うまいぞ!地の野菜(25)石川県現地ルポおもしろ野菜発見「加賀れんこん」
茨城、愛知などがレンコン産地として知られるが、「加賀れんこん」も加賀野菜の一つとして古くから栽培されている。
加賀れんこんの主産地として知られているのが小坂地区。金沢市北東部にあり、年々、住宅造成で栽培面積は減少しつつある中、昔ながらの栽培法でレンコン作りをする。
石川県史などの文献によると、小坂地区でレンコンが栽培されるようになったのは、五代藩主前田綱紀公のころ(約二九〇年前)とされ、稲作に不適な水田だけの栽培であった。
明治末期には、レンコンの商品性が注目され、ハス田による栽培面積は一挙に拡大、今までの上流社会のし好品から庶民の食べ物として広まっていく。
その後、幾多の変遷を経て、現在ではレンコン栽培専業者三〇戸で組織する「JA金沢市れんこん部会」が、栽培地四〇ヘクタールで年間四三四tを出荷している。
「ここのレンコンはクワ掘りだから、勘に頼って掘り起こしていくしかないんだよ。水掘りは水圧をかけて掘るから楽だけど、栽培法が違うから食味が全然違うんだ」という表順一郎さん(47)。
父親の敏雄さんが所有する一二〇aのレンコン畑を、一〇年前、ともに栽培するようになった元サラリーマンである。
毎日、健康維持のためポリフェノールいっぱいのバナナをかじる自称「惰農家」。「農業は肉体的に大変だけど精神的には楽」と豪快に笑う。
朝8時、畑にくり出し、水を引いた田にクワを入れてレンコンを掘り起こす。一日約一五〇㎏を収穫する。
夏の最盛期には、鮮度を保つため暗い4時ごろには作業を始め、夕方には市場へ出荷する。冬の積雪期には、雪を除いてからの掘り起こしだ。
「一本損したら一〇本損したと思え」といわれるほどレンコンは、地下茎が発達する。
収穫時、翌年の茎として残した種レンコンは、4~5月に発芽し、葉が生長するとともに地下茎は一節から四~五節まで分節、次第に肥大していく。加賀れんこんは、一節は短いがゴロリと太って大きい。これまでの選抜育種の結果である。
気になる肥料について聞くと、以前は人糞、化学肥料も使ったが、土地がやせてくるからと「レンコン用の有機肥料を二~五割ぐらい混入」しているという。
水掘りレンコンが主流の中、あくまでも手作業に頼るクワ掘り。「泥の重みに耐えたレンコンは、食べたら違いがわかる」と誇らしげに突き出す表さん。食べた味は、確かにもちもち感があり、酢バス、天ぷら、団子にして汁の身に使うことをすすめる。
加賀野菜は、金沢で古くから栽培されてきた伝統野菜を保存していこうと、「昭和20年以前から金沢で栽培され、現在も主として金沢で栽培されている野菜」を八品目(たけのこ、太きゅうり、ヘタ紫なす、金時草、れんこん、さつまいも、せり、つるまめ)と、「金沢の伝統野菜」四品目(打木赤皮甘栗かぼちゃ、源助だいこん、金沢一本太ねぎ、二塚からしな)を金沢ブランド野菜として認定したもの。
■生産者=表順一郎(石川県金沢市金市二‐五五、076・258・3979、Email:fwnf4783@mb.infoweb.nejp)
■販売者=JA金沢市れんこん部会(石川県金沢市大樋町二‐五、076・252・1288、FAX076・253・9219)
■販売価格=市場価格は一定しないが、一㎏六〇〇円~夏場で一〇〇〇円、年末は九〇〇円が相場。宅配は個人で可能。