地域繁盛店(沖縄)低価格メニュー編:まるなが食堂
「まるなが食堂」は、一品が四〇〇円から六五〇円と低価格で沖縄の家庭料理が食べられる人気店である。近くには泡瀬漁港があり、訪れる常連客のほとんどは肉体労働者。そのためか、どの料理もボリュームを出すことを心掛けており、その量は通常の食堂で提供される一・五倍にも及ぶ。
ボリュームが多いので味付けはうす味だ。生鮮野菜、鮮魚類は地元沖縄で捕れるものを厳選し、調味料のブレンドや隠し味を試行錯誤しながら他店との差別化を図る。しかも、冷凍食品は一切使わず、手づくりのよさにこだわっている。
店主の長堂順子さんはこれまで、割烹や懐石料理を経験してきた。その技術が現食堂でも生かされている。店のたたずまいはだれでも入りやすい大衆食堂風で、観光地からは外れているにもかかわらず、昼時には行列ができるほどのにぎわいをみせる。
一人の客足の回転が早いので、アイスティーやアイスコーヒーはセルフサービスを実施。また、すべての料理はテークアウトが可能で、近隣の客は直接鍋を持って訪れるほどの盛況ぶりだ。
地元に根ざした商売スタイルだが、結果、観光客にも人気が広まりつつある。今後は沖縄料理だけにとどまらず、洋食や麺類など新メニューの開発に取り組んでいく。
◆まるなが食堂(沖縄県沖縄市海邦町一‐一五‐四七、電話098・939・4312)
◆骨汁(500円)
驚くほどのボリューム感がある骨汁は、毎日正午には売り切れるほどの人気。調理法は、ゼラチン質豊富な肉盛りがよい豚の骨二〇キログラム、昆布や大根、それに沖縄の旬の野菜を加えてとろ火で六、七時間煮込み、合わせ味噌で味を調える。強火から中火、とろ火へと移る火加減が一番難しいという。この骨汁には、底が見えないほど多くの豚骨が入るが、これらの臭みを消すためにショウガを使用する。骨汁のほか、ご飯、味噌汁、あえ物がつく。
◆しょうが焼き定食(650円)
他店と比較すると約一・五倍のボリュームがあるしょうが焼き定食。開業以来、改良を重ねて現在の味にたどりついた。具には豚肉のほか、ニンジン、玉ネギ、ニラ、キャベツ、卵を選び、脂っこくならないよう気を付けている。味付けは、合わせ味噌にごまと砂糖を少量加えてできた味噌だれを使う。また、このボリュームでも足りない客には、ご飯大盛りとおかわりの無料サービスを実施。しょうが焼きのほか、沖縄そば(小)、ご飯、漬け物がつく。
◆ひと言 長堂順子店主
常連客のなかには一日三食いただく人、毎日同じ料理を食べていく人もいる。それらの人々の味覚が飽きないように、焼き魚やモズクなどを無料で出している。鍋を持参してテークアウトに訪れる客にも対応する。郷土料理はどこででも食せる味なので、味付けの微妙なさじ加減には特に気を配りながら、料理を作っている。何よりも、すべての料理を低価格に抑え、逆にボリュームを増やすことにより、互いを反比例させていることが繁盛の秘けつ。
●愛用食材 かねよ味噌
かねよ味噌は、開業以前から長堂氏の母が四六年間愛用していたという“おふくろの味”だ。味噌汁や骨汁、主に汁物料理には欠かせないが、他の味噌だと味付けに物足りなさを感じるという。辛すぎないコクを出すために、麦味噌とブレンドする。
特に、具に使う野菜との相性がよく、協調しすぎない味が年配客にも好評。「味が濃い」といわれる沖縄料理だが、まるなが食堂のあっさり味は、この味噌に支えられるといっても過言ではない。
◆チョーコー醤油(株)/長崎県長崎市西坂町二‐七、電話0958・26・6110