弁当4社の市場開拓戦略 日商サカエ「たきたて」 ご飯客には量で
弁当チェーンの「たきたて」(宇佐美産業)といえば、かつては一〇〇〇店近くをチェーン化していたが、組織のゴタゴタでチェーンは分裂し、求心力を失ってしまっている。
㈱日商サカエ(本社‐浦和市、資本金二〇〇〇万円、代表取締役菅野利男氏)は、たきたてチェーンの加盟店だったが、昭和55年に自らが本部組織となって、現在までに一一店舗をチェーン化し、独自の弁当売りを推進している。
店舗は第一号店の飯田橋店をはじめ富士見、平和台、秋ヶ瀬公園、栄和、大学前、北浦和、東浦和、浦和イーストシティ、鐘ヶ渕、池袋二丁目店の計一一店で、全店合わせて年間約七億円の売上げを達成している。
店舗の出店は、東京都内と埼玉県下の二地に限られているが、この中にあって、富士見店(千代田区)は平成2年8月の出店で、今年8月で満三年を迎える。初年度は赤字だったが、2年度以降は順調に推移し、月商五六〇〇万円の実績を上げている。とはいっても、バブル経済がハジケた現在やや売上げが低調気味にあるという。
富士見店はビルの一階、店舗面積約一〇坪の規模で、JR飯田橋から東京警察病院方向へ徒歩二、三分、立地的には小さな商店街を形成しているところ。店舗周辺は前記の病院をはじめ大学、専門学校、オフィスなどが点在しており、日中はとくに若者の来街が目立つ。
「近くには飲食店やコンビニ、サンドイッチ店、テイクアウトすしショップなどもありますから、私共の店だけに客を集めるというわけにはいかないのです。もちろん、昼食時は大変に混みますけど、平均しますと、そう集客力が強いともいえないのです」と語るのは、日商サカエ常務取締役の佐藤順治氏。
驚くことに、この店の右隣も持ち帰りの弁当ショップで、しかもほぼ同時オープンで、お互いが開店するまでは全く知らなかったという。
「隣同士ですからね、競合するようなことは避けたかったのですが、本当にオープンするまでは、隣に同じ弁当ショップができるとは知らなかったのですよ」(佐藤常務)。
富士見店には営業面で朝、昼、夕方の三つのピークがあるという。店の営業時間は午前7時から午後7時30分までだが、朝の客は朝食として、昼はもちろんランチ、夕方はその日の夕食代わりとして弁当を買っていくのだという。
しかし、やはり昼どきのテイクアウト客が全体の六割くらいを占める。来客者数は平均して約一五〇人、客単価七〇〇~八〇〇円なので、単純計算すると昼間の時間帯で一〇万円以上を売上げるということになる。
メニューはのり弁当(三五〇円)、石狩弁当(四〇〇円)、幕の内弁当(五八〇円)、しょうが焼弁当(五三〇円)、から揚弁当(四八〇円)、ハンバーグ弁当(四八〇円)、いか天弁当(五七〇円)、かつ丼弁当(七〇〇円)、うなぎ弁当(八〇〇円)などがスタンダードなものだが、このほかにはおかずのアイテムを増したデラックス弁当(一二種)四九〇~八二〇円をラインアップしている。
同店(チェーン)の自慢は質のよい食材を使っていることだが、他店との差別化を図っていくためには、少しでもグレードの高いメニュー内容で営業力を強めていくという考えである。
食材原価は四七・八%といったところだが、コメはササニシキ、冷凍および一般食材は取引業者から週三回の割で仕入れている。
「ご飯だけを買われるお客さんもいますし、コメは流通米のササニシキを使っています。それに、ご飯はボリュームもあります。一人前二八〇㌘。お茶わんにすると二~三杯くらいの量はあるんです。やはり、こういう不況時代、節約時代ですから、主婦などはご飯だけ買って、おかずはあり合わせのもので間に合わせるというケースも多いようです」(佐藤常務)。
不況、節約時代のチエというわけであるが、不況といえば、週休二日制の進行と共に残業がなくなってきているので、その分客足が少なくなってきているのである。
人件コスト二四・五%、包材六・七%。すべてにコストは上昇傾向にあるし、市場も年々厳しくなってきている。どうコストを引き下げていくか、また、人の手当ての問題もある。
店舗運営は主婦のパートタイマーに依存している場合が多いのだが、質のよい労働力を集めるのも容易ではなくなってきている。
富士見店は、昼間の繁忙時には五、六人の主婦を配置しているのだが、全員が二、三年のベテランで、チームワークによる店舗運営も円滑に推移しているのである。
新しい店舗の出店も大きな課題である。出店コストも店舗面積一〇坪で二〇〇〇~三〇〇〇万円を要する時代になっているのだが、希望としてはここ二、三年内に都心に二店、郊外に三店の計五店くらいを出店する考えでいる。