名古屋版・繁盛店ルポ:「おでこ」「ISOROKU」
市内に居酒屋をプロデュースする(有)創三舎(名古屋市中区、Tel052・232・0661、山本眞士社長)が一年前にオープンさせた三階建ての店がここ。場所は錦通りを入った長者町の入り口。古い繊維問屋がひしめく界隈(かいわい)だが、一歩向こうは大手企業のオフィスビル街でもあり、サラリーマンの集客度は高いエリアだ。最近になって廃業した問屋の後にポツンポツンと飲食店がオープンしはじめた。
三つのフロアを持つこの店の一階は屋台風のおでん屋と串焼きの店「おでこ」。開店当初は客単価の低い立ち飲みスタイルをめざしたが、スペースの半分に席を設けたため居心地感を求めて立ち飲みの客がそこへ流れる傾向が出はじめ、結局イス席をつくった。
気候の良い時期には道路に面した窓を全開し、外にテーブル席をおいてオープンスタイルに。のれんの下がったオープンカフェは、ここだけのものかもしれない。古い商店街の風景の中で、ここだけ時間が止まってしまったようなレトロな雰囲気が漂う。
メニューはいたってスタンダードなおでん各種に串焼き一四アイテムが中心。一品料理も二〇アイテムほどある。
荻田四郎店長が言うには「最初は創作的なメニューもそろえていたが、この店を求めるお客さんの立場で考えるとめずらしい料理ではなく、枝豆や冷や奴など頭でイメージできるごくふつうのつまみが食べたいのではないか」。
というわけで、近ごろはやりの「どこにもないメニュー」ではなく「どこにもあるメニュー」へと発想を切り替えた。
客席数五〇席、客単価一五〇〇円~二〇〇〇円。平均在店時間は一時間から一時間半となる。
近くに勤めるサラリーマンがわが家に帰る前にちょっと寄り道してと、時に週四、五回も立ち寄ってくれることもあるという。
さて、二、三階は創作居酒屋「ISOROKU」。靴をぬいで真っ赤なじゅうたんを敷き詰めた階段を上ると、幻想的なアンティーク調の空間が広がる。かの有名な神谷利徳氏の手がけたインテリアデザインだ。四人用の個室、一六~二〇人用の掘りごたつ式座敷、四〇人の大広間など、それほど広いとはいえないワンフロアが複雑怪奇(?)に入り組んでいる。それが一階のおでこの開放感とは裏腹に、完全に日常性から逸脱した隠れ家的な雰囲気を持つ。
料理は洋食レストラン出身のベテラン料理人が、ここでしか味わえない創作料理を提供。特に、「名古屋名物八丁味噌仕立て豚の角煮」(九八〇円)は、じっくり煮込むことで八丁味噌のまろやかな味わいと豚肉のジューシーが口の中でとろける人気メニュー。
ほかに、刺身のつまにカシューナッツやコーンフレークを入れ、その上に刺身を盛り付けてまわりにドレッシングをかける「刺身サラダFROM上海」(一〇八〇円)や、意外性が人気の「合鴨とフルーツシャーベットのおしゃれな関係」(七八〇円)を用意。これはシャーベットのさっぱり感が合鴨のくどさを消して味を引き立てている。客単価は三八〇〇円~四二〇〇円。
荻田店長は「おでことISOROKUのコンセプトを全く別にしてメリハリをつけ、時と場合に応じて同じ店でそれぞれの楽しみ方をしていただければ」と話す。
◆「おでこ」「ISOROKU」(名古屋市中区錦二‐一三‐二六、Tel052・232・0561)営業時間午前11時~午後2時、5時~11時