すし特集:業態別の現状をみる(4)
宅配すし
宅配ピザブームに追随して新規出店が相次いだ宅配ずし店。出前専門の特殊業態として定着したものの、最近は停滞している。
宅配ずし店の優位点は、(1)格安な初期投資(一五〇〇万円前後)(2)出前専門であるため一般のすし店よりも配達が早い(3)価格が明確でリーズナブル(4)伝統的人気メニューで市場が大きい‐‐などたくさんある。
従って、業態化当初はそれらを根拠に宅配ピザをしのぐ一大ブームが予測された。しかし現状は、チェーン解散や分裂などが相次ぎ、専門業態としての認知は揺らぐ一方である。誤算は何だったのか。
(1)オーダーピーク時の対応が不備。宅配業態のオーダーピークは土・日・祝日の夕方と決まっているが、すしはピザのように短時間大量生産できないので、配達は遅れがち。また多忙でオーダーを受けられないこともある。無理にオーダーを受けると品質やサービスに悪影響がでる。従ってリピーターがつかめない。こうした当初からの問題を、いまだ解決できていない。
(2)市場が大きいだけに競合店も多く、チェーン方式のメニュー戦略では底が浅くマンネリ化を招いた(個性が欠けて常連客をつかめなかった)。
(3)ファッショナブルなピザと比べると、店構えやユニフォーム、配達姿などのイメージが暗く話題にならなかった。
以上が停滞の要因と見られる。
テークアウトずし
テークアウトずしは今から二〇年ほど前、「小僧寿司」が全国展開を始めたのをきっかけに、「京樽」や「茶月」(神田一番寿司)などがチェーンストア理論を基に、JRや大手私鉄の駅前一等地や有力な大規模小売店舗に、小規模スペースで飲食店にもかかわらずほとんど火を使わない出店時条件のメリットを生かして、急速なペースで店舗拡大を果たした。
それまで、晴れの日の食べ物であったすしが大衆化したのはこの時期である。しかしながら、バブル全盛時の割高な家賃や人手不足による人件費などの固定費のアップとオーバーストアによる一店舗平均売上高のダウンがたたり、店舗収支が悪化、京樽がバブル崩壊のあおりを受けて倒産するなど、出店ラッシュは次第にスクラップアンドビルドの方向に転換していった。
減速の理由は、経費増などの物理的条件のほかに、チェーンストア理論の順守による商品の魅力の低下や、回転ずしのレベルアップ、すしバイキングやデリバリーずしの登場、CVSでのすし販売などが挙げられるが、いずれにしても現在のテークアウトずしを取り巻く環境は厳しい。
これからテークアウトずしが生き残って行くためには、一にも百にも品質の向上が不可欠である。その上で従来すしが持っていたごちそう感を目指す店は、お使い物として持って行っても恥ずかしくない包装資材を開発したり、出来るだけ多店舗化を避け、ありがた感を出す努力をする。
私鉄各駅停車駅前などの最寄りマーケット立地の店は、日常性の高いランチ需要や有職主婦・独身者向けの夕食・夜食需要に対応して、コンビニ性やHMRを意識したメニュー開発に力を入れる。衰退する商店街や人通りの少ない二等立地の店は、デリバリーを導入しテークアウトと併用する、といった見直しや転換を検討する時期に来ている。
今後、テークアウトずし業界は、絶えず商品価値の向上に取り組み、新しい発想を大胆に取り入れる、店主のこだわりと消費者の機微をくみ取る繊細さが兼ね備わった店が勝ち残って行くだろう。
とはいえ、すべてがこれに当てはまるわけではない。チェーン店、単独店ともに繁盛店は数多くある。これらの共通項はオーナーに根性があり発想が柔軟なことだ。従来のシステムやノウハウに頼らない独立志向がオリジナリティーを生みだし、流行にかかわらず利益を確保する体質をものにしている。
宅配ずしチェーンの大手「味よし」(約二五〇店舗)の大西勇代表取締役はこう指摘する。
「宅配ずし店の仕事は地味。オーナー意欲がそのまま業績に反映する。通常のアルバイトの人数を二人減らして人件費を減らし、自分がその分働いて利益を確保するぐらいの気合いがないと、店は続きません。逆にそれだけやれば、ポスティングやスタッフのシフトなど、その土地に合ったやり方で効率化や工夫を図れるようになる。要はオーナーの意欲です」
システム、ノウハウ先行に見える宅配ずし店も、最終的には「やる気次第」ということか。