御意見番・岐路に立つマクドナルド:OGM・榊代表

2000.05.01 203号 4面

大量のサテライト出店、相次ぐディスカウント‐‐不況の歯止めを突き破る勢いで快進撃を続けるマクドナルドは、売上げ一兆円へひた走るのか。マクドナルドOBの王利彰氏(㈲清晃代表取締役、立教大学講師)、林原安徳氏(㈲ソルブ代表取締役、立地分析コンサルタント)らファストフード見識者に今後の展望を聞いた。

マクドナルド(以下マック)が三〇年前に日本に上陸したときは、飲食店の近代化の最先端として光り輝いていた。それが全国に普及し、いつの間にかコンビニエンスの弁当販売と変わらない、加工食品の物販業になってしまっている。

ハンバーガーを大衆化させたことは、マックの努力として評価する。だが感動のない単に“満腹させるだけの食事”の提供という意味では、われわれが論じる外食産業の認識とは異なる分野の道に歩き出したようだ。

最近のマックの動向をみていると、思わぬ場所に出店している。営業時間もどんどん短くなっている。かつては夕食にも対応できる唯一のハンバーガーチェーンだったが、いまは夜に中途半端な売上げしか上げられないから、店を早く閉めざるを得ない。

オフィスビルでデリバリーを始めたことも、作り置きをやめてツーオーダーを始めたことも、受注生産にしてロスを減らすための対策だろう。

それくらい既存店の売上げは厳しくなっており、まさに洗濯の水を絞るようにして努力をしている。

街の飲食店が、営業時間を短くしたり、出前を始めたと聞けば、「そんなに大変なのか」と思うが、マックが同じことをやって、それが新聞などに取り上げられると、新しい戦略のように見える。

しかしいまの方策からは、何も将来的なものが見えてこない。われわれが志向する感動や喜びがあるかというと全くない。

これからの時代は大量生産、大量販売で安く売るという構図は崩れる。本物志向、専門化していく中で、マックがいまのような形で伸びていくとすれば、外食産業とは違う世界のことだと思う。

安く売ることからは、お客の感動や従業員の喜びを作ることは難しい。昔のマックは夢とブランドを売っていたが、いまは六五円のハンバーガーを売る店というだけだ。

最終的には自動販売機と同じになってしまう。しかしマックは六五円のハンバーガーだけ売っていたのでは儲からない。コーヒーやポテトのサイドメニューと合わせてこそ、その価格で売れる仕組みになっている。

加工食品販売業といっても実際はなれない。それがマックの泣きどころでもあろう。

飲み物をコンビニや自動販売機よりマックが高く売れるのは、サービス産業としてまだ機能しているからだ。しかしそれもドトールやスターバックスコーヒーの進出を許した段階で限界にきている。

喫茶店が一時期衰退した原因に、マックなどのファストフードの出現があったが、それがいま逆転現象を起こしている。対抗して作ったマックカフェの内容は、ドトールにも及ばなかった。

外食産業としてのサービスや付加価値といった視点が、かつてのマックにはあったが、いまは完全に欠落している。

このまま外食産業としてとどまろうとしているのか、加工食品販売業に行くのか、いまその分かれ道だろう。

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