注目の焼き肉チェーン店:焼肉屋さかい

1999.08.02 184号 8面

東海北陸地域を中心に焼き肉チェーンを展開する「焼肉屋さかい」。すでに店舗数は一〇〇店を超え、全国制覇に向けた拡大路線は今も止まるところを知らないほどの破竹の勢いが続く。真っ赤な看板の派手なイメージは、そのまま躍進する焼肉屋さかいの企業戦略とマッチし、不況を吹き飛ばすその攻撃的経営が、構造変革期の企業のあり方と奇妙に合致して見える。意気軒昂な焼肉屋さかいの本質に迫った。

全国制覇へ綿密な戦略

昨年(平成10年)10月10日、焼肉屋さかいは、総店舗数一〇〇店を達成した。「一〇・一〇・一〇」という一世紀に一度あるかどうかの実に貴重な日を、同社の記念すべき一〇〇店舗達成の日と決め、実行したセッティング・タイミングにはただただ関心するばかりで、こういった強運が焼肉屋さかいを、今や全国区の外食企業として内外が注視するゆえんでもあろう。

創業は昭和55年5月だが焼肉屋さかいの一号店をオープンしたのは平成5年10月で、それからたった五年の間に、一〇〇店舗達成というスピードは、他の大手チェーンでもまねのできなかった早業だ。このことは、ただ単に焼肉屋さかいが強運の持ち主というだけでなく、きちっとした企業戦略と戦術を持ち合わせていたことを実証するものだ。

焼肉屋さかいの強さの秘けつは、チルド肉の専門店としての味をキープしながらシステム化し、しかも客単価二三〇〇円というリーズナブルな、家族四人でたっぷり食べて一万円でお釣りがくるという仕組みを構築した点だ。それも汚い、臭いという従来の焼き肉店のイメージを払拭して、ロードサイド中心の日本風の「焼き肉カジュアルレストラン」といった新・居酒屋感覚の雰囲気をつくりだしたのも大きな特徴である。

また、経営面ではFC店が全店舗のおよそ三分の二という、人材の活用法を積極的に導入した点も優れた経営方式として注目されている。これらは、外食の何たるかを知り尽くし、生活者が本質的に何を求めているかを見極めなくてはできない手法だ。

このところの外食産業界の元気印の注目業態は、居酒屋やグルメ回転ずし、焼き肉といわれているが、それとても出店競争が激化すれば、ピークはすぐ見えてくる。当然のことながら、焼き肉店はすでにオーバーストア現象の中にある。「焼き肉ブームだから、焼き肉店は繁盛する」という保証はどこにもない。

同社の坂井哲史会長は「競争は当たり前。私自身のせっかちな性格、攻撃的な資質が現代の競争社会に合っている」とも述べているが、肉を中心にすえたあらゆる業態でのフルラインの外食店経営で勝ち残るための戦略は、着々と進行中だ。そのための人材確保は「八〇%はできた」と自信のほどを語ってくれた。

井川社長も「一〇〇店舗は通過点にすぎない」と述べるように、一五〇・二〇〇店舗体制へ向け、全国チェーン網の確立を加速する毎日だ。すでに全国二三都県にネットワークを敷く焼肉屋さかいは、二〇〇一年の店頭公開の目標を、ここにきて一年早めることに決定した。金融関係も含め、同社の成長性と安定性を内外が証明した格好だ。乗りに乗る坂井会長は、いずれ近い将来には「東証一部上場をめざす国際企業に」と、夢は壮大だ。

◆(株)焼肉屋さかい/本社所在地=岐阜県各務原市蘇原東栄町二‐一〇三、Tel0583・89・0102/創業=昭和55年5月/業態=焼き肉チェーン/資本金=一億三七六〇万円/店舗売上=一二一億円(平成11年3月期)/経常利益=四億八七〇〇万円/店舗数=一一一店舗/会長=坂井哲史、社長=井川賢二/関連会社=(株)J・アート、(株)ロッソえびすや

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