10年後を見据えた飲食店の課題 そば・うどん=目指そう“業態特化”

1997.12.15 142号 12面

そば・うどん店といえば、かつては大衆外食の代名詞的な存在であった。が、いまや多種多様の飲食店が乱立し、従来のイメージや存在感は急速に薄れている。一方、立ち食いそば、居酒屋を兼ねる二毛作店、大型店などの新興勢力は年々着実に勢力を拡大している。新時代を前にして、そば・うどん店は“業態特化”をキーワードとする新たな局面にさらされている。

そば・うどんの需要に陰りはない。事実、玄そばの輸入量は増加傾向をたどっているし、立ち食いなどのFFスタイルのそば・うどん店や大型店、CVSの生カップそば・うどんは順調に市場を拡大している。

それでは、そば・うどん店業態の今後の課題は一体なにか。ズバリ、低迷が続く生業そば・うどん店のリニューアル。そば・うどん店ならではの一品料理開発と営業スタイルの刷新による業態特化である。

そば・うどん店が大衆外食の代名詞で、それしかなかったころは、集客数で利益を出せた。なにしろ、そば・うどん自体の食材原価が低いのだから、当然利幅も客数に比例するわけで、特別なメニュー開発やサービス力は無用とされたわけだ。

ところが多種多様な飲食店が増えるとそうはいかない。客は他店に奪われ利益は落ちる。

顧客奪回に乗り出したのが昭和50年代からである。当時からいまに続く悪循環を、ある業務用筋はこう分析する。

「当時はメニューを増やせば売れると考える経営者が多く、冷凍食材やレトルト食材をそのままアイテム化する傾向が目立った(丼や定食類など)。それらは食材が原価高で、売れても利幅はそば・うどんに比べて低い。なのに利幅が低いからと、またもやメニューを増やして客数を増やそうとしてきた。本来は、利幅の大きいそば・うどんをどうやって売るかに努力すべきだったのに、それを怠ってきたのです。そのような安易なメニュー政策は、そば・うどん店としての専門店イメージを壊し、また従来のそば・うどんオーダーを減らすという悪循環を招いたとしかいいようがないですね」

手厳しい指摘である。だが指摘の裏付けとして、本来の大衆食路線を守り業態特化に徹した立ち食い店などは当時のころから急速に勢力を拡大している、という事実もあるのだ。相づちを打たざるをえまい。

だが、悪循環を続けてきただけに改善の余地は大きく残されている。折しも高齢化社会という時代背景と、健康志向、和食ブームは業態リニューアルの格好の追い風になるはずである。

そうした現状を踏まえた業態特化のポイントは大筋以下の通りである。

(1)夜の集客力をアップ。

そば・うどん店は夜の集客力が弱く閉店も早い。夜の集客力を増やすためには宴会や居酒屋需要を掘り起こすこと。従来のような営業時間の感覚ではランチ需要だけに終始してしまう。

(2)そば・うどんのメニューを特化する。

(1)の具体策だが、一品料理をアイテム化するにあたっては、そば・うどん店の専門性をアピールするための和風メニュー開発が必要。そば・うどん店だからこそおいしく食べられる、というアイデアが勝負となる。また、地酒をラインアップするなどして小料理屋、大衆割烹に衣替えすれば客単価もアップする。

(3)そば・うどん店ならではのこだわりをアピールする。

(2)の具体策であるが、そば・うどん店ならではの食材(粉、つゆ、油など)に対するこだわりを明記するだけで、お客はストーリー性を十分に楽める(接客時に伝えるとなおよい)。

(4)そば・うどんニーズを見直す。

そば・うどんニーズは立ち食いなどのFFに移行し、それらの品質も急速にレベルアップしている。店内着席でなにを売り物にするのか、手打ち麺と機械打ち麺をどのように使い分けるのか、時代ニーズに見合うリニューアルが必要。たとえば、機械打ち麺や仕様書発注のつゆは安価にして手打ち麺や自家製つゆは高価にしたり、そば・うどん二杯目からは割引き価格にするとか、従来にないユニークな発想が必要。

これらの展望がすべての生業そば・うどん店にあてはまるわけではない。立地に恵まれている繁盛店、地元に根ざしている老舗、また、原価償却が終了し従来の経営で十分というパパママ店ならば、あえてリニューアルする必要もないだろう。

ここで述べたのは後継者や新規独立出店希望者に対しての指摘である。一〇年後の明暗を分けるポイントとして提言する。

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