地域繁盛店(宮崎)低価格メニュー編:百才 豊吉うどん
初代は、今のオーナー奥野和一郎さんの曾祖父である故・奥野豊吉さん。「中国人に五〇円払って作り方を教えてもらい、昭和7年にうどん屋を開いた」と豊吉さんは、和一郎さんに言っている。
「最初の名前は三角茶屋といいました。うどん屋が数少なかった当時、三角茶屋はとても有名で、川端康成が宮崎に滞在した折に執筆した小説『たまゆら』の中でも紹介されています」と和一郎さん。豊吉さんが九〇歳を超えた昭和50年三角茶屋は「百才 豊吉うどん」と名前を変更。豊吉さんは数え百歳で亡くなったが、孫の千枝子さん、ひ孫の和一郎さんへと秘伝のだしが受け継がれている。
豊吉さんの時代から「はやい・安い・うまい」をモットーとしていたため、今も値段は驚くほど低価格。この低価格を維持するために、現在は前金制のセルフサービスとなっている。具にはそれぞれ値段が設定してあり、好きな具の組み合わせがいくつでも可能。ただし、人気の具は売り切れゴメンとなる。注文した後、あっというまに出される早さも、急ぐ人には魅力大。食事時になると一〇〇席が満席になり、行列をつくることがあるほど盛況で、一日にうどん・そば合わせて六〇〇玉以上が客の胃袋へおさまる。
◆百才 豊吉うどん(宮崎県宮崎市大坪東三‐一‐三、電話0985・51・9015)
◆ひと言 黒木秋義店長
人気の理由は、昔から守ってきたイリコ醤油だしのうまさと、値段の安さ、頼んですぐに食べられる早さ、気軽さでしょうね。
幅広い客層から好まれているうどんの味を守り続けるために、うどんの麺とだしは、受け継いだ者が作ることになっています。今はオーナーの奥野和一郎さんが、裏の工場で毎日その日の分のうどん麺とだしを作っています。
だしの味と値段を変えず守ること、この二つが最も難しくて最もポイントとなるところですね。
●愛用食材 めんたくみ(小麦粉)
同店のうどん麺は、創業した当時は手打ちだったが、時代とともに機械製造へと代わった。そして、うどんの命とも言える小麦粉も、現在のオーナー奥野和一郎さんの代では、日本製粉の中力粉「めんたくみ」に。従来の粉に固執せずいろんな粉を試してみたところ、一番食感がよかったという。
「この中力粉と、粉に混ぜる塩水の濃度との相性がいいのでしょう。従来の麺よりももちもち感が強くなって、さらにおいしくなったと思います」
◆日本製粉(株)/東京都渋谷区千駄ヶ谷五‐二七‐五、電話03・3350・2840
◆野菜天うどん(290円)
サツマ芋、玉ネギ、ニンジン、ネギをかき揚げにした、直径一〇センチメートルほどもある野菜天が看板。うどんを覆ってしまうほどの野菜天の大きさ、値段の安さ、うどんのだしに染み渡るかき揚げのうまみを考えると、人気があるのもうなずける。午前中に一日分の野菜天を揚げるので、日暮れ前に売り切れる日がほとんど。週末などは、三〇〇枚以上揚げていても売り切れるほどなので、野菜天が食べたければ混雑を覚悟で昼時に行くことになる。
◆たぬきわかめそば(310円)
並そばは、並うどんと同じく一八〇円で、だしもうどんと同じ。そばも創業当時から扱っており、うどんに比べ注文数は少ないながらも、毎日一〇〇杯近くは出る。純そば粉と、つなぎ専用の中力粉を混ぜて作る麺は、やや田舎そばに近い食感。二〇円という安さから一番人気のたぬき、歯ごたえのよいわかめ一一〇円など、好みの具を加えて自分好みの一杯を作るのがここの醍醐味。このほか、エビ天二一〇円、卵六〇円、キツネ一一〇円などあり。