名古屋版・繁盛店ルポ:コリアン創作料理「さくらとけなり」
ワールドカップ共催や旅行者の増加などで、今後ますます「近くて近い国」になろうとしている韓国と日本。その両国を食文化という面で橋渡ししているのが、(株)我楽多文庫の「さくらとケナリ」だ。「橋渡しを花の名前で表現しました」と話す杉田康博店長の言葉通り、桜とケナリは日韓を代表する花。ちなみにケナリとは「レンギョウ」を指す韓国語で、春になると韓国全土で黄色い花を咲かせた姿を見ることができる。
「従来の韓国料理からの脱皮を大きなテーマにしました。『韓国料理イコール焼き肉』という既成概念を打ち砕きたいです。韓国には焼き肉だけでなくおいしい料理や食材も多い。当店は韓国料理を基本としながらも和風の盛り付け、洋風や中華のテーストを取り入れています」と杉田店長。
さらにもう一つのテーマ「スレンダー&エネルギッシュ」は、医食同源という食の思想を持つ韓国料理を食べることで女性はスリムに、男性には活力を求めてもらおうという願いを込めたものだ。
四階建ての店は約一二〇坪、一六〇席。所々に韓国の調度品が飾られているだけでなく、暗めの照明が李朝家具の持つ深い味わいと絶妙に融合する。エントランスから店内へ続く通路は土壁や古いカメで演出されており、田舎の路地を歩いているかのような錯覚を覚える。またカップル専用席となっている四階の「癒し楼無窮花」(ムグンファ)は、プライベートな空間を満喫できるよう「弧室」(こしつ)やソファーで料理を楽しめる。
お勧めのメニューをうかがうと、五色のナムルに自家製コチュジャンを入れて食べる「石焼きビビンバ」(九〇〇円)とネギベースで卵のふんわり感を出した「海鮮パジョン」(七〇〇円)がよく出ているとのこと。しかしそれ以上に杉田店長が推すのは店の提案商品である「黒胡麻キムチ」(四五〇円)。「黒ごまとキムチを合わせたらどうなるかという発想から生まれました。黒いキムチですが、イカスミスパゲティを食べた時に最初は抵抗感があるけど食べてみるとおいしい、といった感覚でしょうか」。韓国本国にはない「さくらとケナリ」オリジナル商品で、一度食べた人が味を覚えて注文するケースが多いという。
ちまたの韓国料理とは一風違った「コリアン創作料理」。従来の概念を打ち砕き自由な発想でのメニュー展開を目指しているが、ベースとなる唐辛子やヤンニョムなどの調味料は本場韓国のものを使用し味を引き締めている。またあえてウーロン茶を置かずに韓国茶を提案しているのも、客に韓国の雰囲気を楽しんでもらうという配慮だ。「コーン茶」や「ナツメ茶」など、九種類を取りそろえている。
「アンニョンハセヨ!」。韓国語で「こんにちは」を意味する言葉が接客の基本。「お客様には一番おいしい状態で召し上がっていただきたい。そのためには料理を運ぶだけでなくお客様に一歩近づいたサービスを大切にしています」(杉田店長)と、接客面でもこだわりを見せる。
◆コリアン創作料理「さくらとけなり」(名古屋市中区栄三丁目一一‐二七、052・249・7707)営業時間=午後5時~午前0時、金・土午後5時~午前2時。年中無休
◇愛用食材 韓国春雨
従来の「韓国料理」という枠にとらわれない料理を提供する「さくらとけなり」だが、ベースとなる食材は韓国のものを多く取り入れている。
「太くて歯ごたえがあり日本にはない食感です」と杉田店長がいち押しするのは「チャプチェ」に使用する、(株)オットゥギの韓国春雨(写真)。「チャプチェ」とは野菜と春雨を炒めた韓国ではポピュラーな料理。店ではごま油ベースで提供しており、石焼ビビンバやパジョンと並んで人気の高いメニューの一つだ。