世界の人気食材 「アボカド」名付けて“森のバター” デザートより主食に

1997.12.01 141号 20面

アボカドは、ラテンアメリカを原産とする熱帯果物。古代インカ帝国時代から主食として食べられていた。一六世紀には、メキシコ市場に商品として流通をみせている。

メキシコ原住民アデックの言葉、アファカルトからアボカドの名称が生まれた。英語では別名アリゲーターペアと呼び、訳すとワニナシとなる。ある品種は皮肌がざらざらしてワニを連想させるからという。

代表的な品種はメキシコ、グアテマラ、ウエスト・インディアンの三種類。メキシコ種は、小さく薄い皮で耐霜性が強く、亜熱帯地方で栽培されている。

グアテマラ種は、大きな果実で皮も厚く、メキシコ種に比べて耐霜性が弱い。冬から春にかけて出回る。ウエスト・インディアン種は、比較的大型で熱帯産が主力。夏から秋にかけて出回り、組み合わせて常時供給が可能である。

樹として七m~二〇m程度の常緑樹で、現在は商業栽培が進められている。果形は球状または西洋ナシ状で、果皮の色は青色、黒色、褐色、紫黒色など。しかし熟すとほとんど黒色に変わる。

果肉は黄色で、口に含むと甘くも酸っぱくもなく、無塩バターのようにとろける風味がする。ねっとりとしてきめが細かい。

昔のインディアンのスタミナ源といわれ、チーズとバターと卵をミルクで割ったような脂肪分があり、このため森のバターの異名をもつ。しかし少量の塩をつけて食べると、どこにこんなうまい味が潜んでいたのか驚かされる。

甘みも酸味もなく、自由に味つけたり、他のものと取り合わせすることができるので、デザート用フルーツと呼ぶより主食用フルーツと呼ぶ方がふさわしい。

アボカドは、ヨーロッパに一七世紀のはじめに持ち込まれ、地中海沿岸の暖かい地方で栽培されている。アメリカには一九世紀の半ば、カリフォルニア地方に移植され、適地となって大量生産され、年間生産量も一〇万tを超えている。

特にアメリカに入って品種改良が一段と進み、数多くの新品種が生まれた。日本にも輸出されるようになった。

アボカドは、フルーツとしては珍しく、炭水化物が少なく、タンパク質やビタミン、ミネラルが豊富。アメリカ産は特に脂肪が豊富で、アボカドに勝るフルーツはみられない。しかも果肉が柔らかく、消化吸収率は抜群である。

食べ方としてはそのまま食べたり、サラダの材料やサンドイッチ、カナッペにも喜ばれる。大きな種を除き、へこんだ部分に塩をかけ、スプーンで果肉を混ぜ合わせて食べてもおいしい。

日本では、刺身のようにワサビ醤油で食べるとトロに似た風味で喜ばれている。巻きずしの中にアボカドを入れてカリフォルニア巻と呼んでいるが、味がよいのでファンは急増。フレンチドレッシングをかけたサラダも美味である。

輸入品の産地はカリフォルニア、フロリダ、メキシコ、ペルー産など。東南アジア産もある。

アボカドをおいしく食べるには、食べごろを選ぶことがポイント。触ってみて柔らかいものは熟しすぎ。カチカチしているのは未熟品。何となく弾力のあるものが食べごろである。未熟品は苦くて食べられないが、木からとって四~五日もすると熟してくる。もし熟しすぎていればピューレにするとよい。

アボカドは春果、夏果、秋果、冬果とそれぞれ産地と品種が異なるが、周年流通し安い。スタミナづくりの果物として愛用をすすめる。

(終わり)

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