超繁盛店ルポ「ちゃあしゅう屋」孫目店

1999.03.01 173号 20面

「間食として位置づけられることの多かったラーメンを、主食、ごちそうにしたかった」と、古徳勉代表取締役が「ちゃあしゅう屋」の原点を語る通り、同店では確かに、ラーメンが主食となり得ている。

水戸駅からひたちなか市へ国道六号線を一〇分ほど行くと、FR、ホームセンターなどが立ち並ぶショッピングゾーンに入る。そのゾーンを抜けると車窓はのどかな田園風景に変わり、やがて、ひと際目を引くベージュ色の八角型の建物が目に飛び込んでくる。決して大きくはない建物だが、とにかく、目立つ。それがちゃあしゅう屋孫目店だ。

店内の最大の特色は何と言っても、センターに広々と取られたオープンキッチンスペース。オープンキッチンを採用する飲食店は近年増加しているが、ラーメン店でこれだけのオープンキッチンを採用している事例を筆者はほかに知らない。まるでイタリアンかフレンチ系の店、あるいは和食創作系の店を思わせる。

客席はすべて窓に面しており、オープンキッチン、そして高い天井ともあいまって、店内には広々とした開放感がただよう。採光も良く、きわめて明るい店内だ。客に対する店員の応対も実にきびきびとしていて気持ちが良く、明るく、活気ある雰囲気を醸し出している。

ちゃあしゅう屋最大の売りは、チャーシュー。同店ではチェーン他店でも置いてある「炭火焼チャーシュー」プラス、豚の脇腹の肉を骨つきでそのまま煮込んだ、一日二〇個限定の「骨つきチャーシュー」、二~三センチメートルほどの厚さに切った「厚切りチャーシュー」の三種類を提供。

「これまでも、チャーシューの味にはこだわって来たが、さらにグレードアップさせた」と、古徳代表取締役は言う。この秘伝のチャーシューは、同社内原工場(内原町鯉渕)で製造。「半日以上煮込む、とだけしか申し上げられません」(古徳代表取締役)と、製造方法は企業秘密とのことだ。

ラーメン自体は比較的、あっさりと仕上げられている。とんこつ味も、豚骨の持つ臭みがなく、女性客にも非常に評判が高い。その麺、あっさりと仕上がっているスープ、そして、ちゃあしゅう屋のラーメンを主食たらしめているところの、こだわりのチャーシュー。古徳代表取締役の夢は、ちゃあしゅう屋で確実に実現されているといえよう。

人気ダントツ一位は「炭火焼チャーシューめん」。とんこつ味(八八〇円)、正油味(七八〇円)、みそ味(八八〇円)、ゴマ味(九〇〇円)の四種類から、チョイスできる。「厚切りチャーシューめん正油味」(七九〇円)、オーソドックスな「みそらーめん」(六八〇円)も人気が高い。

単価の高いチャーシューめんのオーダー比率が約七割と高いこともあり、同店は、平均月商約一七〇〇万円という、ラーメン店としては驚異的な売上げをたたき出している。

同店を超繁盛店へと押し上げているもう一つの要因は、充実したサイドディッシュにある。「手造り餃子」(三八〇円)、若鳥のもも肉を一本丸ごと揚げた「山賊揚げ」(四八〇円)、北海道トンデンファーム直送の「手造りソーセージ」(三八〇円)、「海賊揚げ」(イカのげそ揚げ、四八〇円)。もちろん、チャーシュー単品でのオーダーも可能。また、これらサイドディッシュは、テークアウトも可能だ。

同店ではサイドディッシュのオーダーをうながすかのように、ビールサーバーを目立つ位置に設置。同店の昼間の平均客単価は約九五〇円、夜間が一二〇〇円。この数字は、同店がアルコールのオーダーと、そのおつまみとしてのサイドディッシュのオーダーを、着実に取り込んでいることを示しているといえよう。

手造り餃子は平日で一二〇~一五〇食、土・日・祝日では三〇〇食は出る、ちゃあしゅう屋の準主役級の名物料理となり得ている。

コックにあこがれていたんですよ。背の高いコック帽をかぶって、えりにスカーフをまいている、あの格好に引かれていたんです。それで最初に水戸市南町でレストランを始めました。昭和46年11月のことです。それが「レストラン・キャンドル」です。毎日、夜遅くまで、フライパンを握りました。忙しくとも充実した毎日でした。

ただ、時代の流れはインディペンデントのレストランには逆風となりつつありました。全国チェーンのFRが地方にもどんどんと進出してきたんです。私はコックの修業は積んで来ましたが、店舗オペレーションなど運営に関しては素人だったのです。当然、綿密なチェーンオペレーションで攻めて来る全国チェーンのFRにはかなわなかった。

昭和53年のことです。あれほど“なりたくなかった”ラーメン屋を始めたのです。10月、市内、見和に移転して、「らーめん古潭」を開店しました。六坪の小さい店でした。メーン料理に「とんかつラーメン」を据えてみたところ、これが受けまして、店は順調に滑り出しました。ギョウザの具を入れたとんかつをラーメンにのせてみたんです。どうして、あれほど“なりたくなかった”ラーメン屋を始めたのか、自分でもよくわかりません。ただとんかつをのせたラーメンを作ってみたあたり、洋食に未練があったのでしょうね。

ラーメン屋でしたが、中国料理のコックを雇い、中国料理単品の定食も始めました。七割方は出前という出前専門店に近い性格の店舗に育っていきました。

ラーメンでどこを差別化するか。スープ、麺には自信があった。そこで、考えた揚げ句行き着いたのが、どこにも負けないチャーシューを出す、この一点でした。

それまで「チャーシュー屋古潭」をやってきましたから、うまいチャーシューを出す自信はあった。また、「ごちそうらーめん古潭」「活力らーめんチャーシュー屋」など、いろいろと趣向を変えた店をやってきた。その結果の原点回帰なのでしょうか、「ちゃあしゅう屋」は。

こうして平成9年12月3日、ひたちなか市に「ちゃあしゅう屋」孫目店を開店しました。同店でのチャーシュー麺のオーダー比率は約七割。他店では「炭火焼チャーシュー」しかおいてません。ちゃあしゅう屋では「炭火焼チャーシュー」プラス、一日限定二〇個の「骨つきチャーシュー」「厚切りチャーシュー」の三種類をおき、徹底的にこだわり抜いた味を提供しています。

結果として、一点豪華主義を貫いたことが、ちゃあしゅう屋を繁盛店へと押し上げ得た要因だと考えています。店舗面積三八坪で平均月商は約一七〇〇万円。昨年平成10年8月には、瞬間風速ですが、月商二一五〇万円を記録しました。ラーメン専門店としてはめざましい成果を挙げ得ていると自負しています。

ちゃあしゅう屋は現在、孫目店と福島県白河市の新白河店の二店舗だけの展開です。出店が具体化しているのは、今年5月に、水戸市小泉町に出す常澄店一店だけです。今後の出店計画については、とりあえず、九九年内に五店舗の出店を目標としています。あせらず、長い目で育てていきたいと思っています。なんといっても、通常のラーメン屋の三倍強の月商をたたき出す店を“ラーメン屋だけにはなりたくなかった”私が、作り得たのですから。

◆ことく・つとむ=昭和22年茨城県生まれ。昭和46年11月、「レストランキャンドル」を水戸市内に開店。昭和53年にラーメン店に業態転向。平成元年10月に(株)エヌティービーを設立。以降、ラーメン店から、うどん・すし中心の和風FR「さすが家」まで、手広い業種を精力的に手がける。趣味は釣り。

◆「ちゃあしゅう屋」孫目店=茨城県ひたちなか市佐和孫目十文字、Tel029・202・0851/オープン=一九九七年12月3日/投資金額=約六〇〇〇万円(土地代除く)/店舗面積=三八坪/席数=六〇席/平均客単価=昼九五〇円、夜一二〇〇円/平均月商=約一七〇〇万円/従業員数=四〇人(正社員三人、常時スタンバイ人数一一人)/営業時間=午前11時~午前1時

◆構成企業=(有)古潭、(株)エヌティービー、(株)フューチャー/創業=昭和46年11月/資本金=八二五〇万円/従業員数=五〇〇人(うち正社員五〇人)/所在地=水戸市赤塚一‐二〇一六‐一六/店舗展開=らーめん店一二店舗、宅配ずし店六店舗、和食・すし店三店舗

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