本紙限定業界ネタ:業種・業態融合する時代
外食業界全体がいま厳しい消費不況に見舞われている中、次の時代を担う新しいスタイルの飲食店のふ化に期待している。
外食業を大別し、業種・業態で見ると、これまで時代をリードしてきた業態店が時代遅れとなり、代わってローカルの業種店が先端を走る時代になった。
日本はもともと専門店が多い業種の世界だったが、米国から業態というスタイルが輸入され、これまでレストランを利用したことがなかったお客にとって、価格や利用動機で選ぶことができる業態店の方が使いやすかった。その中でも力を発揮したのがファストフードやファミリーレストラン、また回転ずしなどだ。
ところがお客のレベルが上がってくると、それでは飽き足らなくなる。導入部分では簡単な方がいいが、使い方が分かってくると、もっとおいしいものをという要求が出てきて、今度は業種店の方に回帰してきた。
スパイラル現象が起きている。けっして業種店が正しくて業態店が間違っているということではない。両者が振り子のように揺り戻しを繰り返し、結果的にパワーバランスを取りながら、レベルアップを図っている。これまでもそうした歴史を繰り返してきた。
振り子は同じところには振れない。気がついた時にはお客のレベルは四半世紀前とは似て非なるものになっている。それに業態店は対応が追いつけない。業種店がそのニーズをキャッチする。しかし業態店がステップアップしたときは、業種店はよほど勉強しないと追撃される。
業種店も様変わりしている。扱う商品に合った顔(ハード)を持つ、「専門店の香り」のする店が多くなった。イメージも「明るく軽くナチュラルに」と、かつての重い雰囲気の頑固親父がいるような店ではなく、店舗の内装も木やれんがといった自然素材を使った店づくりをしている。
経営者として売上げを上げればいい時代でもない。昔の専門店は技術さえあればできたが、いまは経営者の人生観が深くかかわっている。勉強を怠らず独自のライフスタイルを持っている人でなければ、業種店はできない。
これから期待したいのは、業態店のレベルで専門店の考え方を取り入れたチェーン店がどれだけ出てくるか。業態・業種のどちらからも出てくる可能性はあるだろう。
ただ、これまでの延長戦では変わらない。例えばすかいらーくグループの藍やバーミヤンは、いずれも同じステージでしか展開できていない。基本的な部分を変えるためには、やはり経営者の人生観やライフスタイルがものをいうと思う。大きいチェーンになればなるほど、その発信もとのレベルアップとパワーが要求される。
大手チェーンを否定するわけではない。この中から新しいタイプが出てくるだろうと期待している。そして新しい時代が二一世紀に開けるだろう。(榊芳生)