高度成長する惣菜・デリ タイムマーチャンダイジングの導入 2成功例

1992.12.21 18号 4面

ビジネス街のランチタイムは、どこの外食店も長蛇の列を作る。従来、ビジネスマン、OLは限られた昼休みの中で外食店のテーブルを獲得できなければ、弁当、調理パン、惣菜等を仕方なく買って帰るという感じだったが、今日では最初から弁当・惣菜店やCVSへ駆け込む傾向が多く見られる。待ち時間が短いこと、味覚的にも経済的にも魅力的でありリーズナブルであるという認識が高まっていると言えよう。

どんなに魅力のある商品、店構えであってもランチタイムを過ぎると、来店客数は急落するものである。ビジネス街の弁当・惣菜店の多くは、一日の売上高の八〇~九〇%をこのランチタイムで売りさばく。ある意味では効率がいいとも言えるが、現状のままで売上拡大を狙うには、物理的にかなり困難な面のあることも事実。

そこで、ビジネスマン、OLの多様な食ニーズに対応したタイムマーチャンダイジングの導入という発想が生まれた。昼食需要だけでなく、朝食、残業夜食や会社帰りの“ちょっと一杯”といった需要を取り込むための商品・業態の開発である。

今回はそうした柔軟な複合化を打ち出し成功している二つの事例から、今後のビジネス街立地の惣菜・デリ戦略の在り方を考えてみることにしよう。

㈱あじときは、時間の多様化に着目し、朝は出勤前のブレックファースト、昼はランチメニュー、夜は帰宅前の一杯という具合に開店時間をフル活用するタイムメニューを開発し、首都圏を中心に「デリカフェ・パルイン」として、四店舗のチェーン化を図っている。

代表店舗である「デリカフェ・パルイン西新橋店」の店舗面積は二四坪。その内、イートインスペースが約一四坪、テイクアウト商品用の厨房六坪と販売スペースが四坪。この一〇坪足らずのスペースで同店の月商の約八割を売上げている。

テイクアウト商品の構成は朝食向け、昼食向けに分けられる。朝食は、サンドウィッチ、デニッシュ、おにぎり、ホットドック、各種飲料。昼食は、弁当、どんぶり、おにぎり、惣菜、サンドウィッチ、デニッシュ、各種飲料などとなっている。

特に昼食メニューでは、惣菜おかずパックが常時約一五アイテム取り揃えられている。ホウレンソウ玉子巻き、春巻きチリソース、ササミチーズ南蛮漬けなどいずれも一二〇~五五〇円程度の手頃なものだ。

テイクアウト客が一段落すると、昼食を済ませたサラリーマンのコーヒータイムに移る。店内のテーブルと店外に設けられたカウンター席があっと言う間に満席になってしまう。

夕方になると、サラリーマン、OLの退社時間に合わせて同店のメニューは一転する。コーヒー、ジュースの他にジョッキとグラスのビール二種が加わる。一方、メニューも揚げ出し豆腐、唐揚げ、ポテトフライ、中華惣菜などビールに合った惣菜類を取り揃え、サラリーマンの帰宅前の一杯や、繁華街に繰り出す前の待ち合わせ場所として、利用できるスペースへと早変わりする。

このように、同社は朝、昼、夜の三つの時間帯をフルに活用できるシステムを構築し、各店とも平均月商九〇〇万円前後という高い成果を納めている。

異業種参入で注目されるジャパンシステムフーズ㈱のパイロットショップ「夢一菜」もタイムコンセプトを採用した店舗である。

同社は、敷島製パン六〇%、日商岩井二〇%、日本精糖二〇%の共同出資で設立、三年前に日本橋茅場町のオフィス街に一号店をオープンした。

同店のコンセプトは、手作りの惣菜・弁当のテイクアウトとカジュアルバーの二毛作化である。

朝7時にオープンし、まずおにぎり、サンドウィッチといった朝食ニーズに対応。次に11時過ぎからのランチニーズへは、日替り、週替り、月替りの約三〇種類の各種弁当や、揚げ物、煮物などの二〇種類のホット惣菜で対応している。

ここまではテイクアウトのみだが、午後5時からはカジュアルバーへと変身する。バータイムでは、弁当の販売は一切なく、あくまでアルコールとつまみというスタイルをとっている。ビール、ウイスキー、ワインなどのアルコール類だけで、コーヒー、ジュースなどのソフトドリンクは一切置いていない。

つまみはカウンターに小鉢に入れて並べられ、セルフサービスで客がセレクトできるようになっている。約三〇〇アイテムあり中心価格は三〇〇円。その他、飲茶やおでんが一年中の定番メニューとなっている。

店内の配置であるが、昼間は、弁当を選ぶためにキャッシャーへ向かう客の導線に合わせ、ムダのない効率的なレイアウトを採用している。

夜は、弁当を陳列していたキャスター付きのカウンターを移動して椅子を出し、キャッシャーの位置とライティングまでも変える。

また、昼に二つあった出入口を一つにしその分客席を増やしている。

すっかり様変わりするそのイメージづくりは見事。オフィス街の立地を生かし、二毛作化を実現させたことで、夕方以降のテイクアウト需要の激減をカバーし、さらに新たな顧客層を掴むことにも成功した。

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