宅配ピザ特集:今後の市場予測

2000.02.21 198号 7面

米国のピザ市場規模は、店舗数で五万店、末端売上げで三兆五〇〇〇億円、対前年比一〇%増で市場拡大が続いている(宅配、イートイン、テークアウト含む)。米国に比べたわが国の市場規模は約一五分の一(約七%)。パンやパスタなど小麦粉食の消費拡大基調、日常食の欧米化傾向から見て、ピザ市場は今後さらに拡大する見込み。

ただし宅配ピザが主役ではない。宅配ピザ業態の先行きは、従来にない異業態との競合激化が予測される。わが国のピザ市場規模は末端売上げで約二〇〇〇億円、うち宅配ピザが約一三〇〇億円を占める。ここ一〇年強は宅配ピザがピザの消費拡大を牽引してきた格好だが、最近は量販店(SM)にも冷凍加工ピザがバラエティー豊かにラインアップし、昨今の飲食トレンドであるHMR(ホームミールリプレースメント)においても、焼き立てのテークアウトピザを核とする取り組みが目立っている。

この流れはCVS業態にも波及すると見られ、宅配ピザ業態はかつてない異業態との競合を迫られそう。特にHMRブームに乗った焼き立てのテークアウト販売が強力なライバルになるのは必至である。

競合スタイルは宅配サービスVSテークアウト販売だが、そのポイントは価格と品質保持、そしてサービス力である。価格訴求ならばテークアウト販売が勝る。商品の食材原価が同等ならば、テークアウトは人件費と販促費(チラシ)を省いた分だけ販売価格を下げられるからだ。

同レベルの商品を想定した場合、価格訴求においては三割強安でテークアウトピザに軍配が上がる。しかし、品質保持とサービスについては宅配ピザが勝る。宅配ピザは、「熱々の一番おいしい状態のピザを電話一本で三〇分前後で届ける」という利便性と品質保証の付加価値があり、その価値を含んだ価格設定となっている。

テークアウト販売のピザをおいしく食べるためには、その場で食べるとか、近隣住民が持ち帰ってすぐに食べるとか、「温かい状態で食べる」という条件を満たさねばならない。「冷めたピザは犬も喰わない」という米国のことわざがあるように、冷めて劣化したピザは商品に値しない。レンジで温めて食べるとすれば二度手間でもある。

双方、メリットとデメリットをどのように生かし、すみ分け、訴求するかが生き残りのカギとなるだろう。いわば今後はピザ市場は、「販売スタイルの多様化によるセールスポイントの訴求競争期」といえる。

宅配ピザ業界ではこうした動きをいち早くとらえ、「ピザを熱々の一番おいしい状態で届ける」という原点回帰に努めている。とりわけ、配達時にピザを包むホットバッグ(保温バッグ)のリニューアルに意欲的だ。

劣化(冷めた)ピザの撲滅をスローガンに、各方面で取り組みが進んでいる。火付け役はドミノ・ピザ。同チェーンは、一〇〇度C前後に加熱したホットプレートをピザボックスとホットバッグの間に挟むヒートウェーブシステムを開発し、今年5月から本格導入した。七〇度C前後のピザを約三〇分保温できるシステムで、導入後、ユーザー対象のアンケートで「冷えている」との回答が二〇%から五%に激減する好結果を得ている。

これに他チェーンも追随している格好だ。「ピザを熱々の一番おいしい状態で届ける」という原点回帰に乗り遅れた店舗は、宅配ピザのアイデンティティーを忘れたものとして、今後真っ先に淘汰の対象となるだろう。

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