食品メーカー開発奮闘記(1)エバラ食品工業 人海戦術で販路開拓

1993.03.15 24号 21面

エバラ食品工業㈱(横浜市、045・314・0111)は市販用の「焼肉のたれ」では六〇%強という圧倒的なシェアを誇っているだけに、一般にはたれ類メーカーの企業イメージが強いが、ここ数年は「みそラーメンの素」「がらスープ」といった外食市場向け商材の大ヒットもあり、業務用の商品の占めるウェートが急速に高まっている。平成5年3月期決算見込みでも、売上高では約三七〇億円前後での着地が見込める中で、トータルでの業務用のウェートは約二六%(約九六億円前後)に達している。

数年後には総売上高の約三〇%まで、引き上げたいとしている。

ところで、現在、同社での業務用分野での商品開発では、研究開発部(渡辺啓一専務・本部長)と研究所とが一体になっての取組みが行なわれているものの、昨今の外食市場の低迷ではその商品開発、商品化をより難しくしているのも事実。

かつては外食・業務用商品では新メニュー開発を含めて、いかにユーザー側でのお役に立てるか、を唯一のコンセプトにしての商品開発でよかったが、昨年からの減速景気、外食離れの中では、大手の飲食企業を含めて、外食店そのものがボリュームアップ、客単価引き下げで顧客獲得に必死なだけに、従来のように新商品を導入する機会が減っているのもその要因のひとつ。

また、これらに加えて業務用商品でも安心感のもてる食材・商品といった面も商品開発では不可欠になっている。

ところで、こうした中で一口に外食産業市場といっても、洋食・和食・中華・喫茶・スナック・居酒屋・さらにファミリーレストランとまさに多種多様にわたっているが、これらの商品開発とともに、同社の具体的な外食市場戦略、販売取り組みをみると、社内的にはルート別にそれぞれのプロジェクトチームを編成、東・名・阪といった巨大マーケット、外食市場での各店舗をリストアップし、営業マン自らが訪ねるという“人海戦術”での販路開拓が外食・業務用商品の拡販では現在でも主流となっている。

いずれにしても、家庭用商品とは違い、業務用商品はCMベースに上手に乗せられない商品の典型だけに、開発・育成に手間・暇がかかることも事実だ。

こうした中で、「がらスープ」「みそラーメンの素」に続く第三の大型業務用商品の誕生が待たれるところである。

《商品メモ》 肉の多様化、グルメ化による外食産業の発展は相変らずだが、深刻な人手不足とそれによる人件費のアップは他産業と同様深刻になっている。

料理づくりの決め手であり、ベースともなる「がらスープ」作りにおいても、スペース、時間、手間、燃費がかかり、さらに味の均一化、そしてがらの処理も煩雑な問題として残る。

これらを解決して、ユーザー筋で大ヒットしたのが同製品。

製品の特長は、生の骨から炊き出しているため、自然の風味とこくに富み、各種のアミノ酸がバランスよく含まれ、クセの無さがあげられる。

なお同製品は、昭和56年に発売開始して以来、以後着実に売上高をふやし、平成3年にはメーカー出荷実績一一億五〇〇〇万円を達成、本紙の食品ヒット大賞(業務用部門)を受賞している。

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