企画特集「ラーメン」:明暗分けるもてなし術
目立った外観で引き入れた客を満足させる前に必要なのは、きれいで清潔な内装だ。油でくすんだ店内にゴキブリがはいずり回っているような店舗では、女性は思わずUターンしてしまうからだ。
ラーメン屋を見てみると案外女性が少ないのに気がつく。女性は麺は好きなのだが、男性的なラーメン屋に入りたくないというのが大きな理由だ。ミスタードーナツがミスター飲茶を成功させた理由は女性が入りやすい店舗で、ラーメン屋をくぐるような何となく後ろめたい感じがしないからだ。
同じような理由で繁盛しているのが、喜多方ラーメンだ。喜多方ラーメンは醤油味ベースの腰のある麺が特徴だが、喜多方の倉のイメージを使い外観、内装もきれいな作りにしているのが女性が入りやすい理由だ。以前はやった京都ラーメンが受けたのも同じ理由だ。
ラーメン屋はどちらかというと男性的なイメージがあるから、どれだけ女性が入りやすい店づくりをするかは大きなターニングポイントだろう。人口の半分は女性だということを忘れてはいけないわけだ。
もともと学生を対象に商売をしていた東秀というチェーン(最近は惣菜屋が人気を呼び店頭公開を果たした)が学生向けの安価な中華レストランをきれいに改装し、女性でも入りやすいような色使いをして成功した。
すかいらーくグループのバーミヤンも同様で、三八〇円のラーメンを出して人気なのもその店内の雰囲気がファミリーレストランのようにきれいで豪華だからだ。ハンバーガーのモスバーガーも、ちりめん亭というラーメンチェーンを一〇〇店も出している。この店もファストフードの経験を生かして、女性でも入りやすいきれいで衛生的な店舗を心がけている。
生業店の皆さんはこれらの店舗をみて、店舗の外観と内装の清潔さだけで商売が成功するのだということを学ぶべきだろう。
成田ジャスコショッピングセンター内のあるチェーン店を訪問し、店長たちと話をしていた際に、元気の良いTシャツの刈り上げのおじさんが「ちわー、昨日はありがとうございました」という威勢の良いかけ声を掛けて通り過ぎていった。とん太というチェーンの加盟店の経営者だった。
昨日、コーヒーを差し入れしたらそのお礼に来たのだ。あまりの威勢の良さに昼に思わずラーメンを食べに行った。
その親父は一人でフロアーをコントロールするだけでなく、一人ひとりの客に声を掛けている。学生だったら、「試験の成績どうした?」とか、「クラブ活動はどうだった?」とか全員に声を掛けているし、子供にも丁寧に話しかけるので子供連れの客も喜んで会話をしている。まるで家族が集まった団らんのような温かい雰囲気だった。
親父は筆者たちに気がついてすぐにあいさつに来るなど、その活気の出し方は素晴らしいものがあり大繁盛だった。そのショッピングセンターには半年前に入ったのだが、売上げを毎月記録的に伸ばしているのには驚かされた。
ラーメンは決しておいしいというものではないが、サービスと気合いで売上げを上げている典型だといえるだろう。
店舗の外装や清潔感につられて入った客を固定客にするには味だけではない。結局一〇〇〇円以下の食べ物だから感激するほどおいしいものにはならないし、繁盛している店ほどさっぱりとした飽きの来ない味を特徴としているから、味以外でも客の心をとらえきることが必要になるわけだ。