食の視点 清涼アルコール・ビール(6)おしゃれ

1998.02.16 146号 17面

★七色ビール

ビールには発酵の方法によって種類があることは前回触れたが、色でも分けられる。いままで透き通った黄金色のピルスナー一辺倒だったわが国ビール界にも、ギネスに続く黒ビールのおいしいものが出ているし、アカだのダークだの、ペールだのとビールの色もとりどりになってきた。

にじも顔負けのいろいろだが、その味は色ほど違いがあるのだろうか。淡色は、日本や米国のビールのほとんどがこれ。チェコのピルゼン市で作られたピルスナーまたはピルゼンと呼ばれるビールが主流。

麦芽の焙煎を強くすると色が濃くなる。この代表が英国のビターエールやバイエルン地方で作られるメルツェン。メルツェンは一時日本でもサントリーから売り出されたことがあるので、ご存じの向きも多いだろう。

次がギネスに代表される濃色ビール。黒ビールとも呼ばれる濃厚でコクと苦みの強い個性派ビールだ。黒麦芽やカラメル麦芽を加えてあの深い黒色とコクを出すのだという。一〇年ほど前までは黒ビールの人気は限られていたが、ハーフアンドハーフという飲み方の浸透で、黒ビールにも日の光が当たった。アサヒのスーパードライに次ぐヒット商品といわれる生ビール黒生もこの仲間。

最後が、聞き慣れないが、白色ビール。酵母以外に乳酸菌などを使って白濁させたビール。ほかにチェリーやカシスを入れた赤ビールもある。日本では赤生としてアサヒレッズが市場に出ている。

★ビールのカクテル

酒は百薬の長といわれ、最近、ビールがガンや老化の防止に有効であるとの意見も出て、ビール好きとしてはますます励まねばの気持ちを強くする。

さて、ビールは苦くてとおっしゃる女性も、おしゃれにカクテルにすると、途端に口当たりがいいわなどとお代わりをされる。

名前は知らなくても一度は飲んだことのあるビールカクテルといえば、シャンディガフだろう。ジンジャエールを加えたものだ。日本風にはサイダーとかキリンレモンだろうか。かすかな甘みと酸味が夏の暑さを鎮めてくれる。コーラやオレンジジュースでも爽やかなビールカクテルが出来上がる。

レッドハットはトマトジュース割り、コーヒーリキュールで割ればモカビア。寒い冬によく飲まれるのがエッグビア。スタウトに卵黄をといたものを加えるカロリーと栄養満点のカクテルだ。

ブランデー、ウイスキー、シャンパンのようなほかのアルコールを加えたり、濃色のスタウトと淡色のピルスナーの二種類のビールを混ぜるハーフアンドハーフもある。

★やはり野に置け

加えて、アルコール度数での差別化もまた厳しい。七%のきついビールから二・五%の低アルコールまで登場。さらに低カロリーでダイエット志向の女性向けも発売され、好評だそうだ。CMでも、カロリー二〇%オフのファーストレディ、キムタクでおなじみの低アルコールのLA二・五、スマップ中居で発泡酒スーパーホップスをとイメージ売り込みを図っている。

家で飲むビールにバラエティーあり。外で飲むビールにも豊かな選択肢あり。本当に恵まれたビール環境にわれわれはある。それでも、と思う。アイリッシュパブ、ダブリナーズのようにスタウトタイプのギネスやエールタイプのキルケニーを飲ませる店もいいけど、銘柄なんか言わない。中ジョッキ! と呼ぶだけでいい駅前の居酒屋も捨てがたい。

舌は案外に保守的だというけれど、飲み慣れたラガービールの冷たいのを、のどを鳴らして飲むときなどは、銘柄なんか問題じゃないぞという気になる。日本のビール党はまだ洗練されていないのだろうか。

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