料理業界よもやま談議 キーワードは伝統と独創 ビッグシェフ新春放談
「シェフ一〇〇人に聞く」アンケートの質問事項に(1)今年の料理のキーワード(2)注目の食材(3)注目の店を取り上げたが、総じて温故知新的内容を持つ言葉が見られた。こうあるべきもの、あるはずだったものが次々崩れゆく先行き不透明な時代。長い歴史が育んできた安心、安住できる伝統を見つめ直し、次への創造を巡らせていると思われる。そこで、伝統の良さをキチンと受け止めながらも慣習に流されず、ライフスタイルの変化に対応し、新潮流を巻き起こす三氏にその心意気を語ってもらった。
三國 私は、レストランを経営する立場から、レストランは、料理とサービスと雰囲気の三つの要素で成り立っていると思います。
フレンチに関していえば、料理だけで一軒の店を成功させる時代は終わった。経済状況も先行き不透明な時代、今年を境に大きく変わっていくでしょう。
これからは大衆店、高級店を問わず、お客の生活プランとどう結びつけていくかが問われる時代。一般家庭とレストランがどこで接点をもつか。それには今、家庭にどんどん入り込んでいるワインとどう結びつけるかです。こうしたきっかけを作ったのは、田崎さんだと思っているのですが。
例えば、オテル・ドゥ・ミクニの場合、食事に来てソムリエがいて、ワインがあって、雰囲気があって、お客が「きょうは楽しかったわ、一万円払っても、二万円払っても……」と思わせることが大事。アンケートの注目の店で多かったキハチさんの店は、料金も手軽で行きやすいし、それにワインを結びつけている。これがこれからのキーワードと思います。
脇屋 私は、「伝統と創作」と書いたんですが……。中国料理、料理はすべて相通じるものがあると思うが、伝統があり、その中に独創的、創造的なものがあって、それを伝えていくのがわれわれ料理人の務めと思います。
中国料理を意外に理解しているお客が少ない。だからアラカルトを見て、何を頼んでいいのかわからない。そのため今、私は自分のコースを作り、いろいろ食べてもらっているが、このほかアラカルトや伝統的なものも少しずつ組み込ませています。
この料理のほか、サービスや雰囲気、今までの中国料理店は、赤や金のキンキラキンが多かったが、今は、これが中国料理の店かと疑わせるような、店内も明るく、サービスマンの笑顔もよい店で食事をし、「よかったなー、また来たいな」という気持ちにさせる店、これからは、こうした店が求められると思う。
三國 じゃあ、田崎先輩(笑い)。私は田崎さんがすごいと思うのは、今までのソムリエだったらワインだけで終わっている。それが料理に入り込んでいるのは、何かを知っていると……(笑い)
田崎 もともとワインオタクではないし、料理が好きでこの世界に入ったので。ただ、食べ手側に立って言えば、「創造力と楽しみ」がキーワードでしょうか。
今、ワインが健康にいいからと飲まれ、提供する側もこれは体にいいからとすすめる。料理についても同じ。栄養があるからといって食べている。
三國 お互い栄養過多だね。(笑い)
田崎 料理というか食事は楽しむためにすべきであって、内容が高い、安いに関係なく、食事をする時間をもっと楽しむべきだと思います。
伝統を重んじるあまり習慣的に食べている嫌いがある。つまり、マグロの刺身を食べるのに、自動的に大根のつまを置き、ワサビと醤油を付けている。これでは会話が生まれない。会話が生まれないと絶対楽しみにつながらない。
何もでたらめにしろというのではなく、例えば、マグロの刺身にワインやバーボンウイスキーを置いてもよい。いつもと違う、習慣でないことをトライしたり、工夫したりする。これにより会話が生まれる。料理は栄養とか健康ではなく、楽しみのために食べる。それには「創造性」がキーワードになるでしょうか。
三國 育った環境にも影響されますね。
田崎 日本人は真似がうまい。真似がうまいのでフレンチ、イタリアン、中華ともに超えている部分もある。ただ、三ツ星レストランのコックさんが少ない。三ツ星の料理は、クリエーティブな発想でしか生まれませんから。
フランスの若いコックさんは、一店に数ヵ月しかいない。三ツ星を転々と歩いて何をするのか。レシピを真似るのでなく、その中から自分の料理を作っていくのです。
学校教育も日本と違う。一〇〇点満点の与えられた課題をクリアするのではなく、他の人と違うことを創造することによって点数を高くする。一〇〇点満点ではなく、良ければ一二〇点つける先生の発想が根底にある。こうした教育環境から創造性が生まれてくると思います。
本当のフランス料理を食べたければ往復六万円のチケットでフランスへ行き、フランスの地方料理、ワインを楽しめば良い。これからは、日本ならではの楽しみ方を創造していく時代です。もちろん、伝統をふまえた上、というのが鉄則ですが、そうしないと何の料理かわからなくなってしまう。
三國 今年以降は、フードビジネスにとって一つの転換期になりますね。
年末に北海道に行って来たんですが、北海道拓殖銀行が閉鎖され、あちらの人はどうしていいのかわからい。というのは、絶対あり得ないと堅く信じていたものが崩れたんですから。
これからですね。才能あって、努力して、創作できる人にとって非常に良い時代。私は、逆に明るさを感じますね。
田崎 日本は伝統を大事にするあまり、伝統が慣習になっている。この慣習の中から新しい文化は生まれない。
今のすしを考えた人は、大変なクリエーターだったと思う。最初は全然相手にされなかっただろうし。なんでもだんだん面白くなり興味を惹くようになって、人が集まってくるようになるんです。
今の時代、日本料理はなかなか新しいものが生まれないのではないか。何か新しいことをやると親方に怒られる、伝統を崩すからといって……。
三國 中華は老酒、イタリアンはイタリアワイン、フレンチはフランスワイン、日本料理は日本酒であったものが、しがらみが解け、どんどんワインが入ってきた。
ワインとかアルコール分を飲むと楽しくなる。料理を食べてそんなに楽しくなるものじゃない。お客さんも料理だけで二万円というと怒りますが。(笑い)
やはりアルコールを一緒に飲むことで食事が楽しくなる。田崎さんをきっかけにして、和洋中のフードビジネスは、これからの時代を楽しくしていきたいですね。それには料理だけでは駄目で、飲料が必要です。これはビッグチャンスですよ。
田崎 実際、ワインを置かなかったおすし屋さん、日本料理屋さんが、お客のニーズが多く置かざるを得なくなってきた。置き始めたら、赤ワインというニーズが強い。今までおすしに赤ワインは考えられなかったことであり、ワインを入れることでおつまみやネタに変化が出てきた。これが創造性を生むきっかけになる。
脇屋 中国料理にも赤ワインを置いています。うちはほとんどが女性客ですが、女性がワインを飲んでいます。
田崎 周富徳さんとか陳健一さんとも話してみても、ワインを置かないところはないと……。
脇屋 一昔前には考えられなかったことです。中国料理にワインなんて……。今は、ボトルが置いてあり、グラスが置いてあり、自然に雰囲気に溶け込んでいます。
三國 脇屋さんは、聞くところによると、フォアグラ等も使ってらっしゃるということは、自然にワインを置くということになるんですね。
脇屋 素材としては日本料理の素材も使うし、フランス料理の素材も使い、中国料理の味に仕上げる。それは白ワインにも赤ワインにも合い、もちろん老酒にも合うんです。お客も楽しんでいます。気軽にグラスワインが飲めるんですからね。
今までワインを置かなかったところも置くようになり、フレンチのように今まで置いていたところでも何か変化はありますか。
三國 うちはフランス料理ですから、当然フランスワインを置いていますが、そのほかアフリカ、チリ等幅広く置くようになりました。基本的には、フランスワインはフランス料理に合うようにできている。ワインを使ったソースとかなどは、一つのセオリーであり、これからは、中国料理、日本料理にもワインが広がることで、いろんなエリアとの接点が生まれてくるから楽しみです。
一〇年前、私が業界にデビューした時、「料理は感性だ」と言った。とたんに若い人が真似をしてメチャメチャになった。私が感性と言ったのは、九九%技術があって経験があったからであって、やるべき人がやらないといけません。ただお客が求めるからとボンボン出していたら、お客もわれわれも駄目になってしまいます。
脇屋 そこで伝統が出てくる。できあがった人がそういうことをやっても良いが、ただ上っ面だけのことをやると、何がなんだか分からなくなる。中国料理の中にフレンチのスタイルを出しても良いが、それにはしっかりした本来の基本を守らないといけない。
三國 フランス料理からすれば、煮方、炒め方、揚げ方、ソースの作り方すべてにベースがある。骨をキチンと焼いてフォンドボーをとるとかの伝統の技術があり、あと表面的なことは、その人のセンスです。
海外へもフェアでよく出掛けますが、ベースが同じだからこれをベースに、あとは自分のセンスでアレンジしていくだけ。このベースの力は大きい。ワインでも中国料理でも同じ、これがなくては足元をすくわれてしまう。
脇屋 アレンジする時代かもしれないが、基本がちゃんとしていないと生き残っていけない時代でもあるんですね。
田崎 ソムリエの定石はたくさんあった。言ってる本人も、試しもせずに情報提供していたんです。今までの圧倒的多数に言われていたことがひっくり返してみると、非常識なことがたくさんある。
三國 田崎さんは今、全部をひっくり返そうとしている。(笑い)
田崎 日本のソムリエは、ブルゴーニュワインには、自動的にあるメーカーが出したブルゴーニュのグラスを出す。ボルドーのグラスで飲むとおいしいブルゴーニュワインもあるのに……。
基本としてのグラスとワインの関係を教えたら、あとは飲む人がおいしいまずいを決めることであって。今までは、あまりにも何々をしなければいけないことが多かった。
三國 われわれ昭和二ケタの若い世代(笑い)は、なければならないという考え方に抵抗を感じますね。
例えば、カレーでも、観念としてワインと合わないというのは気にくわない。家庭的なカレーでは合わせにくいかもしれないが……。
田崎 普通のカレーライスに合うワインを探すのが面白い。本場のインドカレーではなく、日本の家庭で食べるイモとニンジンがゴロゴロのカレーに、数多くのワインの中から選ぶんです。
三國 カレーにもシーフード、野菜、ビーフ、ポークと種類は豊富。それぞれのカレーもベースをきちんとしたダシでとれば、ワインは絶対に合う。レシピに何でもありでなく、ちゃんと作る側も考えていけば、もっと広がります。
脇屋 作り手、食べ手が様々な形で探す楽しみが増えましたね。
田崎 塩辛にワイン、このわたにワイン、目刺しに赤ワイン、これはおいしいですよ。(笑い)
三國 田崎さんの観念を変えようとする気持ちは分かりますが、ちょっとやり過ぎかなという感もありますが……。(笑い)
田崎 これとこれは合わないではなく、これとこれは合うということを教えてあげれば良い。
脇屋 一般の人たちが聞くと、あの田崎さんがいうんだから試してみようということになる。
田崎 目刺しにワインが合うなら何でも合ってくる。赤ワインはこうあるべきと強く思い込んでいた。もっと自由な発想で合わせて欲しい。
脇屋 うちは老酒はもちろん使いますが、シャンパンなんかもごく自然に取り入れています。先日は中華料理にどんなワインが合うかソムリエに試させました。
われわれも勉強になるし、彼らもお客に自信を持ってこの料理には、このワインと勧められるようになる。少しずつの、こうした積み重ねだと思います。
三國 うちはごく日常的にワインと料理を合わせてメニューを組んでいますが。
田崎 昔は義務としてワインを飲んでいたんですよ。本当は、ビールが飲みたいのに。(笑い)
ここは日本なんです。ビールが要求されれば、うちはフレンチですからとビールを出さないのはおかしな話。今はワインを飲む人が多くなり、料理の前に飲む人も多くなってきました。私は、先にワインをきめてもらい、あとで料理をアドバイスすることにしています。
三國 私は個人的にレストランへ行くと、まずワインを決め、合わせて料理を決めます。どちらでも良いことですが、料理に合わせたワインでも良いですし。
田崎 そうした意味では、ウエーターがいてソムリエがいてではなく、全員がソムリエ的感覚でいると、最初に料理を決めてもらい、次にソムリエがサービスするのではなく、同時に出していける。
三國 うちは脇屋さんや田崎さんのところと違い、その日暮らしなので(笑い)、ソムリエが皿も運ぶ、ケーキのサディッションもやる、全部やります。お客の中には、なぜソムリエがあれもこれもするのかと聞かれるが、私はそれで良いと思っています。
世界チャンピオンのムッシュ・ジャンボンさんを存じ上げているのですが、彼はとにかく水をつぎに行くんです。水をつぎに行った時、必ず声がかかる。そのチャンスを作ってオーダーを聞くのです。
田崎 サービスというのは、いかにお客のことを知るかです。それにはお客のそばに行くしかない。サービスマンは、料理を出してしまうと食べ終わらない限りあまりそばに行けない。
その点、ソムリエは飲み物ですから水を含め長い時間サービスができ、固定客にするチャンスをたくさん持っている。それを生かさないようでは意味がない。
三國 うちは全員ソムリエにしたい。お客はなぜかソムリエに一番話をしやすいようですよ。
田崎 サービスマンは料理長の伝達役でしかない。ウエーターは、料理長が怖いからメッセンジャーになっている。(笑い)本当は、お客のメッセンジャーボーイにならないようでは良いサービスはできない。
脇屋 ホテルでも考え方は同じです。いちいち厨房に話を持ち帰るのではなく、その人の判断でやらせるようにしている。
もしお客の誰かが誕生日と知った時、ケーキを出すとか、なければ簡単なデコレーションをするとかのサービスをする。支配人やマネージャーにいちいちことわらずにです。
田崎 お客が何に対しお金を払っているかを頭に入れなくてはいけない。ただおいしいものをお腹に入れることを望んでいるのではなく、違う付加価値を求めているのです。
三國 自分が作るときは、前衛的な店を考えますが、一個人として食べに行く場合には、一軒の店と決めたら一〇年一筋その店です。だからすし屋だったらここ、イタリアンだったらここと決まっており、食べることに関しては保守的です。常に新しいことをやっているので、その反動でしょうか。
田崎 私も大体同じですね。(笑い)フランスではフランス料理、日本ではすし屋、天ぷら屋など好きな店はあるが、すしを食べる時、カリフォルニアなんとかなんてものは食べません。
何か考えなくてはいけない時は、伝統的なものを食べて、新しいものを発想する。これは結構面白い。
三國 古典と前衛のバランスをとっているんですね。
田崎 日本のフランス料理ではやっているところへは、食べ歩きにほとんど行かない。
三國 クイーンアリスには行かないですよ。(笑い)
田崎 キハチがどうしてはやっているのかわからない。キハチさんの料理をそのまま真似しても全然つまらない。
脇屋 はやっているものを真似してやっても、これは続かない、疲れてしまいます。
三國 若い子が喜ぶから連れては行きますが、キハチさんの一皿の料理を見たらがっかりしますよ。料理を真似しても失敗する。
料理の盛り付けに始まり、雰囲気、全体を見ていかないといけない。
料理は全体の中のほんの一部なんだと……、キハチさんはその辺がわかっていると思います。
三國 食材についてですが、ミクニの生き方を主張しているので、たった一軒だけでソースにこだわろう、技法にこだわろうと思っています。
昔は反逆児といわれましたが(笑い)、今はますますクラシックに……。フランス料理は地方にあるのだ、地方の良さはこうなんだと、三國的に表現するのが東京でたった一軒残っていく方法と思っています。
素材もクラシックなもの、また、健康も考えているんですが……。石鍋さん、脇屋さんと異なるところだからこそお互いが光るんではないかと。石鍋さん的なことを私がやったらどっちかが倒れてしまいます。
脇屋 私は大豆や湯葉をあげたんですが。どちらかといえば伝統料理になるかと思うが、これらの食材をうまくかみ合わせていきたいですね。
中国料理に油は切っても切り離せない関係にありますが、昔はラードに始まり、白絞でしたが、今はほとんどが大豆油。それが最近はラードを使い人が多くなりました。
なぜかといえば、コクを出すためです。あまりにも淡泊になり、ラードに戻ったのです。回っているという感じがしますね。そういう意味では、単純だが、中国本土の料理にはいろいろと創造させられるものがあります。
三國 私も今でこそフランス料理を見直してみようと思います。脇屋さんも同じく中国料理を見直してみようということだと思いますよ。ただそのまま使うということではなく……。
田崎 私は飲み手側にたつんですが、料理人さんはそれを崩したら全く悲惨な目に遭うと思います。何も生まれてこないですよ。
三國 ベースがね。ベースがなければ。
田崎 そういう意味では、最近、喫茶店に入って、昔ながらのゆで置きのスパゲティを使ったナポリタンを食べたのですが、決してアルデンテではないが単純においしく感じました。
今までスパゲティは、アルデンテでなくてはいけないという強迫観念に駆られていたように思う。アルデンテのスパゲティにトマトと比べた場合、一〇〇人のうち、ほとんどの人が昔ながらのナポリタンをおいしく感じると思いますね。
これをおいしいと言うと恥ずかしいから言わない人もいるでしょうが、われわれ日本人の味覚の根底にある日本の調味料の「さしすせそ」には、とても興味があります。
三國 田崎さんの話は、料理人の発想ですね。ソムリエなんですが、だんだんこちら側に寄ってくる。最終的にはワインになるんでしょうが、これからのソムリエの方向付けをしていると思う。それにしても原点の塩を言われるなんて……。(笑い)
脇屋 中国料理では、調味料に興味を持っている人は少ない。オヤジがキッコーマンだったら、ずっとキッコーマンです。最初の見習いの時のもので通していきます。
私は若いから、いろいろ試して自分で選択する。うちのスタッフも見習っているが、一つ上の世代は、そんな醤油なんてどこのものでも同じだよっていう感じ。
田崎 和食もそういう人が多いのでびっくりしました。塩でも精製の塩を使っている。塩の味のしないほうがいいというんです。あまり研究しようとしないんですね。醤油などもずっと同じです。同じように、フランス人もワインがあまりにも日常的なので深く考えている人は少ない。
三國 そりゃーそうでしょうね。(笑い)
田崎 日本のフランス料理のコックさんは、あまり醤油を使わない。ところが、フランスのコックさんは醤油を上手に使っている。三ツ星レストランでも……。
三國 一ツ星でも二ツ星でも醤油を置いている。調味料として使っている。われわれが行くと隠しますがね。(笑い)
田崎 日本では、醤油を使うのはフランス料理ではないと思い込んでいる。
三國 最終的にはワインでも料理でも「味」なんです。そういう意味でも料理人も、もっとワインを知るべきでしょうし……。話が元にもどり、飲料と料理の関係になってしまいましたね。レストランにお客は、時間、空間とか人に会うためにきているわけです。話は単純です。うまいかまずいか、楽しいか楽しくないかです。最終的には、レストラン業、ホテル業は、お客さんが喜んで帰ったか帰らないかですね。
田崎真也さん
一九五八年、東京生まれ。二〇歳を前に見聞を広めようとフランスに渡航。帰国後、フランス料理「ベル・フランス」日本料理「吉左右(きっそう)」を経て「ホテル西洋銀座」に入社。一九八三年第三回全国ソムリエ最高技術賞コンクール優勝以後、数々のコンクールに上位入賞するが、一九九五年、世界で最も優秀なソムリエを決する世界最優秀ソムリエコンクールで、日本人初の優秀を勝ち取る。以後、もっとワインを楽しんでもらおうと、自ら主宰するワインサロンを開校したり、毎年七夕には、東京で1000人ワイン祭りを開催している。
三國清三さん
一九五四年、北海道増毛町生まれ。一五歳で料理人を志し、札幌グランドホテル、帝国ホテルで修業後、村上料理長の推薦で駐スイス日本大使館に勤務。その後トロワグロ、アラン・シャペル等三ツ星レストランで修業、八年後に帰国。一九八五年、三一歳で現在の東京・四谷に「オテル・ドゥ・ミクニ」を開店。一九八九年、ニューヨークの最高級ホテル「ザ・キルテッド・ジラフ」を皮切りに、毎年、香港、タイ、シンガポール、フランス等の諸国でミクニフェスティバルを開催、今や世界のミクニとして知られる。著書に「皿の上に僕がある」などがある。
脇屋友詞さん
一九五八年、北海道生まれ。東京「山王飯店」、「桜蘭」などで修業後、「キャピタル東急ホテル」中国料理長補佐、三四歳で立川「リーセントパークホテル」総料理長に就任。昨年8月、パンパシフィックホテル横浜オープンにより現職に就く。また、「食卓の王様」などのテレビ出演、大阪辻調理師専門学校などの講師も務める傍ら「料理百科」「自由時間」など雑誌の連載も手掛ける。従来の中国料理をふまえながら、現代のニーズに合わせた一人でも楽しめるヌーベル・シノワを提唱、中国料理の枠を超えた「脇屋流チャイニーズ」を目指す。