名古屋版・トップインタビュー:あさくま社長・近藤裕貴氏

2002.07.15 256号 8面

3年前、創業者近藤誠司氏から長男の裕貴氏に代表が継承されたことで、大きく動き出した(株)あさくま。今年3月には、近藤誠司氏プロデュースによるニューヨークステーキの限定メニュー発売に始まり、今年中に新業態を出店する計画もある。始動する「あさくま」の近藤裕貴社長に話を聞いた。

‐‐三年前に社長に就任されたころから現在に至るまでの経緯をお聞かせ下さい。

近藤 就任してから拡大路線はしかず、まず一店一店を徹底的に見直すことから始めました。店長に店のオーナーとしての資質と感覚を備えてもらうための店長教育に力を入れました。

また、店内にサラダバーを設ける政策が功を奏し、社員のモチベーションもぐんと上がりました。

‐‐ところが昨年のBSE騒ぎ……。

近藤 はい。創業以来最悪の落ち込みとなりました。しかし市場がマイナス方向へ動くんだったら当社はそれをチャンスととらえ攻めの姿勢でいくべき。

そこで、五〇〇gの肉を豪快に食べていただく「ニューヨークステーキ」を3月25日から限定で提供したんです。ずいぶん好評でしたね。

創業者の近藤誠司が、ステーキの中でも米国政府が最高品質を保証するプライムビーフを求めてアメリカへ渡り買い付けたもの。

食の原点である味、サービス、演出を含めた「うまさ」に、ステーキのあさくまが徹底的にこだわったわけです。

大きな塊のまま提供することで肉のおいしさは逃げず、食のスタイルも新しいことで話題になったのでしょう。

‐‐安心・安全についてのお考えは?

近藤 外食企業として安全管理を行うのはいわば常識。常日ごろから情報公開しておく姿勢が必要なんですね。たとえばBSE騒動があった時、各企業がこぞってCMを打たれましたが、お客様が牛肉に対して後ろ向きになっている時に、ましてや突然アピールしても多少の効果でしかならないのではないでしょうか。

外食はスーパー食材に比べるとメニューになった場合は、明確な食材の情報は表に出ません。だからこそ食材情報を公開しておくことは、自分たちの身を守る上でも不可欠です。

‐‐ところで、今後の計画をお知らせ下さい。

近藤 おいしい肉をたくさん食べてハッピーになっていただくために、ファミリーレストランのステーキではなく専門店にできるだけ近づこうとやってきました。飼育環境や飼料、部位、グレードまでこだわりを持ってきたし、その点はきっちりと守りながら、「ステーキのあさくま」として業界をリードしていく役目を担っていきたいですね。

ただ、それだけではナショナルチェーンとして全国に三〇〇店も四〇〇店も展開していくのは非常にむずかしい。先ほどから話しているように早急な立て直しが先決で、そのためには社員の意識改革を図ることはもちろんのこと、メニューの全面的な見直しにとりかかります。創業者であり現在相談役の近藤誠司に商品開発の統括責任者の指揮を執ってもらい、彼のマーチャンダイザーとしての優れた能力をフルに活用し新しいメニューを創造する予定です。

‐‐それからベトナム料理店を始めると言われていますが。

近藤 はい。この店はあくまでも一つの表現方法なのですが、消費者のヘルシー志向を背景に、理想的な食生活は肉の摂取だけではアンバランスであり、野菜との組み合わせをメニューの中で提案していく必要があると考えたわけです。

そんな健康志向に対応して、ステーキのあさくまで提供していたサラダバーとベトナム料理メニューを特化させたかたちで、早い時期にサラダ専門店と野菜やハーブを切り口にしたベトナム料理の店をオープンさせる予定です。

サラダ専門店はあさくまの不採算店の業態転換店としても展開させます。厨房を縮小し人件費を抑えローコストで運営、スープメニューに注目中です。

‐‐売上げ目標は。

近藤 今から三年後には株式公開を、それから五年後をめやすに今の倍である一〇〇億を目標としていきます。

◆(株)あさくま(本部=名古屋市天白区植田西二丁目一四一〇番、電話052・800・7781)年商=五四億円、店舗数=五〇店舗(直営四四店舗、FC六店舗)

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