厨房のウラ側チェック(25)牛肉と熟成とその科学(その1)

1993.04.05 25号 20面

食肉の美味しさや品質はなんで決まるかというと、品種、飼育法、熟成などが考えられる。今月号から数回に分けて、やさしく熟成のメカニズムについて述べることにしよう。

まず最初に、食肉になるためには屠場で屠畜された後、その動物が生活機能を失い、筋肉繊維の収縮が起こり、筋肉全体の硬化が進むことを死後硬直といい、その硬直がとれて温度・湿度をコントロールすることにより、肉本来のうま味が引き出されることを熟成という。英語でAging、肉に軟らかさと風味をかもしだす。飲食店のお客様にとって、美味しい肉は、ただ軟らかいだけの肉からプラス適当な脂肪、肉らしい匂いと汁気があるものまで幅が広い。では、どうすれば簡単に美味しい肉を食べることができるのでしょう。それは、熟成することにより、ただの肉から食肉へと一段高い付加価値のある肉にすることができる。

次に、日本における現状と熟成方法はどうなっているのか。首都圏の品川と畜場では、生体重六五〇㎏から七〇〇㎏の牛が屠畜され、冷蔵庫で冷やされ品温、5℃になったものを一三部位に分割され、真空パックで2℃から3℃で流通している。その流通時間を拝借して熟成もどきを実施しているようだ。また、輸入肉の中でフィドロットをかけるアメリカンビーフにおいても熟成に関する限りは、日本と同じように流通を利用している。しかし、大手パッカーはユーザーの要請により真空熟成を実施しているようだ。オーストラリアの熟成は、チルドビーフの場合では真空包装後に〇℃の状態で船便で二~三週間かけて熟成される。エージドフローズンビーフの場合では屠畜場・屠殺・解体・枝肉・冷蔵・部分肉・真空包装・熟成・冷凍・流通となる。その中で熟成は0~2℃で二週間から三週間実施している。フローズンビーフの場合では、真空包装からすぐ冷凍をかけることになる。この一般的なフローズンビーフを使用する場合は、解凍後冷蔵庫で若干熟成を試みると良い。その他オーストラリアでは、死後硬直を速め、肉質改善の効果がある電気刺激処理を放血後、五〇〇から六〇〇Vで40秒通電している。

次号では、現在実施されている熟成方法から書き進めるが、熟成にとっての基礎知識は食肉の腐敗防止であり、その関与するファクターは、温度・湿度・換気・包装などと肉に最初からついている細菌数の多少に相関するので、衛生的取扱いをしなければならないことを覚えて下さい。

食品衛生コンサルタント

藤 洋

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