運営という考え方だ。

「一般レストランではありませんので、施設ごとのメニューで、メニューが統一化できないという悩みはありますが、素材の利用についてはチルド商品を多用し、常に手づくり志向をアピールしております。冷凍物は簡便ですが、かえってコストが高くつきます。私どもはクッキングスタッフが充実していますので、質のいいチルド素材から料理(メニュー)を作り上げているのです」(ソデックスコーポレーション営業開発本部)

利用者は口が肥え、施設の周辺には多様な飲食店舗に加え、弁当ショップ、コンビニも存在し、場所によってはケータリングカー(移動弁当販売)もやってくる。

基本的にはコントラクトフードサービスは、受け身のレストランビジネスであるので、常にし烈な競合にさらされているという状況下にある。

前記の通り、利用者が納得するメニューを提供し、喫食率を高めることは大きな課題だが、ビジネスとして生産性を上げ収益力を高めることも重要だ。

素材利用を一本化した「共通メニュー」の提供。フードコートスタイルの施設運営など、生産性を高めるためにいくつかの検討課題もある。

共通メニューといえば、“国民食”的な性格にあるすし、麺類(うどん・そば)、カレー、とんかつなどは、本部「仕様発注商品」としてもいいのではないかという考えも出てきている。

巨大資本三菱グループをバックに、仏食文化仕込みの手づくり志向。給食ビジネス“新参者”といっても、同業他社が脅威を感じるのも無理はない。大手同業他社から部長クラスの“ヘッドハンティング”といううわさも聞く。

人材が動けば、情報に加え“物件”も動いてくる可能性がある。西暦二〇〇〇年には一〇〇億円。残り三年だが、ソデックスなら十分に達成できる数値目標だ。

新たなビジネスチャンスとする高齢化社会に対応した病院・在宅給食は、将来の大きな柱と考えて、昨年9月設立した「(株)ソデックスヘルスケア」(本社=東京、資本金二億円、新浪剛社長)で専門化していくことになった。

このマーケット規模は二兆円近くと試算されているが、ソデックスは第一ステップとして五年以内に八〇億円を目指す。仏ソデクソ社のHACCP(ハセップ)のノウハウを導入しての市場戦略だ。

(シリーズ企画「インサイドレポート」は、今号で終了です。来年2月から新企画「飲食ベンチャーを探せ!」を連載します)

◆会社概要

・企業名/(株)ソデックスコーポレーション

・会社設立/平成5年10月

・本社所在地/東京都中央区銀座六-一三-一六(電話03・3547・0661)

・資本金/一億八〇〇〇万円

・代表取締役社長/青柳惇

・代表取締役副社長/新浪剛

・従業員数/三五〇人

・事業内容/(1)官公庁、企業、学校などの食堂、研修所、厚生施設のコントラクトフードサービス(2)パーティー、宴会のケータリングサービス/ホームパーティー/会議食(3)厚生施設の管理運営(4)レストラン、喫茶店運営受託(5)病院、高齢者向け施設(ヘルスケア)のコントラクトフードサービス/在宅ケータリング

・運営受託施設/全国約一四〇ヵ所

・売上高/五〇億円

◆仏SODEXHO社

・本社/フランス・パリ

・進出市場/欧州、北米、中近東主体に世界六二ヵ国

・施設運営数/一万三五〇〇ヵ所

・売上高/五六七〇億円

・従業員数/約一四万人

一九九五年、英国ガードナーマーチャント社との提携、米マリオットのケータリング部門買収により、世界第一位の給食企業としての地位にある。

一般事業所、レジャーサービス(オリンピック、スポーツ大会)分野の給食サービスに加え、病院給食でも大きな実績がある。

フランス本国ほか、イギリス、アメリカなど約一八〇〇ヵ所、売上高八八〇億円(九六年8月末現在)。

◆ソデックス関連企業

・(株)ソデックスヘルスケア(東京都中央区銀座六-一三-一六、電話03・3547・0666)=病院、高齢者向け施設のコントラクトフードサービスと在宅ケータリング

・ソデックスサービス(株)(東京都中央区銀座六-一三-一六、電話03・3547・0686)=厚生施設の運営管理とコントラクトサービス

・中京ソデックス(株)(名古屋市東区砂田橋四-一-四七、電話052・723・3201)=中京地区(愛知、岐阜、三重)でのコントラクトフードサービス

・(株)いずみや(神奈川県横浜市中区本町一-三、電話045・224・8005)=神奈川県内でのコントラクトフードサービスと厚生施設の運営管理

・(株)アカデミーサービス(東京都新宿区馬場下町九、電話03・5272・3475)=学校、研究所、図書館、寮、セミナーハウスなどの総合管理

・ロリエフーズ(株)(東京都中央区銀座六-一三-一六、電話03・3547・0670)=食材供給、厨房機器、食堂関連商品の販売を目的とした専門会社

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