10年後を見据えた飲食店の課題 和風FF=まずは女性客の心をつかむ

1997.12.15 142号 7面

ファストフードの代名詞的な店舗といえば、マクドナルド、ミスタードーナツ、ケンタッキーフライドチキンなど、アメリカからわが国に参入してきたおしゃれな食べ物という感じを受ける(だんだん薄れてきたが)。

この洋風FFの主な利用客は、女子学生が主流で、渋谷、新宿などでは洋風FFの紙袋を持ちながら、街中を歩いている女子学生をたくさん見かけることができた。

従来のハンバーガー、ドーナツと対等に和風ファストフードも、一昔前は吉野家だけだったのに、ここ数年で天丼(てん屋)、海鮮丼(ザどん、まぐろ屋)など、吉野家以外のFFもたくさん生まれてきた。

また、牛丼の業態も吉野家以外に松屋、すき家、ランプ亭など、数多くの牛丼チェーンが、吉野家を追っている。

和食FFの特徴といえば、一部の店舗を除いて必ず駅前か繁華街の立地。三〇坪前後、客単価六〇〇円前後での展開ということになると思う。

一昔前、吉野家のキャッチフレーズは「早い・うまい・安い」。店に入ったらすぐに商品が出てきて、急いで食べて、すぐに帰る。実に忙しい男性向きの食べ物だった。

これに対して洋風FFは、女子学生を中心にハンバーガーやドーナツを食べながら、ソフトドリンクを飲み、友達との話が弾むコミュニケーションの場でありながら、横ではサラリーマンがハンバーグを食べているといった構図になる。

和風FFでは一握りの男性客だけなのに、洋風FFは、女子学生を中心としながらも、男性も利用できるTPOに合った選択ができる場だった(主食にはなりきれないが)。

しかしここ数年、和風FFも様変わりしつつある。和風FFにも女性の利用者が確実に増えてきている。吉野家以外の和風FFが多数出店したことで選択肢が増え、女性客を取り込める店づくりが行われ、ヘルシー志向から和食の見直し機運となり、女性の社会進出が進んだことなどが重なったのではないかと思われる。

女性客を取り込むことで少しずつ和風FFにも変化が生じてきたが、洋風FFの利用動機から比べると、どうしても必要食という感が強い。昼時のランチタイムは、サラリーマン、OLなどで満席になることはあっても、夜の売上げは今一つ上がらないのが現状である。

どの和風FFにしても、いかに夜の売上げを上げるかということが当面の課題になると思う。通常の飲食店ならば、夜の営業は客単価が高くなるので、一定の売上げが確保できるが、和風FFは、夜でもさほど商品が変わらないので、昼と同じように客数が上がらないと売上げが確保できない。

そこで客単価を上げる工夫が必要になってくる。サイドメニューの充実、セット商品の開発、フェアーの実施など。現状のオペレーションを崩さない中で、いかに客単価を上げて売上げを確保するかが、数多い和風FFの中で生き残るためのキーポイントになるのではないだろうか。

ここ数年の間に、牛丼以外にたくさんの和食FFがオープンしてきた。お客様の選択の幅が広がった。ただ単に早い、安いだけではお客様の満足を勝ち取ることは難しい。こだわりのおいしさ、食材の品質、鮮度などは絶対必要だし、ヘルシー志向も強くなってくる。

低カロリーの和食FFが見直され、ひょっとして現在和食FFSなどではやっているたこ焼きやたい焼きで、コーヒーを飲むようになるかもしれない。時代はどんどん変化していく。その変化を敏感に察知した企業だけが、繁盛の継続ができるのだ。

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