今年の5大出来事とプラスα、2001年外食産業を振り返る

2001.12.17 242号 10面

今年の外食産業界を眺めてみると、二一世紀の激動の始まりともいうべき、さまざまな出来事と事件が起こっている。今年の特徴を、「思い切って五つに絞れ!」と言われたならば、おのずと答えは決まる。それは、以下の五単語に集約できるからである。その五つとは、(1)「狂牛病」(2)「値下げ競争」(3)「カフェ」(4)「HMR」(5)「隠れ家系」である。それでは、これらのひつとひとつをより詳細に見てゆこう。

◆1・好調だった焼き肉店業界を、狂牛病という突然の大嵐が襲い大打撃を与えた

9月10日、千葉県で狂牛病の疑いのある牛一頭が発見され大騒ぎとなった。近年、わが国では牛肉が大変安くなったので、焼き肉大ブームが到来していた。「牛角」「焼肉屋サカイ」「安楽亭」「牛繁」などのチェーン店の出店競争が過熱し、熱に浮かされたような焼き肉ブームが続いていた。

この狂牛病ニュースで、焼き肉ブームは一気に冷まされた。

農水省と厚生労働省の合同「安全宣言」が出されたが、風評被害は当面沈静化しそうにない。

◆2・牛丼に端を発した低価格・値下げ競争は、より広範囲に広がり激化している

バブル崩壊後のデフレ圧力の中で、マクドナルドのハンバーガー平日半額セールは業界に大きな衝撃を与えた。続いて昨年暮れ、松屋フーズが牛丼(並盛)を二九〇円に値下げすると、今年2月神戸ランプ亭、ゼンショウーも後を追った。そしてついに8月、吉野家D&Cが牛丼(並盛)を二八〇円へと大胆な値下げに踏み切った。

ここに来て、各社入り乱れての牛丼値下げ戦争が勃発。この値下げ競争は、他のコンビニ・弁当業界などに波及し、一層の値下げ競争をもたらしている。しかし牛丼各社は、一度振り下ろした伝家の宝刀を、おいそれと仕舞うわけにもいかず、狂牛病の影響がジワジワと迫る中で各社は戸惑いを隠せないようである。

◆3・スターバックスコーヒーを中心としたカフェの大ブームが続いている

ドトールコーヒーが切り開いた低価格コーヒーショップの牙城に、突然ドトールより数百円高いグルメコーヒーで殴り込みをかけてきたのが、スターバックスコーヒーである。アメリカ人の食生活を変えたとまで言われた、スターバックスコーヒー。このブームは全国的広がりを見せている。

メニューにデリカやフードを強化した、おしゃれなカフェも各地で増えている。一種の都会のオアシス、それがこれらのカフェであり、雨後の竹の子のように増殖したカフェブームは当面終わりそうもない様子である。

◆4・HMR(持ち帰り惣菜)業界の動きが、食品・外食業界でますます大きな潮流となってきた

ライフスタイルの変化に伴って、デリカ惣菜を中心とした「中食」(なかしょく)産業は活況を呈している。いわゆる「デパ地下」(デパートの地下食品惣菜売場)には、新しいデリカ専門店がどんどん登場して来ている。

ロックフィールドの「RF/1」、ビジネス街・オフイス向け「サラダバック」、柿安本店の「柿安ダイニング」、量販店では若菜グループの惣菜店、グリーンフーズの「新宿さぼてん」、路面店ではオリジン東秀の「オリジン弁当」。

食品スーパー各社も、デリカ専門店の台頭とスーパー離れを食い止めようと、惣菜を「第4生鮮食品」と位置づけ、味や盛り付けの工夫、包装パッケージの工夫などで業績向上に必死である。業績が低迷しているファミレス各社は、持ち帰りや電話予約の宅配に力を入れ、HMR市場を取り込もうと必死になっている。

◆5・好調な居酒屋の特徴は、個室を多く取った「隠れ家系」か薄暗い「癒し系」

今年ヒットした居酒屋には、際立った特徴が表れている。それは店舗全体の照明がいやに暗く、パーテーションや壁で細かく仕切られた小さな個室が多いことである。木の仕切り板、暖簾(のれん)や簾(すだれ)で囲われた小さな個室、こうした居酒屋が大人気だ。

これらが隠れ家のような雰囲気を醸し出すので、「隠れ家系」とか「癒し系」と呼ばれた。これらの店舗は、一見陰気なようにも見えるが、けっこう居心地が良い。若い客層に大人気である。

*主な店舗事例=新宿「東方見聞禄‐月の雫」「隠れ野」、厚木「わん」、町田「隠れ房」

◆6・豚骨を中心としたラーメンブームは、一向に衰える気配を見せず現在も続いている

その他のニュースも盛りだくさんである。まず、若者たちに支持され続けているラーメンブーム、このブームは今なお衰えを見せない。「行列のできる店」など、マスコミ特集などで何度も組まれ、横浜家系ラーメン店など、特定の店に熱烈なファンが定着し支えている。

◆7・郊外の回転ずし戦争は、一〇〇円均一、大型店同士の大競争、それにグルメ回転ずしも加わり乱戦状態となっている

数年前、業績の低迷していたカッパ・クリエイトは、近年業績を急拡大した。このカッパ・クリエイトを筆頭に、一〇〇円均一の回転ずしで三〇〇人も収容できる大型店が郊外で覇を競い合っている。

これに、グルメ回転ずしと呼ばれる高級店も加わり、郊外や都心繁華街で三つ巴の戦いとなって展開されている。

◆8・マクドナルドやスターバックス、タリーズコーヒーという大型成長株の株式公開が続いた

マック、スタバ、タリーズ、大戸屋という外食業界における大型成長株が、今年相次いで株を公開した。今後も、外食ベンチャー企業の上場ラッシュは、続々と続きそうな気配である。

◆9・生ゴミ処理の問題は、食品リサイクル法の施行で飲食店にとってますます重要な課題となった

大量に出る、野菜くずや食べ残しの生ゴミ問題、これはこれからの外食産業の重要な課題である。専用処理場で有機肥料に転化するなど、さまざまな先進的な取り組みが始まっている。

◆10・売れるメニュー分野は、食後のデザートとバラエティーのあるカクテルメニューである

メーンメニューがデフレ値下げの影響で振るわない分、デザートメニューとカクテルメニューに元気がある。デザートは、手作り感のあっさりしたものが好まれている。カクテルは、豊富な種類の品ぞろえが必要である。

◆11・インターネットを活用した食材調達・仕入れが食材の原価率を革命的に引き下げている

BtoBと呼ばれる、新しい食材の入札方法が普及している。

少しでも安くて良質なものを仕入れたい。このニーズにインターネット環境が整備されてきた。これからますます面白くなる分野である。

◆12・飲食店チェーンのM&Aが盛んに行われ、去年までの業界地図が大きく塗り替わっている

「北の一丁」の倒産を始め今年もさまざまなことがあった。有名大手チェーンさえ、油断のできない時代、西洋フードサービスの「CASA」五〇店が、「ビックリドンキー」への業態転換を検討する世の中である。何があってもおかしくない状況である。

◆13・有機栽培のコメや野菜を使用したヘルシーメニューが、飲食業界では常態となりつつある

「健康」が時代のトレンド(時流)である。客の健康を考えない外食企業は、必ず時代に置いていかれるのは間違いのないことである。

◆14・「大戸屋」に見られるように、定食やデリといったご飯メニューが注目されている

カフェでも「カフェご飯」が出る時代、食事とアルコールを同時にとる、客のライフスタイルの変化を見逃してはならない。

◆15・昨年までの人気店が、もう既にその勢いを失い新旧交代している

年明け早々、世界第二位のハンバーガーチェーン「バーガーキング」が日本から撤退した。あれほど行列のできた「築地銀タコ」も、すでに過日のような行列は見られなくなった。流行はあっという間に過ぎていく。今年も新たな人気店が、また登場して来るはずである。

さて、いかがだったろうか? 外食の世界だけの、小さな変化ばかりではない。小泉内閣の成立、ニューヨークの旅客機突入テロ、アフガン戦争などなど、今年も大きな事件がいろいろあった。来年は、もっと大きな変化が押し寄せて来るかもしれない。しかし変化を恐れては何もできない。むしろ、変化を楽しむぐらいの余裕を持ちたいものである。

(日本フードサービスブレイン・高桑隆代表)

●プロフィル

たかくわ・たかし(51)=(有)日本フードサービスブレイン代表。ファミレス店長、専門学校研究所、大手コンサル会社を経て独立。現在法政大学で、「店舗独立開業講座」を開講する独立開業コンサルタント。専門分野は飲食店経営指導、独立開業指導、店長指導、立地診断。