新店ウォッチング:カフェテリア「スバーロ」六本木店
流通業界の巨人ダイエーは、グループ内に数多くの外食チェーンを有しているが、その最新業態が、ニューヨーク生まれのピザを中心としたイタリアンのカフェテリア業態「スバーロ」である。原宿店に次いでオープンしたスバーロ六本木店は、六本木の中心である地下鉄駅上の交差点から飯倉方面へ向かう途中、六本木のランドマークとして有名なロアビルとの中間地点あたりに位置している。
賃貸ビルの一階と二階を占め、一階がオープンキッチンスタイルの販売カウンターと客席、二階が客席とトイレという配置。米国ではポピュラーなカフェテリアのレイアウトを踏襲した原宿店に比べ、わが国ではおなじみの典型的なファストフード(FFS)店舗のレイアウトとなっている。
ただ、通常のFFS店との違いは、カウンターがトレイを滑らせるレールのついたカフェテリア式のレーンとなっていること、そして、店頭のガラス・スクリーン内で、通行客にピザ製作の過程をデモンストレーションしながら調理を行っている点だ。
メーン商品に
オープンピザ
商品構成も、原宿店と比べて、価格帯や提供方法などに若干の変化を持たせている。
メーン商品はもちろんオープンピザやスタッフドピザ(ピザドウの間に具を挟んだもの)などのピザのバリエーションであり、デリバリーピザより大きめの一七インチ(四三㎝)のピザを八カットにして三八〇円から販売している。
原宿店では大きなおわんほどもあるカフェオレ・ボウルで提供しているイタリアンテーストのコーヒー類も、六本木店ではスチロールカップなどを活用して低価格(一八〇円から)に抑えており、夜間はカクテルなどの酒類も供される。
恐らく、原宿店はカフェテリア業態、六本木店はFFS業態と、それぞれの実験店という位置づけかと思われるが、いずれにしても、店づくりや価格帯、商品素材などに関しては、ダイエーグループのコンセプトが十分に発揮された業態であるといえるだろう。
ポイントカー
ドで顧客確保
さらに、このスバーロでは、独自のポイントカードを発行し、顧客の確保を図っている。これはテレホンカードタイプの磁気カードで、購入五〇円ごとに一ポイントが磁気データで記録され、またカード表面にも印刷される。一〇〇ポイントで五〇〇円の食事券と交換するというシステムである。手作りスタイルのサイドオーダーやスパゲティなどの商品もあり、六本木という場所柄から、外国人のテークアウト客も目立っていた。
◆筆者紹介◆商業環境研究所・入江直之=店舗プロデューサーとして数多くの企画、運営を手がけた後、SCの企画業務などを経て、商業環境研究所を設立し独立。「情報化ではなく、情報活用を」をテーマに、飲食店のみならず流通サービス業全般の活性化・情報化支援などを幅広く手がける。
◆取材者の視点
スバーロの入居するビルは、かつて高単価な喫茶店チェーンで一世を風びしたS社が本社として建設したビルである。バブル崩壊とともに同社が衰微し、価格破壊を掲げたダイエーグループのFFSが入居したというのも、時代背景を反映して感慨深いものがある。
しかし、そもそもこの業態を原宿、六本木というロケーションで路面店展開する意味はいったい何なのだろうか。
この業態は、ショッピングセンターで展開するのがふさわしいように思われる。スタイルこそ新しいが、商品自体は、すでにわが国に完全にとけ込んでいる商品ばかりであり、家族連れ客を中心にアットホームな雰囲気で対応することで、この店の魅力は最大限に発揮されるように感じる。
また、ショッピングセンターでこそ、店頭での調理デモンストレーションや、ピザ窯を導入したオープンカウンターといった演出も生きてくるはずだ。
現状で気になったのは、「外食の楽しさ」の薄い店という印象である。外食とは、高品質の料理を安く食べられればそれで良い、ということではない。それならデリバリーピザで十分である。「どのような雰囲気の中で」食べるか、ということが重要な要素なのだ。
六本木という立地で、それを求めるのは現場にとっては酷かも知れないが、お客に対して、もうワンランク上のホスピタリティーを感じさせる運営を望みたい。
ちなみに、筆者がこの店を訪れたのは夕方の6時すぎであったが、朝8時から夜10時まで一時間ごとに担当者とチェックの欄があるトイレのチェックシートには、8時の担当者欄にハンコがひとつ押されているだけであったことを付け加えておきたい。
◆スバーロ六本木店(東京都港区六本木五-一〇九、電話03・3401・4860)営業時間=午前11時~午後11時(金・土は午前2時まで)、年中無休/店舗面積=約二八二㎡(一階一四三㎡、二階一三九㎡)/客席数=一階二四席、二階七六席/オープン=一九九七年10月22日